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翌日から、お父さんはずっと家にいるようになった。でも、私にも若葉にも、それが何故か、は言わなかった。
「お父さん、会社行かなくていいの?」
若葉の問いにも、お父さんは
「ちょっとながめの休みをもらったんだよ」といって、青い顔で笑った。
お母さんは、こんな休みをもらえるのだから、家族旅行にでも行きましょうか、とひきつった笑みで言った。
私と若葉は、それ以上何も聞けなくなった。
でも、私は、もうお父さんが社長じゃないことを知っている。誰のせいで、そうなったかもしっている。
夕食が終わって、私はジャックと一緒に自分の部屋で作戦会議をしていた。どうする?どうすれば、加藤専務からお父さんの会社を取り戻せる?ぼそぼそと話をしていると、私の部屋の扉がたたかれた。
「だれ?」
「お姉ちゃん、僕だよ」
若葉だった。扉を開けて入ってきた若葉は、「お姉ちゃん、何か知ってるでしょ」と言った。
「それは・・・」
そこから先は、涙をこらえることができなかった。
私は泣きながら、昨日みたすべてを若葉に打ち明けた。
若葉は、あまり感情を表に出さないけど、それでも目を見開いて、私の話を聞いていた。まるで若葉の方が年上みたいだ。
「お姉ちゃん」
若葉が、ぐっと拳を握りしめながら言った。
「取り戻そう。お父さんの会社、取り戻そう。とられた物は、取り返すしかないんだ。」
「でも、どうやって?」
私が聞くと、若葉は黙った。会社の取り戻しかたは、学校では教えてくれない。自分たちで考えるしかない。
「それは・・・警察にいうとか・・・」
「そんなの、お母さんたちがもうしてるよ・・・」
答えが見つからないまま、若葉は、もう寝る。と言って部屋に帰っていった。
胸が、熱い。いっぱい若葉と議論したから、部屋の温度があがってしまったんだ。
服をパジャマに着替えようとして、私は・・・お母さんの作ってくれた隠しポケットの中の、卵を思い出した。卵が、びっくりするほど暖かくなってる。でも、どうやっても割れなかった。
考えろ!ジャックが言う。
卵を使って、取り戻す?そんなことしても、翌日には戻ってしまう。カラスの言葉を、一生懸命私は思い出した。
こころ。そうだ、こころだ。心を動かして手に入れた物は、なくならない。
こころを動かして、とにかくだれかの心を動かして、会社を取り戻すんだ!




