白昼夢〜瑪瑙〜
「お前は人じゃねぇ。俺と同じ、魔属だよ。ったく、魄だけでここに来て、そんなに急ぐ必要が、どこにあったんだ?とにかく今は、早く体に戻んな。夜、また迎えに行くからよ」
氷魚は、眩暈を催した。
あまりに早い展開に、頭がついていかないのだ。
「いや、まだ分かんないんだけど。ね、戻るって、どうやるの?」
「強く念じればいい、やれやれ…じゃ、後でな」
その時、彼が消えたのか、あたしが消えたのか、分からなかった。
「…お、氷魚!?ちょっとあなたどうしたの?!氷魚っ」
「ん…?」
氷魚は、揺さぶられて、目を開く。
どうやら体に戻れたらしい。 あたしは、自宅の玄関先にいた。
「さっき学校から電話があって、あなた無断で早退したっていうじゃない。どうしたの?」
「さっき…?ね、お母さんっ、今何時?」
「今?今は、12時半ちょっと過ぎだけど?」
「12時…半!?ウソ、どうなってンの?あたしさっきまで学校で?もうっ、一体なにがどうなってンの!?」
氷魚、苦悩中。
「なぁに、変な子ねぇ…お昼、まだなんでしょ?作るから、早く中に入りなさい」
「う、うん」
―あれも、夢だったのかな? 氷魚は小首を傾げて、玄関のドアを閉めた。