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この庭の芝生は青い  作者: 心愛
ラクガキサマ
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違うあいつ

「矛盾?」


「パンフレットに不備があったと気づいたのは、恐らくこの休み時間だろう。今朝ならまだ、コピーの原稿があればそれに科学技術部を加えてコピーするだけでいい。でもボールペンで書かれているということは、コピーができない場所だったか、コピーする時間がなかったと考えるのが自然だ」 


「それで昼休憩だってことね」


 確認してきた梶原に俺は頷く。


「昼休憩に気づいたとて、先生はあの人数いるんだ。全員で急いで書けば300人分くらいすぐに書けるだろ」


 あの体育館にいた先生は、部活の顧問の先生と、司会の先生のみ。少なくとも30人近い先生がいたはず。部活によっては2人、3人の顧問がある可能性があるからそれ以上だろう。


「ボールペンの数は?足りなかったとか?」


「十分にありえる。ただ気付いた先生がその場にいた全員に、不備を伝えたなら、口頭で紹介するはず」


「わす…」


 梶原の言わんとしていることを、俺は遮って続ける。わからなくもないが、ありえないことなのだ。


「30人以上いる先生が全員忘れていたと思うか。高々1時間半だぞ」


「確かにそれは考えづらい」


高梨は手を顎に当てながら下を向いていた。納得してくれているようで何よりだ。


 こんなにベラベラと喋っていたが、喋る必要はなかった。今までのは悪魔で補足にすぎない。


「第1ボールペンで、書かれていたんだ。ゴシック体と人の書いた字では、違和感がありすぎる。生徒が気づかない時点でおかしいだろう」


「じゃあ、誰かのいたずら?」  


 そう考えるのが妥当だ。俺は腕を組んだ。高梨は足元を見ながら考えている。時折誰かにぶつかりそうになって謝る姿が見受けられた。


「紹介されなかったんだから、科学技術部はないってことでいいんだよね。なら生徒のいたずらに違いないよ」


 ふたりの中で結論はついたようだ。……ん?俺は人混みの中で、ある人物に目が行った。立ち止まり、パンフレットを開いて見つめる人物。


「生徒が?なんでこんなことをするの」


「そりゃ悪戯心にも火がつくさ。高校生活だもん。それに1年生のこの時期は何をしても罪が軽いからね」


「違う」


「ん?どうしたのつばちゃん」


 納得していないのは梶原の顔だ。疑問を持つ顔をしていたのは高梨だった。


「ん、あー。そうだな」


 その異質な人物は、人混みに紛れて見えなくなっていった。


「俺と梶原は生徒で一番最初に体育館に入ったんだぞ。生徒がいたずらをする間はない」


 先生は既に何人もいたが。


「トイレにでも隠れてたんじゃないの?」


 ふてくされた顔だ。なぜそんな顔をするんだろう。


「それは違うよ」

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