姉さんの呪い
春だ。暖かい。だけどまだ朝は少し肌寒い。
今日から2年生なんだけど、特に変わらない。俺の心情は何も変わらない。
いつも通り目覚めて、階段を降り、姉さんの遺影に手を合わせる。
「姉さん、今日から俺高校2年生だよ。姉さん越しちゃったよ。」
俺の姉さん「川上楓」は、いい人だった。優しい人だった。だけど、これが仇になって、死んだ。俺がちっちゃな頃に。
あの頃は優しいっていうのはプラスステータスだと思ってた。だけど、姉さんの死によってマイナスステータスなのだとよくわかった。
姉さんは見ず知らずのお婆さんを助けて死んだらしい。どのように死んだのかは俺には教えられなかった。だけど、誰かを助けた代わりに自分が死んじゃうなんて、元も子もないじゃないか。
だから、俺は大好きな優しい姉さんを「愚か」とも思ってしまう。
そして姉さんの死は俺に一つ、大きな爆弾を置いていった。
俺が生まれたとき姉さんは既に小学校を卒業して、中学生になっていた。姉さんは頭がよくて常に学年トップをとっていたらしい。
俺が6歳になった時だった。俺はふと姉さんに気になったことを聞いた
「ひとって死んだらどうなるの?」
これに姉さんは「お星様になるんだよ」とかみたいなことは言わずに、一緒にいろんな説を出して話し合ってくれた。そして最後に言った言葉は俺は忘れなかった。
「本当に謎だよね。死ってものは。死ぬ時に何を考えているとか、どんな感覚なのか。そんなの当の本人にしかわからないんだもん。こんなことに疑問を持てた走馬は天才だなぁ。姉さんは鼻が高いよ。あ、いいこと思いついた。私がお婆さんになって死にそうな時は、私の考えていることを走馬に全部隠さず教えてあげるよ。だからそれまで、走馬はその考えを捨てないでね。」
結局姉さんはこの俺にとっての呪言を残して、その1週間後に死んだ。
それ以来俺は、人の死について、なんでもいいから掴みたくてもがいている。
死は俺の呪いであり、活力……か。