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偽りの恋人  作者: 夏目 碧央
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何を望んでいる

 ナナの高校時代の女友達が、プチ同窓会を開くと言って連絡してきた。ヒロ以外の友達とはほとんど付き合いのないナナだが、誘われたので行くことにした。ある土曜日の夕方である。

 新宿にあるレストランで、その会は催された。コース料理とワインが出て、食事をしながらの会だった。

 高校3年の時のクラスメートが8人集まった。卒業してから12年ほど経ち、皆30歳になっていた。既婚者は3人。子供がいる人は1人だった。

「子育て大変でしょう?」

「仕事は続けてるの?」

「保育園すぐ決まった?」

「旦那さんは協力的なの?」

近況報告が終わるや否や、子供がいる人への質問責めになった。だが、ある程度子育て談が出尽くすと、今度は既婚者への質問が始まる。

「どうやって出逢ったの?」

「結婚の決め手は?」

「旦那さんは家事やってくれるの?」

などなど。ナナの配偶者は皆の知っている元クラスメートなので、出逢いの質問はなかったが。

「うちは、ほら。ああいう人だから、家事はむしろ向こうが得意っていうか。」

ナナは質問に答えながら、非常に心苦しさを感じていた。男女が結婚している、それは紛れもない事実なのだが、やっぱり皆を騙しているような気がしてならない。

「ねえ、彼に浮気されたことはないの?」

ふとそんな質問がどこからか聞こえてきて、ナナはビクッとしてしまった。それはナナにされた質問ではなかった。浮気。事実だけを見たら、今はその状況だ。

「ナナ、どうしたの?なんか元気ない?」

隣の席からそう声を掛けられた。

「え?そんな事ないよ。でも・・・一個質問していい?もしさ、親友に彼氏が出来たら、寂しいもん?」

ナナがそう言うと、周りにいた数人がその話を耳にして、食いついてきた。

「ああ、学生時代にはよくある話だったよね。」

「そうそう、いつも一緒に出かけてたのに、彼氏出来ると急に友達はポイッて感じでさ。仕方ないんだけど、こっちは一人になっちゃうから辛いんだよねー。」

「分かる分かるー。高校生とかだと最悪だよねー。」

皆で盛り上がる。そうか、そういうもんなのか、とナナは思った。今更、そんな事態になっているのだ。もうすっかり大人なのに。結婚しているのに。

「でも、ナナには旦那さんがいるからいいじゃん。友達と疎遠になったとしても、やっぱり家族がいれば安心だよね。」

「そうかー、やっぱり家族を作るのっていいよねー。私も結婚しようかなー。」

「相手いるの?」

「いや、これから探す。」

「あははは。」

やはり、皆で盛り上がる。ナナは誰にも言えないものを抱えているせいか、全然盛り上がれない。盛り上がれないので、やたらとワインを飲み倒し、気分が悪くなってきた。

「でもさ、結局彼氏と上手く行かなくなると、また戻って来るんだよね。」

「若い頃は恋愛も上手く行かないしね。」

「そう、あっという間に破局して戻って来るんだよねー。」

皆の話は続いていたが、

「ごめん、ちょっと悪酔いしたみたい。先に帰るね。」

ナナはそう言って、一人で抜けて帰宅した。

「ヒロも、そのうち破局して戻って来るのかな。」

今朝ヒロに、自分も泊まりだから遅くまで楽しんでおいで、と言われたナナ。結局早々と帰ってきて、ベッドに入っている。

「私は何を望んでいるんだろう。ヒロの破局?うううん、ヒロの幸せを望んでいる。でも、でも・・・。」


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