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二つの愛  作者:
24/26

第二十四話

42

槇岡は私を車の外に連れ出した。厚い夜のカーテンの中で道沿いに大きな街灯が瞬く。

壁の向こうに海岸が遠く見えていた。

私の肩を抱きながら槇岡は夜空に目をやる。あの時の月がまた私たちを見下ろしていた。

「亜矢」

深く心にしみいるような声だった。

「亜矢、顔をあげて」

涙の中で槇岡の顔がにじむ。今の槇岡の瞳はしっかりと私を支えてくれていた。

「考え方を変えるんだ」

「……考えって」

「もう一度言う。莉奈を手離せ」

息が止まる。槇岡は私の唇に指をあてて言葉をさえぎる。

「何もそれは捨てろって意味じゃない」

槇岡の表情はいつになく真剣で、漆黒の瞳はいたわりの色さえ帯びていた。

「おまえは潔癖すぎるんだよ。だから迷ってる。俺か莉奈か、二つの愛を同時に得られないみたいに思ってるんだろう?」

「…………」

私を強く引き寄せる。頬に槇岡の熱い吐息がかかる。

「いいか、一番大切な愛をつかめ。そして決して離すな。そうすれば他のも捨て去る必要ない」

「………?」

両肩をつかんでまっすぐに私を見据える。

「誰だって愛の対象はたった一人じゃない。それが人間だろう? 愛する相手への思いはかけがえない。それは確かだ。

だけど他の誰かに愛情をそそぐこともできる。それは恋じゃなくてもいいんだ」

温かく大きな両手で私の頬をはさんで上向かせる。

「愛ってのはたった一つっきりじゃない。おまえは家族を失って余計に莉奈を愛そうとしてる。

それで周りが見えなくなってるんだよ。俺を愛しながら莉奈も愛せばいい」

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