バルロ・ハルトと中河原ユウキ
では、どうぞ。
《EP.4》
彼女に頬を叩かれてようやくオレは目が覚めた。
自分がどれだけクズで最低な人間かってのも理解した。そうだ、オレは中河原ユウキ。最低な人間代表だ。
だから、最低は最低なりにやってやる。今までの事を無しにして欲しいとかは考えちゃいない。これも含めてオレなんだ。
部屋を出て彼女の後を追いかける。
走りながらオレはこれからの事を考えていた。
オレのやるべき事は1つ。
バルロ・ハルトに勝つ事だ。見えない武器がなんだ。武器ごと蹴散らしてやるさ。
そう脳内で、勝利の筋道を立てていたら――――――――――。
城のバルコニーに彼女の姿があった。
元々整った顔立ちの女とは思っていたが、改めて見ると本当に美しいと感じた。
「………………………なんですか、私は貴方を王子だなんてもう思っていませんから。今は、騎士団の皆さんが無事に帰ってくる事を祈るだけです……」
「…………………ぶっ潰してやるよ」
「………………え?」
「だから、オレが敵をぶっ潰してやるって言ってんだよ」
「………でも、貴方は……………」
「すまない、もう時間が無さそうだ。行ってくる」
「あ……………!」
オレは振り返る事無くその場を去った。
向かうは、デルローゼ前だ。
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「全く…………こんなものか。レベルが低いな…………」
「くっ…………ま、まだ!我々は諦めてっ、いない!」
「うるさいなぁ………黙れよ」
"グサッ"という音と共に騎士の背中が貫かれる。
青年はグリグリと、背中に空いた穴をいじる。
「ふーん………良い肉してんじゃん………」
そして、騎士の背中に手を入れ掻き出す。ベチャベチャと音がする。
「…………これは、良い素材になりそうだ………!!」
青年が、1人で甲高い笑い声を上げていると不意に音がして。
「………………………ん?」
その音に気づいた瞬間には……………………。
「……………………ふっ!!」
「――――――――――――ぐはっ!?」
背中を蹴られ、数十メートル飛ばされていた。
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「………………お前さ、何してんだよウチの騎士達に」
「ふぅ………それは僕のセリフだ。急に攻めないで来て欲しいね」
「先にこの戦いを起こしたのはどっちだよ」
「…………………お前、なんだよ」
「オレは、王子ユウキ!…………って、名乗りたいがオレには王子を授かる資格も無い。そして、お前をぶっ潰しに来た」
「………笑わせるな、僕の武器はな…………っ!」
「見えない………………だっけ?残念だな、オレには見えてる。もう、詰んでるんだよ、お前」
「な、なに………………?」
という、盛大な嘘をオレはかました。
本当は見えてなんかいない。形も分からない。
でも、これで少しでも相手を揺さぶれたら儲けもんだ。
「………ま、まぁ良いさ。バレた所でこの悠久の槍
は破れないからな」
……………王道までなフラグだなぁ、オイ。
まぁ、これで分かった。アイツが持ってる武器は槍だ。どんな形状をしているかも分からないけど少しはマシに戦えるだろう。
「顕現せよ、オレの剣」
オレは早速自らの剣を顕現させる。
無意識に、自然に。
「……………………さぁ、やろうぜ。ハルト―――――――――――――!!」
まだ続きます。次回もよろしくお願いします。