勇者B、説得する
「えっと、なんで……ですかね?」
と言うと、ブライトは動きを止めた。
「えっ」
「えっ?」
「いや、だって……魔王……倒さないと……えっ、国の危機なんだぞ? そこんとこ分かってるか?」
「うーん……」
「うーん!? 迷うところがあるか? 国難に立ち向かう勇者、勇者パーティーだぞ!?」
「いや、そういう名誉とかは俺、興味なくてですね……」
ブライトが信じられないものを見る目で俺を見ているのがよく分かる。
いや、だって、褒め称えられたところで、だし……。
それに、そもそも俺ができることって、あまりないような気がする。
「じゃ、じゃあ、そのペットとやらを貸してはもらえないだろうか」
「ガウッ」
「無理だ」
「すごいな、同じ言葉を発したのが分かった」
こんなに可愛いワタゲをほいほい人に貸せるか!
物じゃないんだぞ!
「いや、言ってみただけだ……本気で思っちゃいないよ、悪かった」
ブライトが咳払いをする。
「ただ、魔物を倒すといいこともあるんだぞ」
「うーん、いいことって何ですかねぇ」
しぶっていた俺の横でワタゲがのどを鳴らす。
「たとえば」
ブライトの目がきらっと光った。
「単刀直入に言えば、国民の助けになるような魔物退治には国の報償金が出る」
「いや……でも金を貰っても……」
「その猫? この家が少しせまいみたいだな」
「なっ!」
そういえば、最近ワタゲの爪研ぎに家の柱が耐えきれずに崩れかけている。
壁やソファーも限界だと言わんばかりにぼろぼろだ。
机の板にも穴が空いた。
「金があれば、広い家、いや、屋敷が作れる。城を買ったっていい。ペット用の部屋はいくらでも用意できる」
「な、何……だと……」
その発想はなかった。
夢のキャットハウスだって、もはや夢じゃない。
ワタゲサイズのキャットタワーだって置けちゃうのでは……?
「うーんうーんいいけども野菜がなあ……」
「旅だって一生し続けるわけじゃない。魔王を倒したら定住すればいいんだ。新しい家に畑でも何でも作ればいい。それに、ゆくゆくは友だちがいるんじゃないか」
「そんなものべつに」
「猫の、だぞ」
「……」
「一匹だけじゃさみしいんじゃないのか? ああ、旅をしたら仲間がいるかも」
「くっ……」
悔しいが、名案だ。
それに、夢のキャットハウスにワタゲとワタゲの友だちの猫チャァン……?
「お、俺は……何をすればいいんだ?」
靴でも磨けばいいのか?




