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僕は玩具が嫌いだ。なんで玩具会社の息子になんて生まれてしまったんだろう。僕は世界一不幸だ。
僕はお姉ちゃんが嫌いだ。お姉ちゃんは青葉と言う。僕の名前は若葉。わかめとか言われてとても腹が立つ。お姉ちゃんが嫌いなわけは、お姉ちゃんが玩具と仲がいいからだ。
もう小学校の5年生になるのに、まだジャックと名付けた汚いぬいぐるみをいつも離さない。僕はそんなものもう卒業した。ちなみに僕は小学校の3年生だ。僕の方が大人だ。
お父さんとお母さんは、お姉ちゃんの方が可愛いのかもしれない。だって玩具会社の社長の息子が玩具が嫌いなんていえない。僕は大人だから、家族以外の前では、玩具が好きな振りをする。
お姉ちゃんはぬいぐるみとしゃべれるんだって。そんなの空想だ。ばかばかしい。そんなこと考えてる時間があったら、明日の宿題をしていたほうがましだ。
僕は食卓の前に座りながら、まだ帰ってこないお姉ちゃんにいらいらしていた。今日は僕の大好きなカレーなのに。家族みんなそろわないと食べられない。さっきお母さんが公園までお姉ちゃんを迎えに行った。
「ただいまー!」
ノーテンキですって顔に書いたような表情で、お姉ちゃんが帰ってきた。汚いぬいぐるみを背中にくくりつけている。アホだ。
「ねえ若葉、きょう私カラスと喋ったんだよ!雛を助けたらカラスが喋ってくれたの!」
お姉ちゃんは頭がおかしい。カラスはカーカーしか言わない。
「そうなんだ。すごいね。僕は今日テストで100点だったよ」
僕は大人だから、お姉ちゃんの話は聞かないことにしている。そして話を変える。
「おっ!若葉すごいぞ!」
お父さんが僕のあたまをわしわしと撫でた。この撫でられかたは嫌いだけど、お父さんは唯一僕の理解者だ。
「テストで100点なんか、とったことないよ!若葉すごいね!」
お姉ちゃんも勉強すればとれるよ。と言いそうになったけど言わなかった。僕は大人だから。でも、「お姉ちゃんも勉強すれば」までは言ってしまった。
「若葉に勉強教わろうかな?代わりに木登りの仕方教えてあげる!」
「いらない」
思わず即答してしまった。大人げない。でもお姉ちゃんは気にしてないみたいだった。
「さあさあみんな揃ったことだし、いただきましょう」
お母さんがお姉ちゃんに手を洗わせて、ぬいぐるみもおろさせて、テーブルについた。
「いただきます」
家族みんなで言って、頭を下げる。これは恒例の行事。これをしないとご飯が食べれないからする。
頭を下げたことでずれた度のきつい眼鏡を、僕は服の裾で無言で拭いた。こんな眼鏡をしていたら、木登りなんてできる訳ないんだ。




