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カラスの魔法  作者: 小川春佳
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 ついに、その日はやってきた。プレゼン開始は13時。お父さんは久しぶりのスーツを着て、早めに家を出た。

 プレゼンの場所は、大きな会社の会議室だと、お父さんは言っていた。お父さんは、私に会社の場所を書いた地図をくれた。

「もしもの時には、頼るかもしれないからね」

 お父さんはぎこちないウインクをした。そして、私に携帯電話を渡してくれた。

 お父さんが出て行ってしばらくして、私と若葉も家を出た。お母さんは「あぶないことはしちゃだめよ」と言ったけど、止めはしなかった。

 私はジャックを背中に背負い、若葉はロボを抱いた。若葉のリュックと私の肩掛け鞄の中には、おもちゃがいっぱい入っていた。

 それは小さな人形たちで、私と若葉はおもちゃを道路いっぱいに広げてじゃまする体勢をとった。

 さすがの加藤でも、おもちゃを踏むのには抵抗があるはず!

 でも加藤は、「なんだこれ?」といいながら蹴散らし歩いてくる。

 私と若葉の作戦は失敗した。どうしよう、なんて考えてる暇はない。




 プレゼンの開始は13時から。加藤には14時からと伝えてある。1時間の間に山口社長が話をまとめて、ワンダーくんはなかったことにする。契約を持っていけば、社員だって加藤より社長の方につくはず。僕と山口社長の作戦はそうだった。

僕の仕事は会社にいること。加藤には後から遅れてやってきて、社長!緊急の用事が・・・とか言ってろくに説明のできない加藤を双葉に帰し、代わりにワンダー君プロジェクトの説明をすること。と加藤に言われた。仕事なんて何一つしないくせに、忙しい振りは得意な奴だ。

「高橋さん、そろそろ行かなくて大丈夫なんですか?」

 鎌田さんが12:30を回ろうとしている時計を見ながら言った。

 問題ない。すべては山口社長がうまくプレゼンしてくれる。僕は、山口社長の分の社員カードをもって・・・って、何故此処に?

 カードは、青葉ちゃんに渡した手紙に・・・入れ忘れたんだ。僕としたことが。届けなきゃいけない。山口社長に。

 けれど、僕は加藤から連絡があってからしか動いてはいけない。プロジェクトリーダーが遅れて登場し、加藤のできない説明をするために、呼びつけられなきゃいけない。

 どうしたらいい。どうしたら、カードを山口社長に渡せる?

 僕にはカードを手に自分の窓際のデスクに戻り、あの窓から青葉ちゃんが姿を見せるのをただ待つことしかできなかった。


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