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ターゲットが近づいてきた。真新しいブランドバッグに高いヒール。顔には色の濃いサングラスをしている。ブランド趣味の、加藤の妻。
横には荷物をたくさん抱えた加藤が歩いている。
今、私たちは何もかもを取り戻すために戦っている。大人は大人のやり方で、そして、私は私のやり方で。
私はターゲットを見つめて、自慢の長い髪を後ろで一つにくくった。片手には、私の相棒。テディベアのジャックも一緒だ。足下には、道路にも関わらず玩具が散乱している。
使い古したデニムのパンツに、タンクトップ姿の私は、ポケットから虹色に輝く卵を取り出して、それを割った。
「お姉ちゃん!?」
若葉がびっくりした声を出す。卵は最後の手段だったけど、もう、これしか残されていない。
「お願い、卵さん。おもちゃを、動けるようにして!!」
卵が割れて、中から虹色の光が迸りわたしと若葉とおもちゃを包んだ。
「やっと自由に動けるぜ!」
ジャックが、私の背中から飛び降りて隣に立った。ロボも「よっこいしょ」といいながら立ち上がり、若葉の横に立った。
加藤とその妻は、あまりのことに言葉を失っていた。
二人に踏まれたおもちゃたちが、怒りにまかせて奔流のように二人に飛びかかる。
でも所詮はおもちゃ。何回も振り払われ、でもさすがはおもちゃ。何回も飛びかかる。
私も長い髪をなびかせ、加藤にタックルした。ジャックは妻の足を引っ張って、動けないようにした。
「なんだ、なんだ、なんなんだ!?」
「おもちゃが動くなんて、こんなおもちゃ開発したのは誰よ!?」
二人は叫びながら、それでも着々とプレゼン会場に進んでいく。
そのとき、私の携帯にメールが届いた。
ーお父さんの社員証を、会社から取ってきてくれ!社員かどうか、疑われてるんだ!
私は頭が真っ白になった。足止めでいっぱいいっぱいなのに、どうやって!?
私が考えるより先に、ジャックが叫んだ。
「若葉!有限会社双葉に行って、社員カードを取ってこい!ロボと一緒に!」
ジャックが若葉に叫び、若葉は頷いて、ロボと連れだって走っていった。
私は何回目かの、加藤へのタックルを決めた。




