妻と会いたくない
最近、ちょっと付き合っているシングルマザーの女が、しきりと「息子さんたちと、会った方がいいよ」と言ってくる。
俺は、大手旅行会社から公務員に転職し、元妻にであった。フィーリングがあったからという感じで結婚し、息子を二人授かった。
仕事では、二年間のオーストラリア勤務を打診され、英語は大の苦手だった俺は悩んだが、出世コースを外れることが不安で、話をうけた。妻が育児休業中だったため、家族でオーストラリアにいった。
二年間は必死だった。言葉が上手く伝わらない惨状をなんとか乗りきろうと、飲み会では、半ケツをだすストリップショーまで繰り広げた。馬鹿な日本人の後輩が二人いて、長男、次男、三男みたいな感じで、俺のあとに続き、男三人の半ケツショーは、飲み会の定番になり、出入り禁止をくらった店もあった。
しかし帰国後、俺は鬱になった。
最初は気遣ってくれていた妻は、次第に俺を責めるようになった。
家にいたたまれなくなった俺は、最低限の荷物をもって実家に身をよせた。
父親として最低限のことはしてやりたいと、息子に養育費四万づつ、俺名義の住宅ローンを12万 計20万の仕送りをしている。
鬱はなかなか治らない。耳鳴りがひどく片耳しかマトモに聞こえない。部屋でふとぼーっとしていると、いつの間にか眠っていたりする。
女は、「ちゃんと息子さんたちと会わなくていいの?」
と、しばしば言ってくる。
一度、動物園に、息子たちと行ってみたが、別れた後の切なさが耐えきれなくて、誕生日プレゼントも郵送で送ってしまった。
女に「財産分与をすれば、ローンは半額になるんだけどね」とこぼすと、「しなよ!」と言われたが、
「妻と会いたくない」
俺のエゴなんだろうか?
女は、いい女だったが、出逢いは精神科病院のデイケアだった。女は双極性障害を抱えていて、彼女が緊急入院した時に訳のわからない留守電が大量にきて、自分のことで必死だった俺は無視してしまった。
そもそも、女という人種が苦手なのかも知れない。
結局、元妻とは、なにも話していない。
「妻に会いたくない」