…… レディ・オリビアからの招待状 4
「 …… レディ・オリビアから招待状が届いているわ。 」
あの夜いちどだけ会った、優しげな老婦人の顔が浮かんだ。
身につけていた高価な宝石からも高い身分である事は想像できた。
「 …… これだけはお断り出来ないから、これが済んだら帰っても良いことにしましょう。 」
「 …… 本当ですか? 」
「 …… 嘘をついて何になるの? 」
「 …… つい言ってしまっただけで深い意味はありません。 」
「 …… メアリは衝動的に言葉を言ってしまうようね。 」
「 …… 無作法だとはおもうんです。 」
「 …… 一度、深呼吸なさい。いつかとんでもない事を言って後悔しないように。 」
「 …… 深呼吸を忘れないようにしないと。 」
メアリは久しぶりに笑顔になれた。
ずっと暗い洞窟に閉じ込められていた気がする。
…… はるか彼方ではあるが出口の光が見えた気がした。
地所に戻れば、母様やジョンがいる。
もう、こんな不安な気持ちでいる必要はなくなる。
…… だけど、無駄になってしまった費用。
ジョンはきっと小言を言うだろう。
でももう夜会に行くようなドレスはいらない。
…… もっと切り詰められる所をさがしてもいい。
…… もう日常に戻るのだ。
帰ったら家中の床を磨こう。
…… そうすればきっと心が落ち着く。
そう思いながらもそうではないことに、メアリは気づいている。
もう多分、心が落ち着く事はないのだ。
…… 以前と同じようには。
もう日課のように軽やかにノックが鳴った。
返事をすると同時にはエリザベスがドアの隙間から滑り込んできた。
出会ったばかりの少し堅苦しかったエリザベスはどこにもいない。
「 …… 信じられないわ。 …… 本当に帰ってしまうの? 」
「 …… ええ。 …… でも、レディ・オリビアの夜会に出てからよ。 」
「 …… でも、すぐじゃない。 …… 来週だもの。 」
「 …… 来週までまだ一週間あるわ。 」
「 …… 信じられない。 …… せっかく、親友が出来たのに。 」
「 …… あら、どこにいても親友よ。 」
「 …… でも、こうしていつでも会えるわけじゃない。 」
「 …… それは …… そうね。 」
メアリは視線を逸らして苦笑いした。
出来もしない事を、気休めに言うことはできなかった。
…… 気軽にまた来る、とは言えない。
エリザベスもメアリもその事は知っている。
知っていても言わずにいられないくらい、遠慮のない関係になっていた。
…… ここに来る前には思ってもいなかったのに。
それだけでも、ここに来た甲斐があったと言うものだ。
「 …… それじゃあ夜会に何を着れば良いのか決めなくちゃあね。 」
エリザベスは心を奮い立たせるように言った。
メアリは何を着ても一緒だと思った。
…… 見て欲しい人は、きっと来ない。
夜会に出るたびにいつのまにか探してしまう。
…… 滅多に夜会には出ないという人。
たとえ何を着て行ったとしても
彼のメアリに対する評価はかわりはしない。
…… 何もしなくても、最低なのだから。




