女勇者と強すぎ魔王3
明けましておめでとうございます♪ヽ(´▽`)/
「ハッピーニューイヤーッ!!!」
「…………はぁ?」
「うわ、ノリ悪いな……」
新年早々視線が痛い。
おめでたい日なんだからもうちょっと優しくしてくれてもいいのにね。
「とりあえず首よこしなさいよ」
「ん? きな粉餅食べたい? ちょっと待ってて作ってくるから」
「どういう耳してたら今のがそんなふうに聞こえるのよ! 早く首よこしなさい!」
一足飛びで五、六メートルはあったであろう俺との間合いを詰めるとユウキは腰に下げられた勇者だけが持つことを許された聖剣とやらを引き抜き斬りかかる。
まぁ、そうなるとは思ってたんだけど……
「ストップッ!!」
それをさせるわけにはいかないのだ。
「……なによ?」
俺の首に触れる寸前でユウキの握る剣は止まりその刀身が反射する光に俺はほんの少し目を細める。
相変わらず律儀な子だ。
この子が剣を向ける相手は最低最悪の裏切り者にして人類共通の敵である『魔王』だというのに。
ぶっちゃけ今の制止なんて聞かずにそのまま俺の首をはねてても彼女はよくやったと褒められるだろう。
でも彼女はそれをしない。
この子はそういう子なのだ。
俺はそれを知っている。
だから俺は……
「ちょっと? どうかしたの? ボーっとしてるとこのまま首吹っ飛ばすわよ?」
「おやぁ? ユウキ風情にそんなことができるのかなぁ?」
「――ッ! 上等じゃないっ!! 間抜け面のまま死になさい!!」
「『強制旅行』」
カランッ、と音をたて聖剣が謁見の間の入り口付近に転がる。
「学習能力って知ってる?」
勇者が持つスキルは一つを除きその全てが剣を使うことによってその真価が発揮されるものである。
ちなみに勇者の特性で『聖剣』を使えば剣の性能以外の所でもスキルの威力が更に上昇するらしい。
まぁそれはともかく、要するに剣のない勇者なんてのはせいぜいかなり強い人間止まりなのだ。
モンスターだとSランクに満身創痍でギリギリ勝てるかどうかといったところか。
それだけ大事なものをこうも簡単に取り上げられていたら世話ないだろ……
一応、聖剣の機能で無くしても念じるだけで手元に戻ってくるようにはなってるらしいけどこの距離で聖剣を召喚する前にユウキを殺すなんてのは俺にとっては朝飯前だからもしこれが本当の闘いだったらユウキは既に詰んでるわけだ。
しかも結構な頻度でユウキは俺相手にこれをやらかしている。
最強の才能が聞いて呆れるよなほんと。
「つ、次こそは絶対に――」
「はいはい、期待して待ってますよ」
うむ、まぁなんだかんだで城には傷一つつけることなくこの通過儀礼みたいなのを終えることができたな。
年末で大掃除したばっかりなのに城壊したらどんな目で見られるやら……
「絶対思ってないでしょ!! 見てなさいよ! 次に来るときにはあんたの首なんて一瞬で吹っ飛ばしてやるんだからっ!!」
「ん、じゃあ『すごろく』しよっか」
「せめてこっちを見なさいよ!」
別に無視してるわけではない。
腰に手をあて俺を指さしながら高らかに宣言するユウキを横目に椅子の下に置いておいたすごろくを取り出しただけの話だ。
「……ん? ねぇ、すごろくって?」
「サイコロ振って出た目だけ進んで先にゴールした方が勝ちのボードゲームだよ」
「…………?」
あ、理解できてねえなこれ。
「……まぁいいや。やりながら覚えたらいいよ」
そう言って俺はサイコロをユウキに手渡す。
「……なにこれ? どうするの?」
「それを転がして出た目の数だけ駒を進めるんだよ」
「……えっと……とりあえず振ればいいんだよね」
ユウキがサイコロを転がす。
ころころと転がりサイコロは六の目を出した。
「ん、じゃあ六マス進んで」
「……あ、これでこのスタートってところからゴールってとこまで先に行った方が勝ちってこと?」
「そゆこと」
ルールは理解してもらえたらしい。
「じゃあ私早速リードじゃん! さっすが私!」
「あ、ちなみにマスによって色々仕掛けがあるからね」
「へ?」
トントンと調子よく駒を進めていたユウキだったが俺の言葉に指を止める。
そこはちょうど六マス目でそのマスに書いてあったのは……
『今日一日勇者は魔王のメイドになる』
「よっしゃあアアアアァァッッッ!!!」
「な!?」
「ククク、かかりおったな勇者よ!!」
「あんた最低ねっ!!」
「魔王だからね」
顔を羞恥なのか怒りなのかは知らないが赤く染めて罵倒するユウキに俺はそう返す。
「しかもこれよく見たら始めの六マス全部同じ内容じゃない!!」
「始めに気づかなかったのが運の尽きよ!! とりあえずこれ着てね」
「――もうやめる!!」
自分史上最大の小物感を漂わせながら空間魔法でねじ曲げた空間からメイド服をとり出し突き付けるとユウキはそう叫んだ。
まぁ、ここまでは想定内だ。
当然、逃しはしないがな!
「あんれぇ? 逃げちゃうのぉ? 名高い勇者様が魔王相手にたかがゲームで逃げちゃうのぉ??」
「――ッ、だってこんなのずるいじゃん!!」
「いやいや、勇者様ともあろうものが一度受けた勝負を途中で投げ出すなんてダメだと魔王は愚考しちゃうなぁ。うっかり口が滑って人間に勇者が魔王に怖じ気づいて逃げたって言っちゃうかもなぁ……」
「――くうぅぅっ……あんたほんと最低っ!!」
「まぁ、決めるのはユウキだよ? それにユウキにとって凄い良いマスも用意してるんだけどなぁ」
「……どれよ?」
苦悩し頭を抱えるユウキがほんの少し顔をあげ俺に問う。
それに対し俺はコンコンとマスを指で叩きいくつかを示す。
『五分間魔王はスキルを使わずに勇者と闘う』
『勇者の攻撃を魔王は一度だけ防御せずに受ける』
『じゃんけんで負けたら勇者に魔王は首あげる』
これでユウキは退くことができないだろう。
ククク、我ながら策士過ぎて自分が怖いぜ……!
「……あんたバカなの?」
「なぬ!?」
「普通こんなゲームに命かけないでしょ……?」
「なに言ってんのさ。ハンデ位でユウキに負けるほど俺弱くないし」
ちなみにユウキはじゃんけんで絶対、一番始めにグーをだす。
「上等じゃない……!! 後で吠え面かいても知らないわよ!」
「よし、かかった」
「どういう意味よ!!」
「あ、やるならとりあえずこれ着てね」
ユウキの叫びなどそっちのけで俺はメイド服を押し付ける。
メイドはよっ!!
「うっ……分かったわよ! 着れば良いんでしょ!? 着れば!」
半ばやけくそで叫びながら俺の手からユウキはメイド服をひったくっていく。
ちなみに魅惑のお着替えシーンは見せてもらえなかった。
覗こうとしたらこの城のメイドさん達にめっちゃ睨まれた。
というかあれはゴミを見る目だったね。
この時ほど自分の威厳のなさを後悔したことはないよ。
「ほらっ! さっさとやるわよ!」
「おい! 誰か今すぐカメラ開発しろ! 絶対に永久保存する!!」
こんなことなら技術班に頼んでカメラ作っておいてもらえば良かったぁあああッッッ!!!
「なに言ってんの? ほら、次あんたの番でしょ?」
「うぅ、我が生涯一生の不覚……!」
俺のテンションは最高まで上がって瞬時に最低まで下がったがそんなことは関係なしにすごろくは進む。
そして、いよいよ終盤へと差し掛かり……
「どうせなら勝った方は負けた方に何でも一つ命令できるってことにしない?」
「良いわね! もっとも勝つのは私に決まってるけど!」
自信満々で俺の提案を呑むユウキ。
ユウキは残り七マスでゴール。
対して俺は残り十三マスでゴール。
些か俺の方が不利なのでユウキが快諾したのも頷ける。
しかしまぁ……自分で提案しといてなんだけどこれなんの意味もないんだよな。
「よっし! あと一マスでゴールね!」
このタイミングでも強運で六を引き当て駒を進めるユウキ。
そして、彼女が駒を進めたマスには……
『スタートに戻る』
「………………はぁああああ!?」
ちなみにゴールから六マスは全部同じである。
「いや……これゴールできない……」
「我ながらよく考えたと思うよ。これなら永遠に遊べる!」
「死ねッ!!」
最強の人間による平手打ちが炸裂した。




