第十六話
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写真立てから隼也の写真を抜き出して細かく引き裂く。そのまま小皿に入れて火を付けた。
立ち上る煙の影に写真の美女二人の姿が目に浮かぶ。
今頃二人の秘書にはさまれてニヤケきってるのかもしれない。
悩んでいたことがなんだか空しくなってくる。
煙が窓から抜けると、今までの気持ちもあっけなく消えていくような気がした。
(まあいいわ。なんかすっきりしたわ。こっちも)
投げやりな気分になってソファに寝転がる。
心のどこかで分かってた気がする。恋愛の真似事のようなものだったのだ。
どのみち槇岡の奸計に引っかかる程度の愚かな男。もうどうでもいい。
灰の小皿を片付けようとして思い出す。
『一千万は使ったな』
私からすれば信じがたい額だ。槇岡家にとってははした金なのかもしれないが。
世界の一流モデルに支払うお金、現地の派遣、隼也に信じさせるための舞台設定、その辺もろもろ含めると、そのぐらいいくのかもしれない。
あらためて今回のことの異様さが心に迫ってくる。
――槇岡にとって私って……?
強引さとメチャクチャなところばかりに頭がいっていたが、冷静に考えると尋常じゃない。
自分の時間と面目を潰し、大金を使ってまで人を手配する……
その気になればスーパーモデルクラスだって動かせる男なのだ。
なのに……
どうでもいい女なら槇岡だってそこまでやらないだろう。
平気で何人もの女を捨ててきた男なのだ。
私は立ち上がって灰を窓の外に捨てた。
青みががった空には清新な銀月が顔をのぞかせていた。
(……本気なのかしら)
初めて真正面に槇岡の気持ちを感じた。




