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メグミのぼうけん  作者: すとろべる
1/7

終わらない冬

ここはお(しろ)から、はるか(とお)(はな)れた(もり)のなか。


森のおく(ふか)く、いちめんの雪景色(ゆきげしき)のなかに、木々に(かこ)まれた小さな一軒(いっけん)(ふる)いお(うち)がありました。





森のなかには、まるで(そら)()かうように、たかく、たかく(えだ)をのばす大きな木も


その木の下で、ひっそりと()えている小さな木々も


天から()りそそぐ、冷たいまっ白な綿(わた)のような雪を全身(ぜんしん)にまとって、見るからに(さむ)そうです。


見てるこっちが、寒くなりますね…。



「ひゃぁー!さむぅーい。つめたぁーい。」

なんて、木々の声が聞こえてきそうです。



でも、木々には口がないので人のようにおしゃべりすることはできません。


木々は、むっつりと(だま)りこんでじぃーっと立っているだけです。


ながく、ながく降りそそぐ綿雪(わたゆき)は、やがて(おも)みをまして木々を枝に重くのしかかると…。



  ぎしぎし…。


  ぎしぎし…。



雪の重みに()えられなくなった枝の(おと)



  ドスンッ!



重くのしかかかった雪のかたまりがバランスを(くず)して、地面(じめん)にくずれ落ちました。



雪のかたまりが落ちたふるえで、木々は枝をぶるぶるとふるわせます。




まるで、木々が寒さに(こご)えてふるえているみたいだなぁ…と、家の(まど)から木々をずっと見つめていたメグミは(おも)いました。



メグミは、今年14(さい)になる男の子です。


ネコの毛のように(やわ)らかい黒髪(くろかみ)に、黒くてまあるい大きな(ひとみ)をした可愛(かわい)い男の子です。


メグミは、この小さなお家に年老(としお)いたお父さんと一緒(いっしょ)()らしていました。


二人は、森の中に生えているいろんな種類(しゅるい)薬草(やくそう)()んで、薬などを作り、それを城下町(じょうかまち)の人々に売ることで生計(せいけい)を立てていました。

 


 

「メグミ、暖炉(だんろ)(まき)をもっと()べておくれ。寒くて、凍えそうじゃ…。」


暖炉の近くにあるベッドの上で、メグミのお父さんは布団(ふとん)にくるまりながら、寒さでぶるぶるとふるえています。


メグミは、急いで薪小屋へ薪を取りに行きました。


「ああ!なんてこった…。どうしよう、薪がもう終わりそうだ!」


冬が(おとず)れる前に、山のように(たくわ)えていた薪が残りわずかになってしまったのです。

 

メグミは家の中にもどると、物置(ものおき)から、()れなくなった(ふく)やボロボロの布切れ、(こわ)れた木製の家具(かぐ)()まなくなった(ふる)(ほん)(かみ)くずなどを(さが)しました。()えやすくて、いらない物を薪の代わりにするためです。


メグミは見つけてきたガラクタを暖炉に入れながらお父さんにたずねました。

「お父さん、今年の冬はいつになったら終わるんだろう?丸1年分は、あった薪がたったひと冬で、残りわずかになるなんて…。こんなの絶対(ぜったい)おかしいよ。」


「あぁ。そうじゃなぁ…冬の王女様(おうじょさま)に何か良くないことでもあったのかのぉ…。」


「冬の王女様って、だれ?」


「おや、まあ!お前にはまだ話しておらんかったか…。メグミ、この国を(おさ)めている国王様(こくおうさま)には4人の娘、すなわち王女様が4人いらっしゃるんじゃ。この4人の王女様たちは、それぞれ春・夏・秋・冬の四季(しき)(つかさど)っておるんじゃ。王女様たちは、決められた期間(きかん)交替(こうたい)でお城にある(とう)に住むことになってな、そうすることでこの国に四季が訪れるのじゃ。今年の冬が終わらないのは、冬の王女様がまだお城の塔にいらっしゃるからじゃろう。四季の流れが(みだ)れるのは、100年前の夏以来(いらい)じゃな…。」


「100年前の夏に何があったの?」


「その年の夏は1年の半分(はんぶん)が夏になってしまったそうじゃ…。」


「1年の半分が夏!?」


「ああ、子どもたちは1年の半分が夏休みになって大喜(おおよろこ)びじゃったんだが、日照(ひで)りがつづいて、川も湖も干上(ひあ)がって魚が死に、深刻(しんこく)な水不足で農作物(のうさくもつ)不作(ふさく)で国中の人々も森の動植物(どうしょくぶつ)達もみんな終わらない夏の暑さと()えに(くる)しんだのじゃ。」


「どうして、その年の夏の王女様はお城の塔から出てこなかったの?」


「夏の王女様は、重い病気(びょうき)(わずら)っていたそうじゃ。その病気は、とても人にうつりやすい病気で、くしゃみひとつで100人の人にうつすことができる病気だったそうじゃ。それで王女様はその病気が(なお)るまでお城の塔から出られなかったのじゃ。」




 




 




 


 


 

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