メグミ カギをみつける
メグミは、お父さんから初めて聞いた季節をめぐる王女様達のお話にただただ驚いていました。
そして、あることに気がつきました。
「お父さん、じゃあ、もしかしたら今年の冬の王女様もその病気にかかってしまって塔から出てこれないから、冬が終わらないのかな?」
「そうかもしれんなぁ。」
「お父さん、100年前の夏の王女様は、どうやって病気を治したの?」
突然、お父さんが布団をはらいのけ、ベットから起き上がりました。
「お父さん、寝ていなくて大丈夫なの?」
メグミは心配そうにたずねました。
お父さんは、冬の初めにカゼをこじらせてしまいずっと寝込んでいたのです。
たいしたカゼではなかったのですが、終わらない冬の寒さのせいでお父さんのカゼは、なかなか良くならないのです。
「このくらいのカゼ、大丈夫じゃ、問題ない。それよりメグミ!100年前の夏の王女様の病気を治したのは、わしらのご先祖様なのじゃ!!」
お父さんは、腰に手をあてて肘をはった偉そうな格好で、自慢げに言いました。
「そうなの!?」
「そうじゃ!国のどんな有名な医者でも治せなかったあの難病を、ご先祖様が国王様の命を受けて、1年の半分の月日を費やし、厳選した薬草を調合して、ありとあらゆる病気に効く万能薬を生み出したのじゃ!」
「ありとあらゆる病気に効くなんて、すごーい!ねえ、お父さん、その万能薬ってどうやって作るの?」
メグミは、万能薬が作れれば冬の王女様の病気を治すことができ、冬を終わらせることができると思いました。
「そう簡単に作れるものじゃないのじゃ…。あれは、じつにたくさんの種類の薬草が必要なのじゃ。断崖絶壁や活火山みたいな危険な場所にしか生えていない希少な植物もあるし、それら取りにいくのは命がけじゃ。それに、薬草の種類によって使う分量も違うし、少しでも調合を間違えば…ありとあらゆる生き物の命を奪う恐ろしい毒薬にもなってしまうのじゃ!だから、ご先祖様も完璧に仕上げるために、1年の半分もの月日がかかったのじゃ…。作り方がわかっても、今から作り始めたら1年の半分はかからないと思うが…1年の半分のもう半分くらいの月日が必要じゃな…。」
「1年の半分の半分って、3か月じゃん!あと3か月間もずぅーっと冬なんていやだよー!もう、薪はあと2、3日分しかないんだよ。凍え死んじゃうよぉ…。」
「ふぉっふぉっふぉっ。メグミ安心せい、こんなこともあろうかと、ご先祖様は100年前に作った万能薬をこの家の物置の奥に保管しておいてくれたのじゃ!」
「物置の奥…!」
メグミは、いやな予感がしました…。
「そうじゃ、物置の奥にある古い木箱の中にしまってあるのじゃ。そうじゃな…おお!今、その暖炉の中で燃えている箱みたいな…って!!その箱が万能薬が入ってる箱じゃぁあああああああああああーーーー!!」
なんということでしょう!
メグミが薪の代わりに、物置から持ってきたガラクタの中に万能薬が入った箱があったのです。
暖炉の中の箱は、真っ赤な炎に包まれて黒焦げになっていました…。
メグミは、急いで火箸で箱を暖炉から取り出し、水をかけましたが…箱の中に入っていた万能薬は消し炭になってしまいました…。
「お父さん、ごめんなさい…!どうしよう、あの万能薬がないと王女様の病気を治せないよ…僕のせいで、冬が終わらなくなっちゃう…!!うわぁ~ん!!」
メグミは、自分のせいで冬が終わらなくなってしまったと思い、泣き出してしまいました。
「メグミ、自分を責めることはないのじゃ…。大丈夫じゃ…もしかしたら、王女様が塔から出られないのは他の原因があるかもしれんし…。」
「うぅ…っでも…これ以上、冬が続けばお父さんのカゼが悪化して、死んじゃうかもしれないよ…!お父さんだけでなく、国中の人も動物も植物も…みんな死んじゃうよ!……ん?…お父さん、あれ、なんだろう?」
メグミは、暖炉の中で炎に照らされてキラキラ光っているものを見つけました。
メグミは泣くをやめて、火箸で暖炉の中からキラキラ光るものを取り出しました。
暖炉の中でキラキラ光っていたものは、1本の小さなカギでした。