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ポテトアポカリプス ~錆びた大地の黄金~  作者: 月読二兎
第五章 黄金の大地へ

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第44話 旅立ちの準備

 再生委員会との、最終決戦。

 その決意を固めた俺たちは、新たな旅立ちの準備を始めていた。

 今度の旅は、これまでとは、わけが違う。未知の脅威が待ち受ける、敵の本拠地へと、こちらから攻め込むのだ。準備は、いくら念入りにしても、しすぎることはない。


 フロンティアの村は、再び、慌ただしい活気に包まれた。

 だが、そこには、以前のような悲壮感はなかった。誰もが、自分たちの意志で、未来を掴み取ろうという、力強い決意に満ち溢れていた。


「ユウキ! こいつを見てくれ!」

 キバが、興奮した様子で、俺を呼びつけた。

 彼が指差す先には、再生委員会の戦闘用ゴーレムの残骸から回収した、パーツの山があった。

「こいつの装甲、俺たちが使ってる鉄とは、比べ物にならねえくらい、軽くて硬え! こいつを溶かして、俺たちのバイクや、防具を強化できるぜ!」


「すごいじゃないか、キバ!」

「それだけじゃねえ。このレーザー砲の、エネルギーコアも、まだ生きてる。少し改造すれば、強力な定置砲台として、村の防衛に使えるはずだ」


 キバは、目を輝かせながら、大崩壊以前のテクノロジーを、自分たちの力として吸収していく。彼のメカニックとしての才能は、まさに水を得た魚のようだった。


 一方、ザギとダントさんは、ポテトナイツと村の男たちをまとめ、新たな戦闘訓練に励んでいた。

「いいか! 次に相手にするのは、アークライトの部隊以上の、エリート兵だ! 個々の力では、絶対に勝てねえ! 重要なのは、連携だ!」

 ザギの指導のもと、彼らは、ポテトを使った、より実践的な戦術を編み出していく。

 ニトロポテトを使った陽動、ガーディアンの蔓と連携した拘束術、フロートポテトの微弱な浮力を利用した、立体的な奇襲攻撃。

 フロンティアの戦術は、日々、進化を遂げていた。


 そして、俺とアンナ、サラは、旅に持っていく、新たなポテトの開発に、全力を注いでいた。

「アルブレヒトの日誌によれば、再生委員会の本拠地は、強力な電磁バリアで守られている可能性があるわ」

 サラが、日誌の解読を進めながら、警告する。

「バイクも、精密機器も、バリアに近づけば、すべて無力化されるかもしれない」


「だったら、バリアを中和するようなポテトは、作れないか?」

 俺の問いに、サラは、しばらく考え込んだ後、一つの可能性を示した。

「……エレキポテト。あの、電気を発生させる、奇妙なポテト。あれの性質を、逆転させることができれば……。周囲の電磁波を、吸収し、無力化する、『チャフポテト』が作れるかもしれないわ」


「面白い!」

 俺たちは、早速、そのチャフポテトの開発に取り掛かった。

 アンナは、俺たちの研究を、食料面から支えてくれた。

「二人とも、根を詰めすぎよ。ほら、パンプキンポテトのパイ、焼いたから、食べて」

 彼女が差し出す、甘くて温かいパイは、俺たちの疲れた頭と心を、優しく癒してくれた。

 彼女の存在がなければ、俺たちは、とっくに、研究のプレッシャーに、押し潰されていたかもしれない。


 俺、アンナ、サラ。

 キバ、ザギ、ダントさん。

 そして、村の仲間たち。

 それぞれが、それぞれの場所で、自分の役割を果たし、来るべき決戦に向けて、一つの大きな力へと、まとまっていく。

 その光景を見ながら、俺は、デメテルに乗っていた頃の、あの孤独感を、思い出していた。

 一人の英雄が、すべてを背負う時代は、終わったのだ。

 これからは、みんなの力で、未来を築く。


 旅立ちの前夜。

 俺は、村を見渡せる、小高い丘の上にいた。

 再生委員会から鹵獲した、高性能な天体望遠鏡で、東の空を眺める。

 そのレンズの向こうには、肉眼では見えない、巨大な建造物の影が、ぼんやりと見えていた。

 再生委員会の本拠地、『アークシティ』。

 大崩壊以前の、巨大な宇宙船を改造して作られたという、天空の要塞都市だ。


「……あそこに、この世界の、すべての謎が眠っているのか」


「一人で、感傷に浸ってるの?」

 不意に、後ろから声がした。アンナだった。

 彼女は、俺の隣に座ると、同じように、東の空を見上げた。


「……怖い?」

「ああ。正直、怖いよ」

 俺は、素直に答えた。「今度の敵は、これまでとは、わけが違う。俺たちの力が、どこまで通用するのか……」


「大丈夫よ」

 アンナは、俺の手を、そっと握った。「ユウキは、もう一人じゃない。私たちが、ついてる。みんなが、ついてるわ」

 その手の温もりが、俺の不安を、ゆっくりと溶かしていく。


「……ありがとう、アンナ」

「それに、ね」

 彼女は、いたずらっぽく笑った。「あんたには、最強の『お守り』があるじゃない」

 彼女が指差したのは、俺の首から下がっている、緑色の石のペンダントだった。


 俺は、ペンダントを、強く握りしめた。

 そうだ。俺は、守られている。

 仲間たちの、思いに。

 アンナの、優しさに。

 そして、このペンダントに込められた、サラの、過去と、未来への祈りに。


「……そろそろ、時間だ」

 丘の下から、ザギの声がした。

 旅立ちの時だ。


 俺とアンナは、立ち上がり、丘を降りていった。

 村の入り口には、旅立つ俺たち――ユウキ、アンナ、サラ、ザギ、キバ、ノクトの六人と、見送りの村人たちが、集まっていた。

 俺たちのバイクは、ギアヘブンの技術で強化され、その荷台には、決戦のために開発された、様々な特殊ポテトが、満載されている。


「ユウキ!」

 ダントさんが、俺の肩を、力強く叩いた。「必ず、生きて帰ってこい! そして、世界一のポテトの話を、聞かせてくれ!」

「……ええ。約束します」


 俺は、仲間たちと顔を見合わせ、頷き合った。

 それぞれの胸に、それぞれの誓いを秘めて。

 俺たちは、最後の旅へと、出発した。


 目指すは、天空の要塞、アークシティ。

 この、ポテトアポカリプスという、長くて、奇妙な物語に、終止符を打つために。


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