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メグミのぼうけん  作者: すとろべる
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メグミのひみつ

メグミはお父さんから金のカギを受け取ると、おなかにつけた不思議なポケットの中に大事そうにしまいました。


「これでもう、忘れ物はないよね!…お父さん、行ってきます!」

 

「ちょっと待て!メグミ!!」


「え?僕、まだ何か忘れ物してる?」


「…いや、忘れ物ではない。メグミ…わしは、お前に(あやま)らなければならないことがあるんじゃ…。」


「僕に謝りたいことって?…ああ!戸棚(とだな)に閉まっておいた僕のおやつのハチミツドーナツをこっそり食べたこと?」


「そのことではない!」


「お父さん、食べたんだ…僕のハチミツドーナツを…!!」


メグミは自家製(じかせい)のハチミツで作ったハチミツドーナツが大好きでした。


「そんなことより、重大(じゅうだい)なことじゃ!!」

お父さんは、ハチミツドーナツのことをスルーして


「そんなことよりだってー!?…僕がこの世界で、いや!宇宙(うちゅう)で一番好きな食べ物であるハチミツドーナツを(ぬす)み食いしたことより重大(じゅだい)(つみ)なんてあるわけないでしょう!!」


「落ち着け、メグミ!ドーナツのことは、すまなかったな、許してくれ…。」


「…もう、いいよ。じゃあ、僕もう行くからね!もうひとつの謝りたいことは、家に帰って来てから聞いてあげるから…!」


メグミは、お城までの長い道のり(歩いて丸一日)を考えたら、一分一秒でも早く家を出なけらばいけなかた(早く冬を終わらせて春を訪れさせないと、家にある残り少ない薪がなくなって、お父さんが凍え死んでしまう)ので(あせ)っていました。


「待て、メグミ!」


ベッドに横たわっていたお父さんが、いきなり立ち上がり、家のドアを開けて、外へ出ようとするメグミを後ろから()きしめました。


「うわぁ!?お父さん、どうしたの?」


「わしは、もう、生きてお前に会えんかもしれないから…!最後に抱きしめさせておくれ…!」


「もう抱きしめてるじゃん…!お父さん、大丈夫だよ。ただのカゼでしょう?僕がお城へ行って、万能薬で冬の王女様のご病気を治して、王女様が塔から出ることができれば凍えるような寒い冬が終わって、あったかぁ~い春がくれば、きっとお父さんのカゼも治るよ!これが今生(こんじょう)の別れになったりしないよ…。」


「わしは、もう老いぼれじゃ…。お前が帰って来る前に…春が訪れる前にきっと…死んでしまう!あぁ…メグミ!聞いておくれ…!わしの最期(さいご)の頼みじゃ…。お前に謝らなければ、死んでも死にきれん…!」


お父さんは、メグミの体をはなし、両肩(りょうかた)をつかんで正面(しょうめん)を向かせました。


「メグミ、わしは…わしは、お前の本当の父親(ちちおや)じゃないのじゃ…!!」


「ええっ…!?それ、どういうことー!?」


「…13年前の春の夜に、まだ赤ん(ぼう)だったお前をわしが森の中で(ひろ)ったのじゃ!」


「森の中で拾った!?」


「ああ、そうじゃ…。13年前のあの夜に…大きな満月(まんげつ)の夜に…。わしが家で寝ていたら、突然、森の方からなにかの泣き声がしてな、不思議に思って家の外へ出て森の中を泣き声がする方へ向かうと…大きな木の下に、お空のお月様のようにまんまるのそれはそれは可愛い顔をした赤ん坊がおったのじゃ…!」


「それが…僕?」


「そうじゃ…。」


「じゃあ…僕の本当の父親は?」


「わからん…。お前は、素っ裸で木の下におったのでのう…。身元(みもと)がわかるようなものは何もなかったのじゃ。」


「僕の名前は?メグミって名前は、お父さんがつけてくれたの?」


「『メグミ』という名前は、お前がわしと出会ってから初めて言った言葉が『メグミ』だったのじゃ…。きっと、お前の本当の両親(りょうしん)がお前をそう呼んでいたんだと思って…それで、『メグミ』と名付けたのじゃ。」


「僕…本当の両親に()てられたのかな…?僕って、おっちょこちょいで、いつもドジばっかりやるから…!」


「違うぞメグミ!きっと…お前の本当の両親は何かやむを得ない事情(じじょう)があったんじゃないかの?お前は、たしかにバカでおっちょこちょいで、運動(うんどう)おんちで、ドジでヘマばかりするが…。」


(僕、自分でもそこまで(わる)く言ってないんだけど…!)とメグミは心の中でツッコミを入れました。


「可愛いわが子をそんな(おろ)かな理由で手放(てばな)す親なんて、ひとりもおらんぞ!それに、お前みたいに、世界一!いや、宇宙一!可愛いメグミを手放すなんて…!わしだってできんかったんじゃーーー!!メグミ、本当にすまんかったぁああああーーーーーー!!」


突然、お父さんが泣き始めました。


「お父さん、なんで泣いてるのー!?」


「メグミ、わしは!わしは!…お前を誰にも渡したくなかったのじゃ…!わしの本当の息子にしたかったのじゃ…!いや、わしはメグミのことを本当の息子のように思ってきたのじゃ…!だから…お前に今日まで真実を打ち明けずにきたのじゃ…。町に迷子の届出(とどけ)をだせば、お前の本当の両親が見つかるかもしれないのに、わしは届出を出さんかったし…町に行くとき、お前をその今着ている全身をおおう大きなマントを着せていたのは、可愛いお前の姿を人々に見せないためじゃ…。もしも町にお前を手放した本当の両親がいて…お前のその可愛い顔をみたら、お前を手放した本当の両親はずぐにお前に気づいて、お前を連れて行ってしまうと思ったからじゃーーーー!うわぁあああ~ん!!メグミ、ごめんよぉおおおおーー!!」


「お父さん、もう泣かないで。森の中でお父さんが僕を見つけて、拾ってくれたから今の僕がいるんだよ。」


「メグミ…!わしのことを…まだお父さんと呼んでくれるのか?」


「うん。僕を今日まで育ててくれたのはお父さんだもん…。赤ちゃんの僕を森に捨てた無責任(むせきにん)な親より、お父さんの方がずっとお父さんだよ!」


「メグミ…。」


「だから、お父さんが死んじゃったら…僕、ひとりぼっちになっちゃうから…。お父さん、僕が帰ってくるまで絶対に死なないでよ!ちゃんと、ベッドで大人しくしているんだよ。」


「メグミ…お前は、わしがいなくなってもひとりじゃないぞ…。もしかしたら、町でお前の本当の家族に出会うかもしれないぞ…。さっきも、言ったように、お前のその可愛い顔を見たら…きっとすぐに、お前だってわかるだろう…。メグミ、町でお前の本当の家族を見つけたら…もう、ここへは戻ってくるな…。」


「いやだよ!たとえ、町に僕の本当の家族がいたとしても…僕は、僕の家へ帰ってくるよ!」


「その時は、もうここはお前の家じゃない…!わしの家じゃ…!お前は、お前の本当の家族と一緒に(しあわ)せに()らすのじゃ…!」


「いやだよ!絶対、帰って来るよ!僕の本当の家族と一緒に…本当の家族に本当の家族よりも、僕のことを大事に育ててくれたお父さんを見せびらかしたいもん!!」


「メグミ…!もう、いいんじゃ…!無理をするな…わしのことは忘れてくれ…!お前を本当の家族と再会(さいかい)する機会(きかい)を奪ったわしの罪は重いのじゃ…!!わしはお前に許されないことをしてしもうたんじゃぁあああーーーーうわぁああ~~~ん!!」


「お父さん、もう自分を責めないでよー。僕がこの世で一番許せないことに比べたら、お父さんが僕を本当の家族と再会させる機会を与えなかったことなんて軽いよ!」


「お前がこの世で一番許せないことって…?」


「僕のハチミツドーナツを勝手に食べられることだよ!!お父さん、僕のハチミツドーナツを食べた罪は、とぉーーーーーっても重いよ!!…罰として、僕が冬を終わらせて春を訪れさせて、お父さんのカゼが治って元気になったらハチミツドーナツを山ほど作って、一緒に食べよう!!」


「だめじゃ!!ハチミツドーナツはカロリーが高いし、虫歯(むしば)になりやすいから、1日2個以上食べちゃダメじゃ!!」


「大丈夫だよ!町で、僕の本当の家族を見つけられたら、一緒に連れてくるから!僕の本当の家族は、大家族かもしれないよー?」


「メグミ…。」


「家族が見つからなかったら…町で友達たくさん作って、連れてくるよ!あと、森の動物たちとか、全部で100人くらい!」


メグミは、家の庭より外へひとりで出歩くことができなかったので、学校にも行ってませんし、友達は森にいるウサギと小鳥くらいでした。


「だから、お父さん。僕がここに帰ってくる頃には、きっと…長い冬が終わって、あたたかい春が訪れて、お父さんも元気になって、みんなでハチミツドーナツを食べて春のお(いわ)いをしよう!」


「メグミ…!」


「お父さん、行ってきます!」


メグミは、元気よくお父さんにあいさつをすると、家のドアを勢いよく開けて、一面の銀世界へ飛びこんで行きました。




すとろべるです。

ここまでお読みいただきありがとうございます(*^▽^*)

さて。いよいよ、メグミくんはお城を目指すぼうけんに旅立ちました!

これから、メグミくんには、さまざまな困難が待ち受けています!

メグミくんは、無事に森をぬけてお城へ行き、冬を終わらせて春を訪れさせることができるのでしょうか!?

そして、メグミくんは本当の家族と再会できるのでしょうか!?


☆次回予告☆第6話『メグミ フユオオカミにさらわれる』


メグミくん、しょっぱなから、大ピンチです(笑)!!

それでは、次回もお楽しみに♪(*´ω`*)

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