先輩と僕2
憎たらしいほどに晴天な青空を、学校の屋上で横になりながら涙を流し、眺めていた。そんな空は当たり前だけど歪んで見えて、自分は泣いているんだと改めて意識してしまうと、余計に涙は次から次へと流れてくる、まるで涙にも意志が芽生えたかと思わず思ってしまうほど、僕の意志はお構いなしに。
先輩が現れる前は、僕に話しかける人なんて家族くらいなものだったから、独りぼっちには慣れっこだったのはもう過去の話。あの温かさを知ってしまった今、一度知ってしまったあの感覚を……忘れることなんて出来るはずもない。
――もう一度、もう一度だけで良いから、僕にチャンスを下さい……。
内心でそう願いつつ、届くはずもないか……と諦めた瞬間のことだった。
僕の顔の目の前には、会いたいと望んでいた先輩の顔が現れる。
慌てて起き上がろうとすれば、突然のことに正常な状態で思考回路が回ってはおらず……、僕と先輩の額は勢い良くぶつかり、ジーンとした頭に響くような痛みが走れば、優しい彼は額を撫でてくれる。……自分だって痛かったはずなのに……。
「大丈夫? 由衣ちゃん。ごめんね、急に顔出したから吃驚したよね?」
言って欲しい言葉を直ぐにくれる先輩は、やっぱり苦手だ。……あまりに温かくて甘すぎて、駄目になってしまいそうになる。
でも、失いたくない。そんな矛盾した気持ちが僕の心中で複雑に絡み合う。
もう後悔したくない。だから、僕は……先輩の側にいることを選んだ。
恐る恐るそう言えば、
「…………ごめんなさい、先輩こそ大丈夫? ここ赤くなっちゃってる……」
先輩は、小柄の僕を懐に隠すかのように抱きしめて、こう言ったんだ。
「大丈夫だよ、心配してくれてありがとう。……そんなことよりもやっと返事してくれて嬉しいよ、由衣ちゃん」
そんなたった一言で、一度は色褪せた僕の世界に一瞬で、色が戻ってきた。