仮想彼氏・只今・戦闘中 第4回 夢のまた夢
OLのれいこはひょんな事から、あるVR系のゲームに熱中してしまう。ゲームキャラの一人に恋をしてしまい。夢中になっている。だがそのゲームにはある秘密が隠されていた。彼女の運命はいったい!?リレー小説『仮想彼氏・只今・戦闘中』・第4回目を濡れ丸が再び担当いたします。是非、1・2・3話を読んでからお読み下さい。DIG クリエイティブ アワード 2012投稿作品!!
ここまでの流れ、濡れ丸→サイコウさん→みゃもさん&SPテロリストさん→濡れ丸!!
序盤の展開にズッコケると思います。ですが、みなさん是非最後まで読んでみてください。第3回との繋がりが、最後のほうになるとみえてくると思います。では、どうぞ!!
『嗚呼あああああ、嗚呼!!』
なんだ・いまのは?悪夢にうなされていたのか?なにも理解できない。寝汗をかいていたのか、身体はすこし濡れている。わたしはいつの間にか、ログアウトしていたようだ。
いや、そもそもログインしていたのだろうか?夢のなかではへんなヤツらに拉致られて、パックンが悪の組織の一員だった。まさに悪夢だ。
スマートフォンから、ビートルズのアイ・アム・ザ・ウォルラスが流れ出す。こんな曲いつリストに追加したのだろう。
まったく身に覚えのないその事実。
すべてが全くの夢の様にかんじてしまう。
気が付けば、そこは会社のリラク・スペース。わたしはその場所で、いつもの様に昼寝をしていた。
アプリのアラームがなる。どうやら昼休憩のじかんはおわりらしい。
どこまでが夢でどこからが現実なのだろう?これはこのゲームの副作用に違いない。バグが起こって強制的にログアウトさせられたのか?
この事実を報告するために、クライアントであるグリーン・モバイルと、コンタクトをとることにした。
「はい、グリーン・モバイル、担当の中山です。お疲れ様です」
その筋トレフェチで鍛えあげた肉体から、キンニクンと陰でいわれていることを、カレはまったく知らない。
「加藤です。お疲れ様です。さっそくですが、先ほどメールで報告したように、トラブルが幾つかみつかりました」
中山は怪訝そうにはなしをうかがう。どうやら、データはまったくカレの所にはとどいていないらしい。
「おかしいな、テクニカル部門からまったく連絡がきてないですけど」
「予想外の出来事がおこりました。強制的にログアウトもさせられたし」
「それはないですね。強制ログアウトだと、システム全体に負荷がかかりすぎて、ゲーム自体がストップしてしまいますから。そんな事実は確認しておりません」
それはとても奇妙な事実。やはりすべては夢の出来事なのか?しかし、ラドクリフの言動はやはり納得ができない。そのことについて、中山をいま問いつめている。
「もしもハッキングして、だれかが成り済ましていたとしたら?」
「うちのセキュリティは完璧ですよ。疑ってるんですか?」
中山は少し不満そうに・そう答えた。考えてみれば記憶のなかの、あの出来事のすべてが辻褄があわない。登場するすべての人物の思考は、AIといわれる人工知能で構成されている。
カレらは計算機が算出する、巨大なデータそのモノ。それに基づきキャラクター達は行動している。
いま、ゲームのなかでプレーしているのは、わたしだけのはずだ。けれどもグリーン・モバイルの人間なら?
「ちなみにうちの人間は戦闘には参加してませんよ。そんなことより、ゲームのキャラにあんなに入れ込むのは、どうかと思いますけど」
そうだ、すべてはずばっと、お見通しされてしまっている。あんなことや、こんなことや、そんなことまで……。
嫌ーーー!!とっても恥ずかしいんですけど!!えっ、全部のぞかれているの!?丸見えですか!?やめて・ヤメテ・辞めてーーー!!
ふたりは何度も何度もゲームのなかで、
愛しあい逢瀬をかさねていた。
グリーン・モバイルの人間は、ゲームの進行が速やかにおこなわれる様に、情報屋・刑務官・茶菓子屋などに配置され、このゲーム全体を監視している。
「魅力的でしょう。小柄なかんじが、母性本能をくすぐるでしょう」
そうだ、わたしはもう既にカレの虜だ。身も心もすべてをカレにささげたい。
「それでいて真剣で誠実だし、現実社会にはいないかんじですからね」
そんな奴・おらへんやろ。こっちがツッコミをいれたいぐらいだ。でも・もう夢中なんです。考えただけで、身体がほてってしまうんだから。
「ユーモアのセンスもある。あなたの耳たぶをよく掴むでしょう。普通だったらセクハラなんだけど。好きな人にはそれをしてもらいたい。女性って不思議ですよね」
笑い事じゃないです。肉体も精神も掻きまわされるんだから。でもそれなしじゃあ、生きていけない。
「とにかく調査しときますから。ご心配なく。今後もよろしくお願いします」
「・・・よろしくお願いします」
♧♧♧♧♧♧
たぶんすべては夢であったのだ。けれど、リアルにかんじてしまう。それにはちゃんとした理由があった。
夢の最後に見た光景。
まったく同じ出来事が、今日のニュースから溢れだす。
「本日・未明、中学生を人質に立てこもりをしていた凶悪犯が、銃撃戦の末に自殺しました」
現場には、また69のダイニングメッセージ。類似する犯罪が多発している。連中の口癖はオレは世界を変える。
けれども最後にはきまって、世界を変えることなどできないと喚きだす。
現場には、決まっていつも同じダイニングメッセージが残されている。
☂☂☂☂☂☂
きょうは仕事が手につきそうにない。最近の激務が原因であろう。実は身体の調子はあまりよくない。鎮痛剤をうって職場にむかっている。
ロック好きの開発者が、安易にネーミングした。
『バトル・オブ・69』
名前にちなんで69個の戦闘地域が用意されている。
このゲームが、なにか事件とかかわっているのか?いや、やはりすこし考えすぎだ。そして、きっとわたしは働きすぎだ。
わたしは家路を急いだ。サボリというか早退だ。身体の調子は本当にあまりよくない。
この時間帯ならラッシュの様に、ギュウギュウ詰めにされることはない。もたれかかってくる中年オヤジどもを、押しのけることもない。痴漢にあうこともまったくない。
このゲームは革新的だ。巷にあふれるVRMMOの小説とは大違いだ。フィクションが現実を飛び越えてしまっている。
水と薬とスマートフォンさへあれば、いつでもどこでもゲームにアクセスできるのだから。
電車に揺られながら、わたしはふたつの錠剤を口に含ました。そして水で一気に流しこむ。
席につくとわたしの精神は揺らいでいく。アプリを立ちあげ、バイブレーションとともに肉体と精神は切り離されていく。
そう、革新的で夢中にさせるモノ。カレらはなにを考えて、このゲームを開発したのだろう?これが重装備のカプセルのなかなら、絶対に普及することはない。
帰宅までの時間は二時間。はやくパトリックにあいたい。わたしはカレにあうために、またゲームにダイブする。
♡♡♡♡♡♡
「レイ、あいたかった」
そうやって、いつものようにわたしを抱きしめる。なぜだかいつもより強く、カレはわたしを抱きしめる。
ほんとうに、何年もあっていない様にかんじてしまう。
「レイ、手をこっちに」
『なに・なに・なんですか?・・・痛い!!』
わたしはほんとうに注射が大嫌いだ。なのに、いつもそれを打たないといけない。乙女のうでには、無数の注射のあとがのこっている。
「愚那民C・打たないとね」
愚那民C・それが注射の主成分のなまえ。あまりに安易にネーミングされている。わたしが特別な戦闘訓練をうけていないのに、戦闘に参加できるのは、この注射のおかげである。
攻撃力・スピード・反射神経、すべての能力が一時的に強化され、何倍にも増幅される。まさにちょっとした万能薬。
「レイ、紹介したいひとがいるんだ」
まさか、ご両親?そんな、こころの準備が、・・・まだできておりません。わたしの頬は、あかくなっていないだろうか?
「紹介するよ。うちのチームのエスパーだ」
「はじめまして。イトウです」
白銀のその髪。すこしちぢれている。肌はたるみ、老人の様な容姿だ。
「イトウはオレの親友で、タメなんだ」
えっ、パックンって、そんなに年寄りだったの?童顔だから全然わからなかった。でもね、おっさんだったとしても、わたしは大好きだよ。
「おい、ねーちゃん。オレなんか、マシなほうだっつうの」
チョット、もしかして、念でこころのなかとか読めたりしますか?エッチな妄想とかできなくなるじゃない。
「気をつけたほうがいいよ。イトウはエキスパートだから。呪術系のほとんどのことが、コイツはできる。そっち方面じゃ、オレもまったくかなわない」
「そうだな。例えば、いま・ねーちゃんの服の中身とか丸見えだし」
『チョット、やめてください。わたしの身体は、パックンだけのモノよ』
無意識にむねとこかんを手で覆い隠し、反対側をむいていた。でも、そうすると、お尻が丸見えなんでしょうか?
「おい、やめろ。オレのおんなだ」
「わかった。冗談だよ。悪かった」
パックンにはまったく冗談がつうじない。のど元に短剣を突きさそうとして、寸前でそれをやめた。わたしはこんなにも愛されているんだな。
♥♥♥♥♥♥
「あのーーー、イトウさんのお名前はなんというのですか?」
混乱してへんな事をきいてしまった。名前という概念・自体そんざいするのだろうか?
「名前?シロウ・イトウだけど。なにか?」
「いえ、なんでもないです」
このゲームのキャラたちは、あまりに安易にめいめいされてしまっている。
イトウさんが老けてみえるのは、術者・特有の特徴らしい。精神エネルギーを使うために、肉体の劣化が普通の人間より激しいらしい。
ーコード・69ー
「おい、パトリック」
「オレはそんな名前じゃない。オレの事をそんなふうに呼ぶな」
「じゃあ、ラドクリフ」
「違う。それもわたしの名前ではない」
「お前は一体、なにさまのつもりだ」
「ぼくは、ぼくでしかない。ただコード69に従うだけだよ」
「勝手にすればいいさ。けど、お前のお気に入りには制裁をくわえさせてもらう」
「レイには指一本、触れる事はできない」
「それはどうだろう?楽しみだね」
そういうと、そのおとこはその部屋をでていった。部屋のなかには静けさだけが響いている。画面のなかには無数のソースコード。
「レイ、きみは世界を変えることができる。21時にまたあいにいくよ」
♡♡♡♡♡♡
「ねえ、パックン。わたし注射きらい」
「じゃあ・正路雁でものむ?」
「やめとけよ。ラドクリフみたいになりたくないだろう?」
パックンはわたしをみて、すこし苦笑いをしている。イトウさんはあきれている。
正路雁はすべての能力を格段に増幅するが、副作用として全身の骨格を膨張させ、怪物の様な容姿にそれをかえてしまう。
「痛くないかわりに、すごく苦いんだ」
「苦いの苦手だニャン。嫌だニャン」
冗談じゃないわよ。乙女がそんなモノのんで、怪物になってなるもんですか。かわいい服もきれないし、パックンに抱いてもらえなくなるじゃない。
「まあ、愚那民Cにも副作用はあるんだけど、・・・なあ」
「ああ、あるね。・・・けど」
そういうとふたりは会話をやめた。わたしのしらない効果が、注射にもあるらしい。
「OK。作戦を立てようか?コマンドコール・マップ」
イトウさんはうちのチームの参謀につくらしい。パックンとちみつに作戦をねっている。今回のバトルフィールドはイチノタニ。あまりに安易にネーミングされている。
もしもこのゲームが発売されたら、確実に大ヒットするだろう。そうしたら、パックンはすごい人気者になって、わたしだけのモノじゃなくなるのかな?
『・・・いまのうちに、もっと甘えておこうかな?』
「やっぱし、奇襲作戦しかないな」
「湾岸の反対側の急斜面を、いっきにかけおりる」
「そして秘密のつうろから、城内にしんにゅうする」
やっぱり・カッコイイな。わたしのパックンだもの。こうなったら、スタッフに一部始終が丸見えでも、あんなこと・こんなこと・そんなこと全部やってやる。
『うう、きょうもですか?やめてください。痛いーーーー!!』
いつもの様にパックンはきつく、わたしの耳たぶを掴んでいる。
「つうろさへみつければ、もうこっちのもんだ」
「そこでオレの透視能力が役にたつ。さっきみたいに、ねーちゃんの身体を丸裸にすればいいわけで……」
「おい、殺されたいか」
「・・・冗談です」
パックンは日本刀でイトウさんを斬りつけようとしている。わたしはそれを押さえこんでいますが……。
『えっ、もしかして、さっきわたしの身体、透視されていました!?オッパイもお尻も大切な所も全部・丸見えですか!?嫌ーーーー!!すごく恥ずかしいです!!』
「キャーーー、見ないでーーー!!なに考えてるのよ!!」
わたしは、パックンの背後にまわりこみ、うでに抱きついている。だけども抱きついている行為は、わたしにとって確信犯である。いま、わたしの頬はかくじつにあかくなってしまっている。
♥♥♥♥♥♥
はい、加藤です。
ただいま電話に出ることができません。
発信音のあとにメッセージをどうぞ。
美穂です。久しぶり。
仕事大変そうですけど、元気にやっていますか?
こっちも大変ですけど、なんとか頑張っております。
また昔みたいに、いっしょに騒ぎたいね。
れいこはこういうの好きだから、
もう知っているかもしれないけど。
呪のアプリって知ってる?
なんでもダウンロードしたにんげんは、
二週間以内にみんな死んでいるらしいよ。
ストアにアップされて、三日間で削除されたらしいけど、
結構な数のにんげんが死んだって、ネットではうわさになってるよ。
物騒な世のなかだから、おたがいに気をつけようね。
それではまたね……。
豪華・作家陣で取り組んでおります。最後までよろしくお願いします。とりあえず、第4回で話をすこしもどしましたが、第3回が物語の重要なポイントをしめるのは変わりありません。今後の展開にご期待ください。