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私と若葉は息を切らせて、家にたどり着いた。
「あらあら二人とも汗だくね、お風呂の用意しなくちゃ」
お母さんがキッチンから玄関に来て、私たちを見てそう言った。
「お母さん!お父さんは出かけた!?」
「お父さんなら書斎よ、その前に二人とも手を洗ってね」
「後で洗う!」
私は手紙を持って、階段を一段とばしであがった。ノックする前に、お父さんの書斎の扉が開いた。足音でばれたんだと思う。
「おかえり。どうしたんだい、二人とも、そんな慌てて・・・」
私はお父さんに、高橋さんからの手紙を差し出した。
「高橋さんは敵じゃなかったの!お父さんに、手紙!窓の外に貼ってあった!」
お父さんの目が優しく笑う。お父さんは最初から、高橋さんのことを疑っていなかったんだ。
手紙を手渡すと、お父さんはそれを読んで、ぐっと目つきを鋭くした。
「青葉、若葉。お父さんに、最後のチャンスがきたみたいだ。お父さんは、社員の振りをして、プレゼンにでるよ。」
手紙には、来週の日付が書かれた日程と、その日に加藤が旅行から帰ってくるということが書かれていた。
「さあ、早速今から資料づくりだ!二人とも、手を洗っておいで。お母さんには、今日はお父さんの晩ご飯はいらないと言っておいておくれ。」
「わかった!いこう、若葉!」
私たちは登ってくるときと同じくらいの騒々しさで階段を降りた。お母さんに事情を説明すると、お母さんはにっこりとほほえんで、「その日はカツ丼にしなきゃね」と言った。
「ご飯ができるまで、若葉と作戦会議してくる!」
「お父さんに頼まれたの?」
「頼まれなくても、僕たちやりたいんだ。何か。」
お母さんは止めなかった。後でジュースを青葉の部屋に持って行くわね、といってキッチンに行ってしまった。私たちは連れだって私の部屋に入り、ベッドに腰を下ろした。
「若葉、何かいい考えある?」
若葉は眼鏡を外し、服の裾で拭きながら何か考えていた。
「僕たちにできるのは、加藤の足止めだと思うよ」
やってやるぜ!とジャックが言った。
「夢の卵は使わないってこと?」
「最後の手段に置いておくのがいいと思う。さっき見せてもらった手紙だと、プレゼンの場所は会社じゃなかったよ。どこか部屋を借りるんだと思う。そこに加藤が来てプレゼンするなら、それをじゃましなきゃ。」
「どうやって?」
若葉は黙り込んでしまった。どうやれば、足止めできるか、全くわからない。飛行機を止める?電車を止める?どうやって?わからない。
とおせんぼすればいいんじゃないですかい?ロボが言った。確かに、それしかない。
「僕たち二人で、とおせんぼする。それしかないよ。」
ノックの音がして、ジュースを持ったお母さんが部屋に入ってきた。
「さあ、作戦会議はそれくらいにして、宿題やっちゃいなさい」
「はーい」
若葉と一緒に宿題をして、ご飯を食べて、お風呂に入って、その日は眠ってしまった。




