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祓い屋  作者: チロ太郎
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現れた強敵


 首がない青鬼の死体の横で正道は武器についた血を払う、激しい戦闘で限界が来たのか怨讐は粉々に砕けちってしまった。


 「ありがとうございました」


 正道は残った刀の柄を地面に置き手を合わせる、刀に込められた怨念が全て晴れたのか異様な霊力は全て無くなっていた、僅かに残った刀の柄も朽ちてしまい砂の様になり風に乗りどこかに飛んで行く。


 正道は腰についている小さな鞄から緑色のビー玉を取り出しそのビー玉に霊力を流す。


 《烈風炸裂玉 鬼蜻蜓(オニヤンマ)


 霊力を流したビー玉を正道は空へと投げる、するとビー玉は空中で炸裂し中から鬼蜻蜓(オニヤンマ)のような形をした物が出てきて赤鬼が逃げた方向に飛んで行く。


 「盛満大丈夫か?あの逃げた鬼の追跡は鬼蜻蜓に任せて俺らはアキさん達のとこに戻ろう」


 正道は駆け足でアキ達の元に帰ろうとするが今の戦闘で足を痛めたのか盛満はうまく歩くことができなくなっていた、正道は盛満に肩を貸し二人はゆっくりと皆んなの元に帰って行った。





 「アキ!やばい誰か来た!」


 外を見ていたチビが慌てて二人が居る部屋に飛び込んできた。


 「アキ!俺の封印を解いてくれ早く!」


 様子がおかしいチビを見て只事ではないと思っ

たキュータがアキを急かす様に言う。


 アキは頷き鬼束に教えてもらった封印解除の印を使い、キュータの封印を解く、戦闘体制を整えた二人は恐る恐る家の外へと出るとそこには小さな鬼がいた。


 「俺の名前は鬼山鬼太郎!馬鹿な人間だ!まだこんなところに居たのかさっさと逃げれば死なずに済んだのに、さぁ黙って俺についてこいお前らの魂は狂鬼様の実験台の一部にっ……」


 鬼山鬼太郎は話終わる前にキュータに殴られてしまう、吹っ飛ばされた鬼太郎は、最初はピクピクと動いていたが次第に動かなくなりそのまま消えてしまった。


 鬼太郎の壮絶な最期を見届けたキュータはかなり慌てていたチビにだんだんと怒りが湧いてくる。


 「おい!このクソ犬!!お前大袈裟すぎなんだよ、ただのザコじゃねーか!あんなのお前一人でなんとかなっただろ!」


 キュータはチビの首を掴み大声で文句を言う、チビは耳と尻尾が垂れ下がりしょんぼりしている。


 「だって知らない匂いだったから……」


 「知らない匂いだと?お前あの屋敷からあまり出ないから知らない匂いばっかに決まってんだろ!匂いだけじゃなくて霊力も確認してから報告しろ!封印を解くのもタダじゃないんだ!かなりの霊力を消費しちまうんだよわかったか!このクソ犬!」


 そう言うとキュータはチビを下ろす、チビは小さく返事をし落ち込みながら家の中に入って行った。


 「そんなに言わなくてもよかったんじゃない?」


 怒りで興奮しているキュータをなだめる様にアキが言う、キュータは深く深呼吸をし、気持ちを落ち着かせる。


 「俺らも命かけてんだあのぐらい言わないと誰かが死んじまうかもしれない、アキも集中しとけよ」


 キュータの言葉に改めてここが危険な所だと言うことをアキは思い知らされる、なんで自分がここにいるのかがわからなくなりもう帰りたいと思い出した時、後ろの方から誰かの声が聞こえてきた。


 「すぐそこに敵がいるかもしれないのにあんな大声で話すとはなんともマヌケな奴らだな」


 聞いた事ない声だったがその声を聞いた途端キュータは全身の毛が逆立った、さっきの鬼とは比べ物にならない霊力の量に圧倒され振り向くので精一杯だったが振り向いた途端殴り飛ばされる。


 キュータは殴り飛ばされた勢いで家の壁を突き破り家の中に消えた、アキは一瞬でキュータが消えた為何が起きたか分からず声の主を見ることしかできなかった。


 「加護アキだな?狂鬼様がお前に興味があるらしい、生け取りと言われているが抵抗すれば殺す」


 大きな体に大きな角、さらに口からはみ出た鋭く尖った牙、その恐ろしい風貌はアキの戦意を喪失させるのに十分だった。


 大きな鬼の大きな手がアキの方に真っ直ぐ伸びてくる、アキは全く動けずもう少しで手が触れそうになった時家の中から大きな音を立てながらキュータが飛び出してきた。


 「アキすまんビビった!もう大丈夫だからしっかりしろ、さっさとコイツぶっ倒すぞ」


 殺したと思っていた者が急に現れた為その鬼は一瞬驚いた表情をしていたがすぐに嬉しそうな表情になった。


 「俺の一撃を耐えたか……なるほど猿は猿でも岩猿だったかこれは珍しい」


 鬼はアキに伸ばしていた腕を引っ込ませ完全にキュータの方に体を向ける。


 「俺の名は覇鬼、最近俺を楽しませてくれる奴は居なくなってしまったがお前はどうかな」


 【猿武 岩砕拳】


 キュータは霊力をまとった拳で攻撃するが覇鬼に受け止められてしまう、覇鬼は腕を振り上げキュータに攻撃しようとするが大量の虫に視界を遮られてしまう。


 【霊虫 鱗翅群】


 アキが生成した虫達が覇鬼に群がっていく、キュータは一瞬の隙を見てその場から離れることができたが、覇鬼は群がってくる虫達を霊力を放出するだけで全て消し去ってしまった。


 「アキ、正直アイツ強すぎるアキの術で俺の能力を上げるしか勝ち目がない……できるか?」


 アキは小さく頷く。


 覇鬼はアキの背中に生えている蝶の羽を珍しそうに見る。


 「その術……なるほどそう言うことかだから狂鬼様はお前の事を欲しがったのか…… まぁいい今は岩猿との戦いを楽しみたい、来い岩猿!がっかりさせるなよ?」


 覇鬼はアキの事がどうでも良くなったのか今はもうキュータの事しか見ていなかった。


 覇鬼は不気味な笑みをキュータに向ける、アキに霊力をもらい能力を上げてもらったキュータは覇鬼に殴りかかるが簡単に避けられてしまう。


 思ったより簡単に避けられた為キュータは焦る、今のキュータはアキの能力でいつもより力もスピードも倍以上になっているがそれでも覇鬼との力の差は歴然だった、キュータは舌打ちをしながら地面に手をつき霊力を流す。


 【猿武 岩分身】


 キュータの隣に全く同じ姿のキュータが地面から現れる、そして二人のキュータは霊力を込めて無数の岩を生成する。


 【猿武 岩石砲火】


 霊力を込めて作った無数の岩を全て覇鬼に向けて放つ、だが覇鬼はこれを避けることなく全て受けきる。


 「全然ダメだ、威力もスピードも期待以下だな」


 覇鬼はがっかりした様に首を振りながら言う。


 「勝手に俺の技評価してガッカリしてんじゃねぇよまだまだこっからなんだよ」


 キュータは更に分身の数を増やし覇鬼に襲いかかる、かなりの数の分身との戦闘に覇鬼は苦戦していたが分身達の攻撃が効いている様子は無い、そして覇鬼は全ての分身を破壊してしまう。


 「面白い!面白いぞ!次はなにをする!?」


 分身と覇鬼の戦闘中霊力を溜めていたキュータは全ての霊力を使い術を発動する。


 【猿武 猿王嶄絶(えんおうざんぜつ)


 覇鬼の周りの地面から鋭く尖った岩肌をした山が出現する、その山は覇鬼の体を抉りながら隆起していき覇鬼の体が山に埋もれて見えなくなった時には頂上が見えないほど高く聳え立っていた。


 「ハァ……ハァ……やったか?」


 キュータは膝に手をつき荒い呼吸を整える、猿王嶄絶は凄まじい威力と引き換えにかなりの霊力を消費する為今のキュータでは一発放つのが限界だった、キュータはもう立っているだけでやっとの状態であり覇鬼が埋もれた山を睨みながらもう出てくるなと願う事しか出来なかった、しかしキュータが作り出した山はすぐに轟音と共に崩れ出した。


 「いいぞ岩猿!何百年振りだ?こんな面白い戦いは!」


 崩れた山から現れた覇鬼は体中から出血しているがダメージを受けている様子はなく山が崩れて出来た岩の間を軽々と飛び越えキュータの前に立つ、キュータは反撃しようとするが一度に大量の霊力を消費した為全身の力が抜け膝から崩れ落ちてしまった。


 「はぁ……これで終わりか、まぁまぁ楽しめたぞ岩猿」


 覇鬼はため息をしながらそう言うとキュータにトドメを刺す為に右腕を振り上げる、その時覇鬼の腕に数匹の虫が喰らい付いてくる。


 「弱い女だ、その術とかなりの霊力を持っていながら虫に噛ませる事しか出来ないか」


 覇鬼はアキの方を向きながら手に喰らい付いている虫を掴み頭を潰す、覇鬼は一瞬だけ立ち止まると考えが変わったのか一歩づつゆっくりとアキの方に近づく。 


 「おい……待ちやがれ!」 


 キュータが苦しそうに叫ぶ、覇鬼はアキに近づきアキの体を持ち上げ担ぐ、アキは必死に抵抗するが覇鬼はびくともしない。


 「岩猿よお前は殺そうと思ったが気が変わった、殺さないでおくがこの女はもらって行く、また強くなってから会いに来いお前なら喜んで相手してやる、とりあえずこの女は諦めろ」


 そう言うと覇鬼はアキを抱え村の奥に消えていった、霊力を完全に使い切ったキュータは立ち上がる事もできずそのまま気を失ってしまった。





 村の中を息を荒げながら赤鬼が走っている、赤鬼は泥だらけになりながらもある家に入った。


 「狂鬼様!いらっしゃいますか!?赤鬼です只今戻りました!」


 家に入った途端全ての部屋の扉を開けながら赤鬼は叫ぶ、奥にある部屋の扉を開けるとそこには腕を枕にして横になっている狂鬼がいた。


 「赤鬼か遅かったなもう覇鬼は帰ってきてるぞ賀茂の子孫はどこだ?」


 「それが……あいつは恐ろしく強い男です青鬼がやられました狂鬼様力を貸してくださいあいつを殺しに行きましょう!」


 赤鬼の言葉を聞くと狂鬼は深くため息をつきうなだれる。


 「そうかお前らしくじったか……面倒くさい事になったな」


 狂鬼の大きなため息が聞こえてきたのか違う部屋から覇鬼が入ってきた。


 「狂鬼様どうかなさいましたか?」


 「赤鬼と青鬼がしくじったらしいまだ賀茂の子孫を殺すことができてないそうだ」


 「やはり俺が行った方がよかったのでは?」


 「いや重要なのはあの女の方だ覇鬼にはそっちに行って欲しかったから仕方がない問題は赤鬼と青鬼が弱かった事だ」


 「赤鬼の処分はど……」


 赤鬼は青鬼を殺された事もあって自分を無視しながら話をしている二人に怒りが湧いてきた。


 「何を悠長に話しておられるのですか!?早く青鬼の(かたき)を取りに行きましょう!」


 赤鬼は大声で二人の話を遮る。


 「なんだお前まだいたのかもうとっくに私から出る殺気を感じ取って逃げ出したと思っていたが私も見くびられているのかそれともこの殺気を感じ取れないほどお前が愚かなのか」


 そう言いながら狂鬼は一歩づつ赤鬼に近づく、今まで味方だと思っていた狂鬼から溢れ出る殺気に赤鬼はやっと気づいた、狂鬼から出る威圧感は赤鬼に呼吸の仕方を忘れさせるほどだった。


 「お許し……くだ……」


 呼吸が上手くできない赤鬼は必死に許しを乞うが狂鬼は止まる事なくゆっくりと近づいてくる。


 「許せだと?許すわけがないだろ相手はただの人間だったはずだ、賀茂の子孫だったとしても人間だ霊力量も筋力も何もかも私達鬼の方が上だ、なのにお前達は二人で負けた」


 赤鬼に手を伸ばせば触れることができる距離まで狂鬼は近づく。


 「情けないと思わんのかお前だけ生き残ってどーするつもりだったのだ?青鬼が死んだ時お前も死ぬ覚悟で戦おうとしなかったのか?私を使って復讐したかったのか?やはりお前私のことをナメてるだろ」


 狂鬼は両手で覆うように赤鬼の顔に触れる。


 「狂鬼様お許しください……次こそは必ず自分の手で仕留めますので!」


 赤鬼は体の底から湧き出てくる死の感覚に耐えながら息も絶え絶えに叫ぶ。


 「次だと?お前に次はない」


 その瞬間、赤鬼の体は狂鬼が触れている所からボロボロと崩れ出し赤鬼が悲鳴を上げる時間もなくあっという間に消えて無くなった。


 「狂鬼様、これから如何なさいますか?恐らくですがここも向こうに気づかれているかも知れません」


 狂鬼の後ろで覇鬼が部屋の中に止まっている鬼蜻蜓(オニヤンマ)を見ながら言う。


 「別に何もせん、来たければ来るがいいちょうど私の実験体を試したいとこだった、使える駒が2体無くなったからな。」


 そう言うと狂鬼は部屋に止まっている鬼蜻蜓を素早く捕まえる、狂鬼は鬼蜻蜓の羽を持ちながら少しの間見たあと握り潰した、すると鬼蜻蜓は形を変え割れたビー玉のような形になる、狂鬼はその割れたビー玉を捨てるとまた腕を枕にして寝てしまった。


 

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