メグミ いえをでる
メグミは、お城へ行くことを決心しました。
「ダメじゃ、メグミ…!お前は、まだ子どもじゃろ。お前ひとりで、この森をこえてお城へ行くなんて無理じゃ!!」
お父さんはメグミがひとりでお城へ行くことに大反対のようです。
お父さんが反対するのも無理はありません、だってメグミはひとりで家の庭より外へ出たことは一度もないからです。
というか、お父さんがメグミをひとりだけで家の庭からでることを禁止してるからです。
「お父さん、僕はもう14歳だよ!まだ、大人じゃないけど…小さな子どもでもないよ!!ひとりでだって、森をこえてお城へ行けるよ!!」
「ダメじゃ!いつも、わしが言っとるじゃろ、森の中には恐ろしい動物がたくさんいるんじゃ…!西の山には、食いしん坊で、荒くれもののクマがおるのはお前も知っとるじゃろ?やつは数年前に、うちで育てているミツバチたちが集めたハチミツを盗むためにやってきて庭で大暴れしたじゃろ!わしがクマが嫌う薬草を燻して追い払わなかったら、この家は、めちゃめちゃに破壊されていたじゃろう!もし、お前がある日、森の中でひとりでやつに出会ったらどうなる?やつの鋭い爪の生えた大きな掌で、ぶたれたら!お前のかわいい顔は一瞬でズタズタになってしまうじゃろ…!!」
「クマは、今の時期は山の奥のねぐらにこもって冬眠してるよ!」
「むむぅ~!そうじゃったな…。じゃあ!東の谷に住むフユオオカミはどうじゃ?やつらは、冬眠せんぞ!!やつらは、普通のオオカミの何倍も大きな体をしているんじゃぞ!お前みたいなチビはフユオオカミの大きな口で一飲みで食べられてしまうぞ!!」
「たしかに、フユオオカミは冬眠しないけど…フユオオカミは大人しい動物で人間を襲わないって、お父さん言ってたじゃん!」
「あぁ、たしかに昔のフユオオカミは人間を襲わなかったが…。最近は、人間を襲うようになったのじゃ…!わしがカゼをこじらせる前に、最後に城下町へ薬草を売りに行った時に、情報通の商人に聞いたのじゃ…東の谷に行った狩人が何人もフユオオカミに食い殺されたと!!」
お父さんは、恐ろしさで布団の中でぶるぶるとふるえだしました。
お父さんがこんなに怖がるのはめずしいので、メグミもちょっと怖くなってしまいました…。
けれど、家の薪はあと2、3日分しか残っていないません。
このまま、家で冬が終わるのを待っていたら二人とも凍え死んでしまいます。
「…お父さん、大丈夫だよ。ちょっと、遠回りになるけど、フユオオカミの縄張りの東の谷を通らずにお城まで行けばいいんだよ!僕だって、お父さんと一緒に城下町までの長い道のりを何回も歩いて行ってる間に、すごく足が速くなったんだよ!遠回りするぶん、早く走って行けば丸1日とちょっとでお城まで行けるよ。」
メグミの決心は、にぶることはありませんでした。
お父さんも、メグミの強い決意の固さには敵わないらしく…メグミがお城へひとりで行くことを許すことにしました。
メグミは、森をこえてお城へ行くための準備をはじめました。
お父さんは、メグミに冬の森を冒険する時に気をつけることや、必要な道具
を教えてくれました。
☆以下は、お父さんに教えられてメグミが用意したもの☆
・地図
森の中とお城までの道のりが大まかに書いてある。
・よく切れるナイフ
いろいろな用途に使える。
・お裁縫道具(どんな布でも縫うことができる針と糸)
極寒の冬の森をぬけて行く途中で、防寒着が破れてしまった時などに繕うため。
・100種類の薬草と薬
これは、城下町の人々にあげるためのもの。お父さんがカゼをひいてから城下町に薬草を売りに行っていないため、みんな薬草や薬がなくて困っていると思うから。
・食べ物
ハチミツ(1瓶)
干し肉
干した果物、木の実
☆以上☆
メグミは道具を全て、いつも使っているリュックに入れようとしましたが、荷物が多すぎて入りきりません…。
「お父さん、こんなに持って行けないよー。」
「それなら、この『なんでもの入る不思議なポケット』に入れて持って行くのじゃ!」
「『なんでも入る不思議なポケット』!?」
お父さんは、半月の形をした白い1枚のポケットをメグミにあげました。
不思議なことに、その小さなポケットの中に全ての荷物がすっぽりと入りきってしまいました!
「すごーい!本当に全部はいっちゃったー!しかも、ポケットの重さも大きさも荷物を入れる前とちっとも変わらないよ!」
「すごいじゃろぉ~?すごいじゃろぉ~?中のものを取り出したいときは、取り出したいものを頭に思い浮かべながらポケットに手を入れるだけで取り出すことができるのじゃ!」
お父さんは得意げに言いました。
メグミは、この不思議なポケットを上着のおなかのあたりに縫い付けました。
「よし、荷物はこれで大丈夫だね!あとは、着るものだけだ…。」
メグミは、極寒の冬の森の中で凍え死なないように、動きやすいしっかりとした服を着こみ、最後にいつもお父さんと一緒に城下町へ行くときに着ている大きなマントを身に纏いました。
このマントは、メグミの頭のてっぺんから足の先まですっぽりとおおうほどの大きく、とても丈夫な布でできていて、冬の冷たい北風を通しません。
「これで、準備万端だね!それじゃあ、お父さん、行ってきます!」
「待て!メグミ!!お前、一番大事なものをわすれとるじゃろーーー!?」
「えっ?」
「金のカギじゃ!!これがなけりゃ、お城に行っても無意味じゃーーーーー!!」
「ああっ!いっけない、うっかり忘れてたよー…。てへへ…。」