第七話。試合?試験?どうでもいいけど、この人脳筋です。
お久しぶりです。
前回のあらすじ、
アオイの保護者(仮)と面談。一次審査、面接会場入室。と二次審査面接(数秒)をクリア。
そして、最終試験内容発表!!内容は、一対一で一分意識を保て!!
て感じです。
それではどうぞ!!
「さぁ、どっからでもかかっておいで?」
僕らは地下の訓練場の一室に来ていた。一室というのは、この他にも様々な部屋があるからだ。ここは、無難な土の床、障害物のないまっさらなフィールド。
私の武器は小太刀。左手には杖。魔法戦士のメジャーな装備。
対する、旦那様は木刀一本。しかし、容易には飛びだせない。ただ立っているだけに見えて、隙がない。
いかなる、手段・ルートを取っても、負ける未来しか見えない。
しかし、それでも
「ふっ」
息を整え、構えを取る。武術は母から習った。これが何という流派の物かは知らないが、実戦に生きる型が多い事が本当にありがたい。
相手との対格差は明白。正面から飛びかかったところで勝てるはずがない。まずは、油断させなければ。
僕は、一直線に走りだす。
「ふっ」
彼は、息を整えると奇妙な構えを見せた。この国、いや周辺国でも見ない構え。しかし、どの流派にしろ共通していることはある。例えば、木立は逆手に持ったら下からの攻撃しかできない。というように。
彼は一直線に向かってくる。
なんだ。壁をぶち破ってくるような子だから、もう少し面白い動きを見せてくれるかと期待したが、所詮は実戦を知らない子供。型にはまった動きしか出来ないか。
彼は全力で走っているのだろうけど、僕からしたら止まっているも同然。刃を振ったところで取り押さえるだけだ。
旦那様は一切動かない。僕が、小太刀を振りぬいたところで取り押さえるつもりなのだろう。あきれてる。僕を脅威だと思っていない。「油断している」
それでいい。最高だ。
間合い一歩手前まで、詰める。
「シッ」
右切り上げ。かわされる、のは織り込み済み!で、本命はっ
振りぬいたベクトルをそのまま反転させる。小太刀の背での攻撃。と同時に、水の刃を生成。
旦那さまは、小太刀よりも、水の刃のほうに意識を向けた。
キタっ!今だっ!!
魔法で強化した足で思いっきり蹴り飛ばす。旦那様が半歩後ろに下がった。その半歩を見逃さない。
反射で下げた、右足下の強度を一気に下げる。するとどうなるか、事象改変に対応しきれ無かった土たちが、特殊な音波を出す。ノイズと呼ばれるやつだ。これがあると・・・魔法師は、魔法を使えない。
旦那様の魔法を奪ったところで僕は真上に飛ぶ。そして、僕の使える最強の魔法を、放つ!!
魔法に対抗できるのは魔法だけ。旦那様に対抗する術は無い。とはいえ、旦那様はこのくらいで倒れ無いだろう。
「闇牢獄・水爆」
漆黒の球体が現れ、旦那様を包み込む。刹那、轟音と共に球体が割れ熱と爆風があふれだす。
一瞬で訓練場を駆け抜けた爆風は、地面にひびを入れ、簡単に地形を変えてしまう。
土埃が訓練場にまんえんして、わずか数センチ先も見えない状態になった。
これで、旦那様からは僕がどこにいるのか分からないはずだ。しかし、僕からは見える。魔力の色がはっきりと。
彼の放った、魔法によって僕はかなりの傷を負ってしまった。ノイズを出されると防御の効果も格段に下がる。良い戦略だ。そして、土埃によって僕の視界を奪おうとしたのかな。でも残念。僕に限らず高レベルの魔法師になると、体内の魔力が見えちゃうんだよね。何処にいるのかな?室内をぐるりと見渡す。
・・・おかしいなぁ、何処にもいない。これはどういうことかな。
久々の感覚に、思わず口角が上がる。
首筋がチクリと痛んだ。とっさに飛び退る。先ほどまで僕の首があった場所をナイフが通り過ぎた。濃霧のように体にまとわりつくような殺気だ。魔法が飛んできた。居場所を悟られないように、遠隔型だ。しかし、攻撃魔法は魔法陣が展開された時点で分かる。そして、同時に二つの魔法陣を展開をしたところでそこには一秒未満の誤差が生じる。戦場ではその差が大きな生命線になる。つまり、完全な同タイミングでなければ、避けることができる。
彼は、僕の周りに数十の攻撃魔法を配置。同タイミングで展開、完全な包囲網で袋だたきにしたいのだろうけれど・・・こんな風に避けることができる。
私は、正面からの戦いをするつもりなどはなからない。攻撃魔法を旦那様を取り囲むように三次元的に展開。同時に発動した。これは、どうしようもないはずだ。
と、思っていた。
うそ、何で無傷?よ、けた?あれを?
次の手、早く次を。攻撃魔法を展開。しかし、同時展開でも何でもない攻撃はまるで準備体操をするように避けられた。一歩一歩、距離を詰めてくる。試合前にも感じた巨大な圧。圧倒的な力差。体がこわばるのを感じた。しかし、無様でも意味がなくとも攻撃は止められない。これをやめた瞬間私が負けることは考えなくとも分かる。
どうしようどうすれば、パニックにおちいり考えがまとまらない。
でも、この量の魔法を見ているのだろうか。少しの可能性にかけて攻撃魔法をわざと外すように展開してみた。当たりだ!攻撃魔法の殺気みたいなものを感じ取っていたのか。自分に直接向けられない攻撃には鈍感なのか。けれど、足は止められても進展はしない。魔法は効かない。遠距離攻撃もだめならば、残るは近接。小刀を構える。気配を悟られないように、攻撃を読まれないように注意して・・・
攻撃が変わった。僕に直接向けられない攻撃魔法。避けることに手いっぱいで彼を見失ってしまった。周囲の気配に気を配る。背後で微かに気配がした。そこか、僕は近接戦の構えを取った。
旦那様の背後で微かに気配を出す。これは、ダミーだ。旦那様がこっちを向いたのを感じてすばやく旦那様の背後を取る。間合いに飛び込み刀を振り上げる。標的を捉えた目は正確に背中を袈裟切りに・・・
目の前にあったのは、背中でも木刀でもなく、指で。
「残念」
という声と共に。丸められた人差し指でポンとおでこをはじかれた。指と同期するように体が何か重くかたいものに殴られたような衝撃が走り、壁まで吹き飛ばされる。一瞬の事に受け身も取れず、壁に叩きつけられた。激しく揺れた脳はぼうっとして、白いもやがかかっているが、意識を手放さないよう奥歯をかみしめる。が、激しい運動・緊張・魔法の乱発によって限界を迎えていた体はあっという間に、意識を失った。
焦りがあったのだろう、ノイズが消えていたことに彼は気がつかなかったようだ。壁まで吹き飛ばされた彼は受け身も取らず壁に叩きつけられた。勝負はここまでか。まだまだ粗削りだが、素質はあるようだ。面白い。
っ、本能が腕を上げた。
ザシュ。という生生しい音と共に腕に痛みが走る。とっさに挙げた腕には小型のナイフが刺さっていた。いつの間に仕掛けたのか。たくさんの魔法の気配に紛れて気が付かなかった。ご丁寧に毒まで塗ってあるようで、腕がしびれてきた。ある程度毒に耐性のある僕に効くのだから、なかなか強力なものなのか。それにしても、もし腕を上げなかったら綺麗に首の動脈を切り裂かれるところだった。
これは、育てがいがある。楽しみだ。
旦那様、39歳。強い相手と死闘をすることが何よりも楽しい。戦えれば細かいことはどうでもいい。
ただし、細身の美形のため容姿からは脳筋だと分からない。今まで多くの女性が見た目に騙されてきた。
久しぶりにログインしたら、感想があります。と書かれていました。
一人で、画面に向かってにやにやしていました。ありがとうございます。
ぜひ、ブックマーク、評価してってください。感想もくれると嬉しいです!!
そして、読んでくださりありがとうございました!第九話でお会いしましょう!!