②▣ 生け贄の顛末 ▣ (三太郎物語 その弐)
桃太郎が不当逮捕されてから三年の月日が流れていた
ここ数年悪天候が続き、当然農産物も不作続きであり
さらに悪い事に疫病が流行り、医療技術の発達していなかった為、たくさんの死者が出ていた
また長引く悪天候により海や河川は荒れ狂い、魚介類も慢性的な不漁だ
ついには民衆が「この世の終わり」と憂う声もあちこちで聞こえ始めていた
当然、御上の統治力は弱り、国中のあちこちで食糧を溜め込んだ裕福な倉や地主らなどに、焼き討ちや強奪が頻発するようになった
国や地方を治める権力者たちは困惑した
このままではいずれ自分たちに民衆の怒りの矛先が向かうのは必至だからだ
「長引く悪天候は天が怒り狂っているからだ、それを鎮める為には生け贄が必要だ!」
政治とは政を治める事
神に対する儀式などを積極的に取り仕切る事で、乱れた世の中の規律を再び引き締めていこうと考えるのは自然の成り行きである
その為か、長く幽閉されていた桃太郎や浦島太郎に白羽の矢が立つ事になった
桃太郎が勝手に遠征して鬼退治をしたり、浦島太郎が竜宮城などと言った嘘八百の法螺話を吹聴するから天が怒り狂っているのだと
全くもって言いがかりではあるが、長引く悪天候や慢性的な食糧不足などで民衆の心は既に荒みきっていた
当然ながら平静でいられるはずも無かった
民衆も彼らの不当逮捕の最初の頃は、同情の声がたくさんあったが
その日の食事すら困窮するような現状に、次第にその原因を桃太郎や浦島太郎に怒りの標的を向けるようになって行った
幽閉された彼らが神への生け贄にされる事に反対の声が上がる事は無かった
ついに嵐の日に桃太郎や浦島太郎を乗せた船を、逆巻く海に沈める事で天の怒りを治める儀式が厳かに執り行われた
偶然かたまたまか、それからは比較的天候も回復していくのだった
民衆の行きどころの無い不満はいつしか霧散しつつあった
果たして、それから数年後
西の半島から海賊船の大船団が日本目掛けて押し寄せて来た
それは嵐の海に沈められて死んだはずの桃太郎と、浦島太郎らがジンギスカンと名前を変えて日本目指して侵略して来たものだった
元桃太郎と元浦島太郎らは声高にこう叫んだ
「ものども、あの鬼ヶ島の鬼どもを皆殺しにして奪い尽くせ!」
三部作です
次回は完結編
大どんでん返しの予感
((( ;゜Д゜)))ガクガクブルブル