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召還された異世界は猫耳少女だらけでした  作者: 竜田揚郎
第一章
8/11

第六話 ラグーン遺跡と黒い爆弾

 遺跡の内部は薄暗く、足下には瓦礫が散乱しているようだった。

 このまま歩いて進むのは危険だろう。


「クロ」

「任せて……ご主人様。“たいまつ~”」


 ユウは たいまつを そうびした!

 あたりがあかるく てらされていく。

 こうもりがあらわれた!


「きゃあぁっ!」


 ルナは ユウにだきついた!

 グングニルの ちからが 81あがった!


 いやいや、上がるなよ。

 静まれ! グングニル。

 まだ力を解放すべき時ではない!


「しかし、見事に廃墟だな……いや、遺跡なんだから当たり前か」


 遺跡探索なんて、冒険っぽくていいな。

 漫画とかではありきたりな光景だけど、実際に自分がやってみるとやはりテンションが上がる。

 しばらく中を進んでいくと、大きな石版のある広間にたどり着いた。

 石版の前には、何やら石の台座が置いてある。


「ご主人様、ここで地図が手に入るようになっています」

「おぉ、そういえばそんな事言ってたな」

「はい。少しお待ちください」


 すると、ルナが石版を見ながら何やら知らない言語で唱え始めた。

 この石版に書いてある事を読み上げているのだろうか。

 石版に書いてある文字も、俺にはさっぱり解読出来ない。


 大人しく待っていると、石の台座が淡い青色に輝き、なんと地図らしきものが現れた。


「魔言師が読み上げる事で地図が現れる仕組みになっています。これがあれば、下の階層まで近道を通って行く事が出来るでしょう」


 それはありがたい。だが一つ疑問があった。


「今回の目的は、魔戦器の材料を帝国に採掘されるのを阻止する事らしいけど……具体的にはどうするんだ? 俺、魔戦器の材料がどんなものかも知らないんだけど」


「帝国より先に、魔戦器回収する……おっきくて、長いやつ……」


 おっきくて、長いやつ……

 クロさん、まさかの下ネタですか?


「かつて天界を荒らし回ったという邪竜です」


 下ネタじゃありませんでした。

 汚れた心でごめんなさい。

 って、なんか物騒な単語が……


「……じゃりゅうぅぅ!?」

「ご主人様、しぃ~……」


 クロが人差し指を俺の唇に押し当てて、愛くるしい眼で俺の顔をのぞき込んでくる。

 顔、顔近いです、クロさん。


「帝国兵に、見つかる……」

「わ、悪い……え、邪竜って、いわゆるドラゴンってやつ?」

「はい。魔戦器の材料となるものは大きく分けて二つ……一つは冥晶石という鉱石です。もう一つは、強力な魔物そのものなのです」


 そういえば、タマモも言ってたっけ。魔戦器の材料は伝説の魔獣だとかなんとか……うろ覚えだけど。

 どういう事なんだろう。まさか魔物の体を分解して、武器として再利用する?

 モ○ハンかよ。


「この、冥晶石を加工して作られた水晶玉に、魔獣を封じ込めるのです」


 そういってルナが取り出して見せたのは、黒い水晶玉だった。


「この小さな玉の中に……魔獣を? どうやって?」

「“スモールライ……”」

「ちょっと危ないから黙って、クロえもんっ!」


 著作権に触れそうなクロの発言を寸でのところで止めつつ、黒い水晶玉を受け取ってマジマジと見つめる。


「あらかじめ決められたキーワードを唱えれば、水晶玉の内部に仕込まれた封印術が発動し、魔獣を取り込む事が可能となっています。玉の中は異空間となっているため、大きさ関係なく封じる事が出来るのです。ただし、魔獣が弱っていなければ封印は出来ません。材料に出来るのは、長い年月封印されて力が弱った魔獣だけなのです」


 ふむふむ。ってほとんどモン○ターボールじゃねーか。


「なるほど。魔獣を封じ込めた水晶玉と、冥晶石で作られた武器本体。この二つが組み合わさって、初めて魔戦器になる……ってとこかな?」

「ご明察の通りです。さすがでございますね、ご主人様」


 ふふんっ、賢さ23を舐めるなよっ!

 そして、賢さ54のルナさんに誉められても虚しくなるだけなんですが。


「弱った魔獣が持つ魔力を冥晶石によって増幅し、人が扱いやすい破壊兵器としているのです。タマモ様の結界は、魔力のない攻撃ならばビクともしませんが、魔戦器による魔力攻撃には耐えきれないでしょう」


 それで、“みさいる”は防げても魔戦器はダメなんだな。


「よし、話は分かった。そんじゃ、とりあえず先に……」


《 グ~キュルルルル…… 》


「なっなんだっ!? 魔獣かっ!?」


 俺がオドオド挙動不審になっていると、ルナが恥ずかしそうに両手を組み、顔を真っ赤にしながらモジモジし始めた。


「……今のは、私のお腹の音です」


 ビバお約束。

 俺達は、とりあえず石版の前で昼飯にする事にした。


「おっべんとおっべんとうっれしっいな~……はい、二人とも」


 そう言ってクロが取り出したのは、三つのおにぎりだ。

 そういえば、出発前にクロがせっせと握っていたっけ。


「ふふ、美味しそうですね」


 ルナが目を輝かせている。よほどお腹が空いているのだろう。


「……これ、どれにナニが入ってるんだ?」

「んっと……一つはアトリの肉、一つはサモーンの身、一つはグレイトオークキングの睾丸」


 サモーン……あぁ、確かサーモンみたいな触感の魚か。この間、料理に出てきたな。

 最後ちょっと待ったあぁぁっ!!


「なんだよグレイトオークキングって! なんだよ睾丸って!!」

「若くて強い雄のものほどコラーゲン豊富で、コリコリとした歯ごたえと少し生臭い香りが癖になる……大人のあじわい」

「そんなこと聞いてないから!」

「こ、睾丸というのはその……男性の」

「知ってるから! ルナも無理して説明しなくていいからっ!!」


 じっと三つのおにぎりを見比べる。

 黒い海苔らしきものに包まれたそれらは、いわゆるまん丸おにぎりだが、見事なまでに美しい丸に形造られており、大きさも三つとも完璧に均等に揃えられていた。


「……で、どれが睾丸入りなんだ?」

「わかんない」

「……ですよね……」


 仕方ない、ここは一か八かだ。

 反応を見るに、二人は睾丸にそこまで抵抗を持っていないらしいが、俺は拒絶反応満載だ。


 1/3の確率。大丈夫、自分の運を信じろ。

 タマモの奴、幸運ステも表示させてくれれば良かったのに。出来るかは知らないけど。


「…………」


 落ち着け、感覚を研ぎ澄ませ。

 全神経を集中させて、奴を避けるんだ!


「うおぉぉぉーっ君に決めたっ!!」


 俺は一つのおにぎりを掴み取ると、かぶりついて頬張った。


《 コリッ 》


「……コリコリとした歯ごたえと、少し生臭い香りが癖になる……大人のあじわい ……」

「ご主人様、当たり……おめでとう。これで今夜は精力ぜつりん……」


 ギエェェエエエエエエ--




 * * *




 腹ごしらえを済ませた俺達は、地図を頼りにラグーン遺跡の地下へと潜る事にした。


「ご主人様……やせた?」

「ははっ、気にするな……ちょっとカルチャーショックを受けただけさ」


 確かに食えない味ではなかったが、イメージの問題だ。

 これは、里に帰ったら絶倫になった精力をクロとルナに受け止めて貰わなければ割に合わない。


「……こほん。地下へと通じる近道へ行くには、まずこちらの狭い通路を這って進まなければなりません」


 睾丸を食した後の俺を見てルナが頬を染めながら、壁を構成している石材の一部を押す。

 するとその部分が凹み、その壁に四角い穴が開いた。

 どうやらここが、近道への入り口のようだ。


「先に何があるか分かりませんので、私とクロが先頭を進みます。ご主人様は、私達の後をついてきてくださいませ」

「あぁ、分かった」


 何の気なしにそう返事した俺だったが、この後とんでもない事態に見舞われる事となる。




 * * *




 クロとルナの格好は、それぞれこうだ。

 クロは黒いミニのワンピース姿で、ところどころに白いレースの装飾が編み込まれており、長袖の袖口にはフリフリがついている。

 胸元には赤い紐状の可愛いリボンがアクセントとして結ばれていた。


 ルナのワンピースも丈は短いが、クロと違って肩と胸元が開けており、首元でクロスさせた細い紐を首の後ろで蝶結びにしてとめている。

 白地に青い装飾の色合いが、ルナの蒼目と相まって爽やかな印象を醸し出していた。


 事件は、俺達が秘密の通路を這って進み出した瞬間に起こった。


(ふおぉぉぉっ! ぱ、ぱぱぱぱぱ、ぱんっ……)


 クロもルナも、パン・ツー・○・見えだ。

 尻尾が上を向いているので、必然的にスカートがめくれている。見てくださいと言わんばかりの光景だ。


 もっと凄いものをもう見てるだろって?

 分かってないな。パンチラはまた別物なんだ!

 男のロマンなのだよ!

 神様、あなたに感謝いたします。

 この世に生を授けてくださりありがとうございます。


 ちなみにクロは白、ルナはピンクだ。

 や、ヤバい、グングニルが……

 こんな場所で解放したら!


「……? どうされました、ご主人様?」


 なかなかついてこない俺を心配して、すぐ前を這っていたルナが声をかけてきた。


「い、いや、なんでもない……ちょっと疲れちゃってさ。少しだけ休ませてくれないか」

「だ、大丈夫ですか? かしこまりました、少し休む事にいたしましょう」


 ルナの心配そうな声が心に痛い。

 何故なら俺は嘘をついたからだ。


 そう……本当は、つっかえて進めなくなっただけなのだ。

 何がつっかえたかというと、ナニだ。

 いや、冗談抜きで。


 とにかく元の大きさに戻さなければ。俺は目を閉じ、邪念を払うために心の中で一人山手線ゲームを始めた。


(古今東西、山手線ゲ~ム。お題は……好きなグラビアアイドル~。高梨こずえ、吉田ゆりな、佐野しずか……)


 頭の中にグラビアアイドル達の水着に包まれたフレッシュな肢体が浮かび上がり、グングニルは更に立派に成長しました。

 ってダメじゃん!


 お題を“日本の悪役レスラー”に変え、なんとか収まったものの、少し時間がかかってしまった。


「お待たせ、二人とも。もう大丈夫だから、行こう」

「分かりました、では行きましょう。ご無理はなさらないでくださいね」

「りょ~かい、ご主人様……」


 俺はなるべく下を向いたまま、OPANTUが見えないように細心の注意を払いながら進んだ。

 前を見ていなかったので、途中でルナのOPANTUに頭から突っ込んでしまい、ルナが「ひゃんっ……♡」と淫らな声を発したものだから、またナニがアレして休憩を取らざるを得なくなったのだった。




 * * *




 しばらく進んでいくと、狭い通路は終わり、開けた部屋に出た。部屋の中は薄暗い。

 見ると、下へと続く階段がひっそりと存在していた。


「ここを下っていけば、邪竜を封じた部屋の近くへ出る事が出来ます。長い階段ですので、足を踏み外さないようご注意ください」

「あぁ、分かった。気をつけるよ」

「……ご主人様。普通に降りるより、早く下につける方法がある……」


 クロが突然そんな事を提案してきた。


「ん? どんな方法なんだ?」

「行くよ……“すべりだい”」

「えっ、ちょっ!?」

「きゃあぁ!」


 クロが魔言の力で階段を滑り台に変え、俺達は一気に下まで滑り降りていった。


「く、クロ! 止まる時はどうするんだ!?」

「その時は、魔言を解除する……」

「クロ、突然はビックリするのでやめてください……」


 ルナが抗議すると、クロはポリポリと頭をかいた。


 少しの間、身を任せて滑っていると、底が見えてきた。


「く、クロっ!」

「りょ~かい……“かいじょ”」

「おわっ!」

「ひゃあぁっ」


 クロが魔言を解除すると、滑り台は階段に戻り、俺達は地面に放り出された。


「いたた……」

「……う~ん……」


 あれ、手に柔らかいものが。

 この豊かな揉み心地……この大きさは、ルナに違いない。


「ひあぁぁぁっ!」

「えっ、あっ、ごめんっ」


 思い切り胸を揉みしだいてしまった。

 ルナが慌てて起き上がり、「そんな、こんな場所で……でも、ご主人様が望まれるなら……」と一人で赤面している。


 ここでするのもやぶさかではないが、今は他にやる事があるだろう。

 残念だが、帰ってからじっくり揉ませてもらう事にする。


「ご主人様、何か声が聴こえる……この扉の向こう……」

「えっ」


 全然聴こえなかった。

 やはり猫耳なだけあって、聴覚は人間よりも優れているらしい。


「この鍵穴から向こうの部屋が見える……」


 クロに導かれるまま壁に近づくと、どうやら扉があり、そこに鍵穴が空いているようだった。

 こちらの部屋はうす暗いので、向こうの部屋の灯りが鍵穴から射し込んでいる。

 俺は、おそるおそる鍵穴の中を覗き見た。


 見ると、帝国兵と思われる数名の兵士と、その中で一際階級の高そうな女仕官が一人いた。

 その女仕官は腰まで伸びる銀色の長い髪を持ち、鋭い猫目の中には金色の瞳が浮かんでいる。

 腰には剣を携えており、線は細いが雰囲気からして強そうだ。

 もちろん、頭には猫耳も生えていた。

 クールな印象だが、なかなかの美少女だった。


 銀髪の女と兵士達が、何やら話しているようだ。

 俺の耳では何か言っているな、くらいしか分からず、内容まではさっぱり分からない。


「何を話してるか、クロが通訳する……」


 そう言って、クロが俺の耳元に口を近づけてきた。


『おい、まだ扉は開かないのか。この向こうに魔戦器の材料が眠っているのだぞ』

『ははっ、申し訳ありませんシオン様。どうやら封印が施されているようでして』

『ふん、そんなもの関係ない。魔壁貫通砲を使うぞ。弾数は少なく貴重だが、この年季の入った封印ならば穴を空けられるだろう』


「……って言ってる」

「えぇ……マズいんじゃね?」

「まさかもう封印の手前まで来ていたとは……」


 さてどうするか。

 こうしている間にも、魔壁貫通弾とやらの準備が整ってしまいそうだ。

 考えている時間はあまりない。


「“ますた~き~”」


 クロえもんが唱えると、カギらしきものが現れた。


「これでこの扉を開けられる……行こ、ご主人様」

「時間がありません、行きましょう!」

「あ、あぁ」


 俺は尻込みしつつ、鍵穴にますた~き~を差し込んだ。

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