穏やかな恋2
次の日、合コンで上手くいかなかったと登校中に泣きつかれ、軽くあしらっていると……俺の目の前に可愛らしい男子生徒が立っていた。
雪肌って言うのかな、真っ白な肌を照れているのか真っ赤に染め上げ、俺に対してこう言った。
「あの、好きです! 付き合って下さい。無理だったらお友達からでいいので、……駄目ですか……?」
無意識的なのか、涙目で上目遣いをされると同性だとわかっているのにも関わらず、友人達はドキドキとときめいているようだった。そんな仕草より、俺が気になっていたのは……。
本当に同性なのかと目を疑うほどの、髭がまったくない綺麗な肌だった。
「ほっぺ触って良い?」
と、そう言えば、予想外な答えに焦っていた名前も知らない男子生徒。
そりゃそうだ、告白の返事を聞かされると思ったのに言った言葉は、「ほっぺ触って良い?」なんだもの、驚かないはずがない。でも、気になってしまったのだからしょうがないだろう?
◇◆◇◆◇◆
僕は彼より一年も年上だ、名前を知るはずもない。だから、玉砕覚悟で告白したつもりだった。……だったのに、彼が言った言葉は「ほっぺ触って良い?」だった。まったく関係のない言葉にひたすら焦っていると、彼は微笑ましそうな光景を見ているかのように笑ってる……。
ああ、良かった。嫌悪感のある視線で見られなかっただけ僕は幸せだ。
と、考えながら、僕は決意した。
「どっ、どうぞ!」
これで振られても、想いは届かなくても良い思い出となるような気がするから、彼が頼みことをしてくれたんだ、恥ずかしいけどほっぺを触れられるくらいなら……許されるよね?
と、思いつつも、目の前には想い人のドアップされた顔があり……、僕は意識をすることを止められず、頬を真っ赤に染めれば……彼が言った言葉に僕は裏切られたような気がした。
……それは悪い意味でなく、良い意味で裏切られたような気がしたんだ。
「もち肌だ、可愛いね。失礼かもしれないけど俺、君の名前知らないんだ。
勇気出して告白してくれたんだよね? ありがとう。それなのに名前を知らずに、告白の返事をするのは俺のモットーに反するような気がするし、……返事をする前にまずは君の名前を教えてくれないかな?」
可愛いって言われちゃったよ……、彼にとっては些細な一言でも僕にとっては、そんな彼の声しか聞こえなくするには充分な出来事だった。
そんな一言で、僕は例え振られたとしても、友達でも良い。そう思えた。
彼の側に居れるなら……。
◇◆◇◆◇◆
なんとなく、目の前にいる真っ赤に頬を染め上げた男子生徒は、俺と付き合うことを諦めているような気がするな……と思いつつ、同時に別に俺は同性同士での恋愛に嫌悪感は持っていないのだけど、とそう考えていたら……、目の前にいる真っ赤に頬を染め上げた可愛らしい男子生徒はこう言った。
「僕は栗栖頼って言います。高校二年です。さっきも言った通り、椎野くんのことが好きです。付き合って下さい」
と、そう恥ずかしいそうに言う彼が可愛らしくて、抱きしめてしまいたい。
思わず、俺はこう聞く。……これは凄く意地悪なことを聞くかもしれないけど、答えは決まっているので許してね?
「ねぇ、俺と付き合ったらどうしたい?」
と、そう言えば彼の顔は真っ赤に染まる。本当にこの子、先輩なのかな? と、考えていると……決心したようにこう言った。
「……側にいたい」
そう言われた瞬間、俺は胸が高鳴った。そしてこう思った、……この子のことを絶対に好きになると。
いや、違う。告白された時から……目を奪われていたのかもしれない。
だから、俺はこう言った。
「うん、良いよ。頼くんは今日から俺のものです。自覚するよーに!」
と、そう言えば、頼くんは雪肌を真っ赤に染め上げて、コクコクと頷いた。