メグミ けっしんする
「お父さん、このカギは?」
メグミは、暖炉の中から拾ったカギをお父さんに手渡しました。
そのカギは、黄金の色をしていて、太陽の光のようにキラキラと輝いていました。
「わしも初めて見るカギじゃ…。おお…!これは、金でできておるぞ…!金は金でも、これはかなり上等なやつじゃ…きっと、この小さなカギ1本で、豪邸が建てられるぞ!」
「そんなすごい高価なカギがどうして、家にあるの?」
「さぁ?わしにもわからん…。こんな上等な金を持てるのは、大貴族か王族クラスの人間じゃろうなぁ…。ん?…このカギ、なにか小さな文字が彫ってあるぞ!あぁ…だめじゃ、小さすぎて読めん。メグミ、わしの虫メガネを持ってきておくれ。」
メグミは急いで、虫メガネを持ってきて、お父さんに渡しました。
メグミから受け取った虫メガネでお父さんは、黙々(もくもく)とカギに彫られた小さな文字を読み始めました。
「ふむふむ…。おおーーっ!なるほどぉ…。」
「お父さん、なにが書いてあるのー!?早く教えてよ!!」
「おぉ、すまん…。メグミ、このカギはわしらの100年前のご先祖様が、わしらのために残してくれたものみたいじゃ!」
「100年前のご先祖様って、その年の夏の王女様の病気を治した人だよね?」
「そうじゃ!このカギには、わしらのご先祖様からのメッセージが書かれておる。」
カギに彫られた文章は、かなり古くて(なにせ、100年前の人が使っていた言葉ですから)難しい言葉で書かれていたので、お父さんはメグミにもわかりやすいように、簡単な言葉に訳して言いました。
以下、カギに彫られていた文章(メグミのお父さん訳)
『未来を生きるわが子孫へ
この金のカギは、お城の地下にある、私(ご先祖様)が調合したどんな病気でも治す万能薬を収めている金庫のカギである。万能薬は国民全員(100年前当時の人口)にあたえるだけの量がある。
その金庫は、国王様が国一番の職人に作らせたもので、この金庫に収められたものは、永遠に朽ちることはない。金庫は、とても頑丈にできており、たとえゾウ100頭に踏まれても壊れることはない。金庫を開けることができるのは、この唯一無二の金のカギだけだ。
どうしても治せない病におかされたものを救う時だけにこのカギを使って金庫を開けなさい。』
以上
「じゃあ、お城の地下に行けば万能薬があるんだね!」
「そうじゃ!…こうしては、おれん!メグミ、留守を頼むぞ。わしは、お城へ行って、このカギで金庫を開けて万能薬を手に入れ、今年の冬の王女様のご病気を治しに…ゴホッ、ゴホォッ!!」
突然、お父さんが苦しそうに咳ごみながら、その場に崩れるように座りこみました。
お父さんのカゼは、メグミが思っていた以上に症状が重いようです…。
メグミは、お父さんの肩を支えてあげながらベッドへおくりました。
「お父さん、そんな弱った体で、お城へ行くなんて無理だよ。」
メグミたちの家からお城までは、歩いて丸1日以上かかるほど遠く離れているのです。
しかも、外は吹雪が舞っていました。
重いカゼをこじらせた、年寄りのお父さんは、お城へ行きつく前にきっと命をおとしてしまうでしょう…。
「ゴホッ、ゴホッ…でも、このカギをお城に届けなければ…!ゴホォッ、ゴホッ…!冬の王女様のご病気が治らなければ…この、冬はいつまで待っても、終わらないのじゃ…ゴホッゴホッ…!!」
弱々(よわよわ)しくベッドから起き上がろうとするお父さんをメグミは、優しく制止しました。
「お父さん、僕がお城へ行くよ。お城へ行って、この金のカギで万能薬を手に入れて…冬の王女様のご病気を治して…この冬を終わらせて、この国に春を訪れさせるよ!!」