2幕:隠し通したい内容
嘘をつく時に必ずしないといけない事がある。それは、相手が騙しやすいか騙しにくいかを判断することだ。当然だが、オレにとっては前者の方が助かるね。騙し安ければ、オレの嘘を突き通せる確率が高いのだから。後者の場合は、はっきり言って嘘なんて言わない方がいい。嘘を暴かれて論破されて口舌垂れられるなんて最悪だからな。ま、こんな事言っておきながら何だが、オレはそんな判断つけても関係なく嘘をつき続けるんだが。さて、オレは何を言いたいのかって?それはな…
騙されにくい、しかも洞察力もある人間に嘘をついても騙されやせず、むしろ手痛いしっぺ返しを食らうってことだ。
さて、アイツに必殺の右ストレートを食らわせられたオレは、元来た道を引き返してコンビニに向かっている。クソッ、プリンを買えなかったのは面白すぎるマンガのせいだ!俺のせいじゃない!と声高に言いたかったが、それを言うとこの世から退場させられかねなかったから言わなかった。少しぐらい空気を読むさ、それも無視したりするけど。
買えなかったことへの言い訳やだんだん強くなってきてるアイツの筋力の事を考えてるうちに、コンビニについていた。考え事をしていると時は数倍の速さで流れるって言うが、アレは本当の事っぽいな。遅くなるとまた怒られかねん、ちゃっちゃと買って帰るとしよう。
コンビニに入ると店員さんの掛け声が聞こえてきた。
「いらっしゃいませー、てまたアンタなの?」
「客に対してその口調はないだろ」
「立ち読みだけして帰る奴のことを客とは呼ばないわね」
たく、いつも俺に対しては酷いこと言うなこの店員。ちゃんと接客をしろよ接客を。
「私は、何も買っていかないやつを客とは思わないわよ」
「安心しろ、今回はプリンを買いに来た」
「あら、そうなの。彼女のお使いかしら?」
「オレが好きなのはメロンパンだから、必然的にそうなるな」
そもそも、オレの周りにプリンが好きなやつはアイツしかいないしな。
「ん、けどじゃあさっきは何しに来たの?立ち読みだけってのはめずらしいわね」
「偶然見たいマンガがあったんだ、それがここに入ってただけさ」
この店員にそこまで言わなくても良いだろう、普通に恥ずかしいし。ここが嘘つきの腕の見せどころってね♪
「もしかして、さっきもプリン買いに来たけど忘れただけじゃ……」
「いやいや、そんな訳ないだろ。それじゃオレは本来の目的を忘れて立ち読みだけして帰ったマヌケだと?」
まずいな、大分気づかれてるだと!ここは何とか騙し通すしかないな。
「なんでオレがだんごどっこいしょの坊主みたいな事をしなきゃいけないんだ?」
「だって彼女がそう言ってたもの」
「バレてるのかよ!」
オレは渾身のツッコミを入れた。ここまで声を出したのは久しぶりだ。
「アナタの弁明が面白くて黙ってたけどね。あの坊さんは情状酌量の余地はあるけど、アナタの場合はマンガ読んでただけだから、そりゃ怒られるわよ」
しかも家でのこと粗方聞いてるのかよ、今までの俺無駄なことやっただけかよ。
「何考えてるかはだいたい読めてるけど、彼女と私が知り合いって時点で読めそうなものじゃない?彼女の性格から考えて」
「まぁあの裏表がないことに関しては人一倍なアイツならな…」
「全部話しても不思議ではないでしょう?」
「まぁな、今更驚かないさ」
殴られたことを話されてないならそれでいい、あれに関しては誰にも知られたくない。
さて、店員さんと話すのも悪くは無いがまた怒られるのは御免だ。買い物を済ませるとしようか。
「それじゃ店員さん、プリン一つね」
「324円になります」
ちょうど持ってるな。
「はいよ」
「またのご来店、お待ちしております」