復讐の華を散らす7
頬は赤くなってるものの、やっぱり何処か青白くて具合が悪そうだ。
とりあえず、風紀室に入ってもらって、椅子に座ってもらおう。
倒れられたら、風紀室の鍵を持っていない私は入ることが出来なくなってしまうし、桜花先輩が気絶した横抱きして保健室まで運んでも良いのだが、目立たず行けるスキルなんて日和兄さんじゃあるまいし、私にあるはずもない。
それに桜花先輩の立場上からして、……横抱きされるのは風紀の仕事上に、主にイメージ的な面で支障が現れるだろうし、だったらお互いのことを思うと風紀室に入る方が判断的には正しいだろうと思う。
「とりあえず、風紀室に入りましょう? 桜花先輩、顔色が悪いですし。倒れたら大変ですから、ね?」
と、言い聞かせるようにそう耳元で囁くように言えば、青白くなっている顔色に不釣り合いなくらい、頬だけは真っ赤に染まっていく様子を見て、風紀の“鬼”と呼ばれている桜花先輩は本来の彼ではないんだろうなってそう思った。
あまりに頬を真っ赤に染めるものだから、桜花先輩は強面な顔付きをしていると言うのに、本当は可愛らしい人なんだなってそう思ってしまった。
「……そうだな。七瀬は風紀室に入れるし、中で待っておくことにしよう」
私が考えている間に決心したような表情をして桜花先輩はそう言っていた。
◇◆◇◆◇◆
座れと指示された後、そのソファーに私が座ったと同時の桜花先輩の変わりようにはとても驚かされた。……風紀の“鬼”と呼ばれているのは本来の彼ではないとは思っていたものの、ここまで性格が違うとは思いもしなかった。
私の腕を、まるでぬいぐるみを抱きしめるかのように抱きついてきた。
それだけではない、甘えるように私の肩に頭を押し付けてくる桜花先輩。
私はこう思った。この人は、うさぎ並みに寂しがり屋なんだと……。
そう考えていると、甘えるような仕草をしたまま、桜花先輩はこう言った。
「……仕事が忙しくて眠れないんじゃないの、いつ前の平和だった日向学園に戻るのかわからなくて、凄く凄く不安でたまらなくて、眠れなくなっちゃった」
と、そんな言葉に、今まで抱いていた桜花先輩と言う人の印象が百八十度ガラリと変わった。この人は誰よりも寂しがりやがりで、とても繊細で、問題を一人で抱え込んでしまうほどに責任感が強い……そんな人なんだってそう思った。
そうか、桜花先輩を放っておけないって思った理由はこれだったのか、とそう考えながら甘えるように抱きついてくる彼の頭を撫でると、まるで信頼しきったような微笑みを私に向けて浮かべてくる。
ついこないだまでは遠くから見ていた、あの厳格そうな表情を浮かべていた桜花先輩だと言うのに、今の彼はその表情が幻だったと思わず錯覚させるような可愛らしい微笑みを浮かべている。 そんな桜花先輩を見て、私はほんの少しだけ鼓動が速くなったような気がした。
そんな自分に若干動揺をしながらも、動揺をしていることを声には出さないようにこう言った。
「大丈夫ですよ、桜花先輩。一年もかからずに貴方の望むこの学園に戻ってくるはずです。だから、そんなに不安がらないで? 安心して、大丈夫だから。
この日向学園に、必ず平和が戻ってくるって私は信じています。それよりも今は、貴方が倒れてしまわないかそれが心配です。七瀬が来たら教えてあげますから、……少しの間だけも眠っていてはどうですか?」
と、そう言えば再び、はにかんだように微笑み、「ありがとう」と桜花先輩はそう呟いた後、瞼をゆっくりと閉じていったその数秒後……、穏やかな表情を浮かべながら眠り始めたのだった。




