第二十三話
41
助手席で揺られながら私は現実を受け入れられずにいた。
槇岡はなぐさめるように私の手を握る。
「これでいい。仕方なかったんだ。いつかはやらないといけなかったんだ」
「いいわけないじゃないでしょう! なんでばらすのよ」
「おまえに任せてたらいつまでたっても言えないだろう」
「それは……」
「ずるずる先延ばしにしても無駄だ。どのみちいつかはケリをつける時が来る。とりあえず今は時間を置くんだ」
「でも……」
「莉奈を縛っておくほうがよっぽど悪い。そうじゃないか?」
「……これからどうすればいいの」
莉奈を失いたくない。失えない。
「……この世でたった一人の家族なのよ」
涙がとどめなくあふれた。
血じゃない。血のつながりがじゃない。
求めているのはあの子の……あの子の……
槇岡は大きく息を吐いた。
車を止めて手のひらで私の頬をぬぐう。
「亜矢、苦しいのは分かる。だが自分の幸せを選べ」
私の手をたたいた後でぎゅっと握り締める。
隣に座るたくましい槇岡の姿。もはや槇岡の愛もかけがえない。
私の目の前に手の平を突き出して見せる。
「何かをつかんでるのに、別の何かはつかめない。別のものがほしいなら、今つかんでる手を開け」
「……莉奈のことをあきらめろって?」
「そうは言ってない。自分が一番大切な愛をつかんでおけ」
何かを得たいなら何かを失わないといけないのだろうか。
槇岡は私を抱き寄せた。
「莉奈だけじゃない。おまえにだって自分の人生がある。おまえも不幸になるな」
「ダメよ、無理だわ。ずっと家族だったんだから……」
莉奈を失った世界は考えられない。槇岡の身体をそばに感じながら孤独と寂寥感で涙が止まらない。
「莉奈にはよくしてやる。今は受け入れられなくても時が解決する。莉奈が幸せになれるよう全力でバックアップするから。その時からまたみんなで家族なれる。莉奈を失うなんて思うな」




