表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
二つの愛  作者:
15/26

第十五話

33

五日ぶりの連絡だった。明るい電子音がパソコンから響く。


「隼也」の名前を見ても心ははずまない。

「えらく遅かったじゃない。どれだけ連絡入れたと思ってるの」

声が自然に尖る。冷めてしまった気持ちがひとりでに言葉に出てしまう。

「ん? ……そうだな。ちょっと出張で」

隼也は口ごもる。雰囲気がすでにおかしい。

「…………」


例の一件はまだ問い詰めていない。どう出るか。自分から言うだろうか。試してみたい気持ちもある。

そわそわと落ち着かず目を合わせようとしない。

黙って待ってるとようやく何か決心したように口を開いた。

「その……ずっと考えてたんだよ」

「なにを?」

「俺らのこと」

写真のにやけた表情が頭に浮かび拳に力が入る。

「結局将来どうするか決めないままこっちに来ただろ? 遠距離だし……お互いに大事な仕事もある……真剣に考えてたんだ」

「真剣?……ふーん」

思わず鼻から息が漏れる。

「いろいろあったけどさ、はっきり何か約束したわけじゃないだろ? 俺ら?」

「……はっ?」

気まずそうに画面上で隼也は目をそらす。

「ほら、俺たち、お互いにまだ若いし…… 焦って何かを決める必要ないと思うんだ」

「……それはそうね」

「おまえも言ってたじゃん。店のこととか、自分の夢を大切にしたいって」

「ええ」

「俺もそうかな~って気がしてきたんだよ」

「…………」

自分で勝手に納得したように頷く隼也。

「正直まだ身を固めるなんて早すぎる。おまえだって遠い将来のことは分かんないだろ。早いうちからおまえを縛ったら迷惑だろうって。おまえの負担になりたくないんだよ」

「…………」

「だからさー、いや、その、悪く取ってほしくないんだよ。お互いのためを思ってさ、その……」


心の一番奥深い所が冷えてくる。

隼也に向けていた自分の気持ち。自分が愛情と思っていたもの…… 

「おまえも結局ついてきてくれなかったし、俺もこれから忙しくなりそうなんだ。毎日大変で。ますますかまってやれなくなると思う。おまえだってそうだろ? このままだとお互い負担になるばかりだ」

「……うん」

「それで、その……言いにくいけどさ。どうかな、頭を冷やすっていうか」

「頭を冷やす?」

「そう。……俺たち自由にならないか? 悪く取るなよ。あくまでおまえのためを思って言ってるんだ。一度二人の関係を綺麗にして……」

冷えた心の底から愛の代わりにマグマのような強い感情があふれてくる。

うんうんと明るい顔で隼也が続けた。

「ほんとにおまえのことを一番に考えてなんだ…… 俺の都合で縛っちゃうと重荷になるだろ? だから俺も切ないけど、我慢して……」

「……気付いてないのね」

「はっ?」

「ほんっと、お人好しの馬鹿っていうか。術中にはめられて」

「えっ? えっ? なに?」

「だから、騙されてるのぐらい気付きなさい! このスカタン!」

「ええっ?」

あわてふためいている。画面越しなのが残念だった。

最後に頬っぺたに一発くらわしてやりたかったがそこは我慢する。


そのまま画面の「元・彼氏」を無視してパソコンの電源を落とした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ