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昨日のカレーは美味しかったなあ。なんてことを考えながら、私はジャックと一緒に下校中だった。今日の宿題はわからないところが多いから、若葉に教えてもらおう。
「そうだジャック!高橋さんが新しいおもちゃの試作品があるよって言ってた!行こうよ!」
ジャックの、ゴー!という合図とともに、私は駆けだした。家から、公園を挟んで反対側にある、お父さんが経営する小さな、三階建ての玩具会社双葉へ。
玩具会社も、他の会社の人に新開発の玩具の内容を知られちゃいけないから、入口には認証キーがついている。カードキーがないとあけられない。
私は当然そんな物は持っていないので、公園の、会社横の木を登って三階まで行く。その窓は、私と若葉をとてもかわいがってくれる社員の高橋さんの席が近くて、いつも窓を開けてくれる。
するすると木を登り、中をよく見ても、社員さんはひとっこひとり居なかった。珍しいこともある。窓に手をかけると、鍵はかかっていなかった。
窓から会社の中に入り、お父さんのいるであろう社長室を目指した。
青葉、何か聞こえる!ジャックの言葉に、私は耳をそばだてた。
「加藤専務、どういうことですか?社長を、社長職から追いやるって・・・」
高橋さんの声だ。それに返すのは、私の嫌いな専務、加藤だ。
「どうもこうもないよ。山口社長は経営というものをわかっていない!お金を稼がなければいけないのに、未だに夢を売るだの言っている!」
「子供に夢を見せるのは、玩具会社の義務だ!」
お父さんの、聞いたことないくらい怒った声が聞こえる。加藤はそれに怯まなかった。
「この会社は伸びる!社長が夢だのなんだの言わなければ、もっと売り上げが上がる!そう考えたのは、そこの高橋と、山口社長以外の全員だ。私たちは社長を、解任させる!」
「そんな・・・加藤専務、ぼくは・・・」
「高橋君、君も、こちらにつくなら今まで通りの待遇を約束しよう。でも、そうでなければ・・・社長と一緒に、路頭に迷うがいい。」
「ぼくは・・・」
そこから先は聞こえなかった。聞きたくなかった。私はたぶん青い顔をしながら荷物をまとめ、窓からまた木をつたって下へ降りた。
頭が真っ白になりながら、いつもなら五分で帰れる道のりを、30分かけて家に帰った。
誰かと電話をしているお母さんは、もう幸せそうな顔をしていなかった。




