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異世界令嬢はついに動き出すようです。

割と遅くなってしまいました。申し訳ありません。

放課後の定例会の後、空は見事な曇天へと変わっていた。

雲は雨が降る時特有の鈍い灰色になっており、強い風がまるでこれから来る雨の強さを予告しているようだ。


「良い天気ですわ」


『私』から『ワタクシ』へとコインを裏返したカルミアは学園の裏庭から、旧サロンへと足を早めた。


『旧サロン』白と空色を貴重とした爽やかな印象の建物だが、教師ですら滅多に近寄らない落ちこぼれの巣。

中からは、品のない笑い声が絶えず、この学園唯一にして最大の無放地帯………とっても面白そうな場所ですわ。


そう独りごちたカルミアは、少し制服を整えてから騒ぎ声の止まない旧サロンの扉を叩いた。


旧サロンの中は、ノックの音で一瞬静まり返ったものの再び騒ぎ声と共に、お前行けとか誰だよといった声が聞こえてくる。

誰がとかどうでもいいのですけれど、早くしてくださらないかしら?


数秒の後、開いた扉からは落ちこぼれが……と言ってもここにいる全員が落ちこぼれですし、そうですわね……『落ちこぼれその1』とでもさせて頂きましょうか、が出てきた。


「んだよ、テメェは?」

「初めてお目にかかります、ワタクシ『カルミア=ヴァン=ミェール』と申しますわ。ここの責任者に会わせて下さるかしら?」

「あ?」

「とりあえず中に入れて下さる?」

「は?お前なんて入れる訳……あ、おい何勝手に入ってんだよ!」


落ちこぼれその1を押しのけて旧サロンへと足を踏み入れると、旧サロンの中は酷いことになっていた。

打ち壊されている机やら椅子がそこらじゅうに散らばり、炎魔法の試し打ちでもしたのか壁も焦げている場所が見受けられる。

これは改修費がいいお値段しそうですわ……まぁそちらは『私』の方の仕事ですから


旧サロンに(たむろ)する30人程の落ちこぼれ達は、こちらの様子を見ながらヘラヘラ笑いつつ瓶を傾けている。


「あれウチの副会長じゃね?」

「マジで?何の用だよ」

「おいポー、舐められてんじゃねーぞ!」

「す、すんません先輩!何無視ってくれてんだこのアマ!!」


ポーと呼ばれた落ちこぼれその1に胸ぐらを掴み上げられる。

一応この方も伯爵以上の爵位を継ぐはずの方なのですけれど、言動を見る限り本当に小物ですわね。


「そんな言葉遣いをしたら、御両親が悲しまれますわよ?」

「二人共俺みたいな出来損ないの事なんてもう気にかけちゃいねぇよ!それよりテメェ……さっきからゴチャゴチャとうる…」


言いかけた言葉を、飲み込む落ちこぼれその1。

それもそのはず、カルミアの手のひらには、魔法を発動する準備が整った事を表す青い魔法陣が浮かび上がっていた。


「お、おい……校内での無断魔法使用は厳禁だろ?ふ、副会長が破っていいのかよ?」

「ふふふ、面白い事をおっしゃいますのね……試してみましょうか?」


カルミアの作り出した青い魔法陣が一際強く光ると、一瞬の間を置いて落ちこぼれその1が床に倒れ、暴れだした。


「痛てぇ!!痛てぇよぉおお!!体が灼ける!!死ぬ!!!死んじまう!!!!あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"!!!!!!」


落ちこぼれその1の指先や体の様々な箇所が、斑点を描くように赤黒く染まっていく、典型的な内出血の症状だ。のたうち回る落ちこぼれに、カルミアは精一杯の優しさを込めて声を掛けた。


「まぁお可哀想。でもご安心ください、死ぬ程痛いですが死にはしませんもの」


しばらくして、内出血が収まった落ちこぼれは、痛みの余韻で立ち上がる気力もなく、うつ伏せになって荒い息を吐くだけになっていた。


先程までへらへらと笑いながら見ていた他の落ちこぼれ達も、一言も発せずただただカルミアを見つめるだけだ。


カルミアは1歩前に出ると、倒れている落ちこぼれその1の顔を踏み付け、耳元へと顔を近づけると背筋の凍りつくような声で囁いた


「ワタクシが会わせなさいと言ったのだから、おとなしく道を開けるのが道理では無くて?」


普段なら、踏みつけられている落ちこぼれその1にしか聞こえないような小さな声だったのだろうが、今カルミアを『恐怖』という存在そのものとして捉えている旧サロンの落ちこぼれ達を捕えるには十分な大きさだった。

全員が、まるで生ける銅像のように凍りつく。


落ちこぼれその1を踏みつけたまま、そんな彼らに向かってにっこりと微笑んだ。


「まだ物分りの悪い御仁はいらっしゃいますかしら?」


イカれてる……誰かがそう呟いた。

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