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二つの愛  作者:
16/26

第十六話

34

写真立てから隼也の写真を抜き出して細かく引き裂く。そのまま小皿に入れて火を付けた。


立ち上る煙の影に写真の美女二人の姿が目に浮かぶ。

今頃二人の秘書にはさまれてニヤケきってるのかもしれない。


悩んでいたことがなんだか空しくなってくる。

煙が窓から抜けると、今までの気持ちもあっけなく消えていくような気がした。


(まあいいわ。なんかすっきりしたわ。こっちも)

投げやりな気分になってソファに寝転がる。

心のどこかで分かってた気がする。恋愛の真似事のようなものだったのだ。


どのみち槇岡の奸計に引っかかる程度の愚かな男。もうどうでもいい。

灰の小皿を片付けようとして思い出す。

『一千万は使ったな』

私からすれば信じがたい額だ。槇岡家にとってははした金なのかもしれないが。


世界の一流モデルに支払うお金、現地の派遣、隼也に信じさせるための舞台設定、その辺もろもろ含めると、そのぐらいいくのかもしれない。


あらためて今回のことの異様さが心に迫ってくる。


――槇岡にとって私って……?


強引さとメチャクチャなところばかりに頭がいっていたが、冷静に考えると尋常じゃない。



自分の時間と面目を潰し、大金を使ってまで人を手配する……

その気になればスーパーモデルクラスだって動かせる男なのだ。

なのに……


どうでもいい女なら槇岡だってそこまでやらないだろう。

平気で何人もの女を捨ててきた男なのだ。


私は立ち上がって灰を窓の外に捨てた。

青みががった空には清新な銀月が顔をのぞかせていた。


(……本気なのかしら)


初めて真正面に槇岡の気持ちを感じた。

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