最低へと成り下がる王子
では、本編をどうぞ。
《第1章 EP.3》
「よし、まずは敵国の戦力を教えてくれ」
王城の中にある会議部屋というのにオレは数人を招集した。招集したのは、こちらの主力戦力部隊の長達だ。
「はい。敵は、隣国の【デルローゼ】。この国は昔から栄えており………………」
「えぇい、いちいち説明しなくていい。大体把握してある。戦力を教えてくれ」
昨日、徹夜で書斎の本を読み漁ったからな…………あー、眠い……。
「は、はい!…………敵の戦力は、人数だけで言えば多く見積もっても残り一万程でしょう。数だけならこちらの方がまだ優勢です」
「数だけなら……………か」
「はい。敵にはあの『バルロ・ハルト』がいます。彼1人のみで、自国の戦力その約半分が犠牲になりました」
バルロ・ハルト…………こいつをどうにかしなければ勝ち目は無い………か。
「その………ハルトは、どんな武器を使うんだ?」
その武器によって対策を練らなければいけない。戦法も大きく変わるってものだ。
「それが……………見えないのです」
「………………え?見えない?」
オレは困惑した表情で尋ねた。
「はい。何かを使い攻撃はしているようなのですが、その武器が見えなくて……気づくと死んでいるんです」
それは………なんというか………………もう……
「チートじゃねぇか!?は?見えない?勝てる訳ねーじゃん!?ったく、挑もうとしたオレが馬鹿だったよ!はい、この会議は終わり。解散、解散!」
数秒の沈黙が部屋を包む……。
「ん?どうした?聞こえなかったか?解散って言っただろうが」
「…………………お、王子?どう、されたのですか…………?」
「……………うるせぇな。勝てもしない戦いに悩んで時間使ったって無駄なんだよ。お前らも自分の時間に当てろ?人生楽しんだもん勝ちってやつだぜ?」
そう言って、オレは部屋から出た。
あーあ………本当に言っちまった…………。
さて………オレはもうこの件とは無関係だ。遊ぶぞ、遊ぶぞ。
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今日も平和だな。空が青い。小鳥も囀っている。
戦争なんて、無かったんだろう。
あれから、側近達の姿を見ない。多分、オレに呆れてどこかに行ったんだろう。
そんな時だった。
ドタドタと音がして、近づいてきたと思ったら部屋のドアが全開で開かれた。
「お、王子!!大変です!皆さんが………騎士団の皆さんが………っ!!」
興味無いが、一応聞いておいてやるか………。
「皆さんが、この国の全戦力を集結し打倒【デルローゼ】を掲げて先程行ってしまわれました!!どうか、お止めに…………!」
はぁ…………そんな事か。クソどうでもいいな。
「何で止めなきゃいけないんだ。アイツらは、アイツらの好きにすればいいだろ。オレには全く関係な…………」
"パァン"
という乾いた音が室内に響き渡った。
しばらくして、ようやくオレは状況が理解出来た。叩かれたのだ、頬をコイツに。
「…………………は……?お前………………なに、して……?」
「…………最ッ低です!!」
そう言って、彼女は部屋から出ていった。
目には雫が溜まっていた。今にも溢れそうだった。
だが、彼女は耐えた。耐えていた。
こんな奴に涙なんか見せてはならないと、そう思ったんだろう。
オレは弱い。地位を利用してイキっているだけだ。
本当に、オレは弱い。
だから、オレはオレが嫌いだ。
お読み頂きありがとうございました。
次回もよろしくお願いします。