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異世界王座を喰らえ!クッキング・オア・ダイ in 胃袋ダンジョン

作者: 八衛門

 夜勤明けのコンビニ店内は、蛍光灯の白々しい光に照らされて無機質に輝いていた。

 タカヒロはレジ横の棚に並んだ賞味期限ギリギリの唐揚げ棒をぼんやり見つめながら、頭をかきむしる。

「……うーん、人生、これでいいのか……?」

 口にした瞬間、店内の空気が一変した。聞こえるはずの冷蔵庫のモーター音、外の車の走行音、それらすべてが消え、静寂だけが支配する。


 そして、空間が“溶けた”。


 壁がぐにゃりと歪み、床が液状化する。タカヒロの足元から光が漏れ出し、彼の全身を包み込む。

「おいおい、ちょっと待ってくれ!俺、まだ給料日迎えてないんだがッ――」

 叫びもむなしく、光はタカヒロを呑み込み、次の瞬間、彼の視界は血のように赤黒い世界へと塗り替えられた。


 目を覚ましたタカヒロは、粘液まみれの床の上に倒れていた。鼻を突くのは胃酸に似た刺激臭。周囲は見渡す限り肉壁で覆われ、脈打つ血管が壁を這っている。

「……夢オチってことでいいか?」

 立ち上がりながら、足元に貼りつくようなぬるぬるとした感触にうんざりする。そのとき、耳元で声がした。

「貴様か、今年の“胃袋候補者”ってのは?」

 目をやると、そこにはトカゲに似た生き物がいた。だがその鱗は銀色に輝き、眼は翡翠のように光を放っている。

「俺?誰だお前、しゃべってんのか?」

「ピリピリトカゲ様と呼べ。貴様とコンビを組むことになった。不本意ながらな」

 タカヒロは頭を抱えた。

「なあ、ここどこだ?ダンジョン?RPG?異世界ってやつか?」

「胃袋ダンジョン《グラヴィタール》だ。ここを攻略し、“究極の一皿”を作った者が王となる」

 意味が分からなかった。ただ、空腹だけが現実だった。


 タカヒロの最初の任務は、「食材魔物」を狩り、それを料理すること。だが問題があった。

「……包丁がない。フライパンもない。食材も、っていうか、アイツら食っていいのか?」

 現れたのは爆水魚ばくすいぎょ。赤く膨れた身体から熱湯を噴射しながら跳ね回る。

「喰うしか、ないってのか……!」

 即席で石を削って刃を作り、落ちていた骨で串をこしらえ、爆水魚の動きに合わせて一閃。見事に仕留め、燃え残った火薬草で焚き火を起こす。

 タカヒロの“初めての異世界料理”が始まった――。


 火に炙られた爆水魚の香ばしい香りが広がる。ピリピリトカゲが舌を出し、珍しく賞賛を口にする。

「……意外とやるじゃないか。だが次はもっと強い魔物が来る」

「いや、まず食わせてくれ……死ぬほど腹減った……」

 そう言ってかじりついた爆水魚は、意外にも柔らかく、旨味が深かった。ただし、舌が少し痺れる。ピリピリ……?

 気づけば、遠くで唸り声が響いた。肉壁が震え、次なる魔物の影が姿を見せる。


 胃袋ダンジョンの試練は、始まったばかりだった――。


 翌朝。粘液の中で目覚めたタカヒロは、ぼんやりと脈打つ天井を見つめていた。枕代わりの骨の破片が、妙に心地よい。

「……やべぇ、だんだん慣れてきてる……」

 視界の端で、ピリピリトカゲが干し肉のように干された爆水魚の皮を噛んでいる。

「今日の試練は“記憶食材”だ。過去を喰う覚悟はあるか?」

「……なんか重いな」

 そう呟いたタカヒロの耳に、不意に聞き慣れぬ音が届いた。


 ――くちゃり。


 肉壁が裂け、そこから現れたのは……白い、少女のような何かだった。その身体は透き通るような皮膚に覆われ、心臓が拍動する音さえ視覚で感じられる。

「……あなたたち、食べるの?」

 彼女――ミールが、微笑みながら問いかけた。


 ミールの言葉は、タカヒロの耳には明瞭だったが、意味の重さに言葉を返せなかった。ピリピリトカゲが舌を鳴らす。

「こいつは“感応食材”の末裔だ。自分を料理して、他者に記憶や感情を伝えることができる」

「料理って……自分をかよ!?」

「ちょっとだけよ」とミールは冗談めかして笑ったが、その声にはほんのりとした寂しさがにじんでいた。

 タカヒロは、迷った末に問いかける。

「君……それでいいのか?」

「うん。だって、わたしの“美味しさ”が誰かの力になるなら、それで嬉しいもの」

 彼女の笑顔は、どこか壊れそうなほど薄かった。


 その日の試練は「記憶のシチュー」。

 ミールの小指の先を削り、それを煮込む。そこから立ち昇る香りは、懐かしさと哀しみを孕んでいた。一口、口にしたタカヒロの脳裏に、幼いミールが森で一人泣いている記憶が流れ込む。親に捨てられ、飢えの中で自身を“食材”として生き延びてきた彼女の過去。スプーンを持つ手が震える。

「……こんなもん、喰えるかよ……」

 だが、隣のピリピリトカゲは静かに言った。

「彼女の願いを否定するなら、それこそ“料理”を冒涜する行為だ」

 タカヒロは震える唇で、もう一口シチューをすくった。

「……だったら、俺が世界一うまい料理にしてやるよ。誰もが笑って食える料理に」

 その言葉に、ミールは涙を一粒だけこぼして、微笑んだ。


 ミールを迎え入れた翌日、胃袋ダンジョンの空気が変わった。肉壁の脈動が荒く、どこからともなく聞こえる咀嚼音が重く響いている。それは、魔物の“群れ”が近づいている合図だった。

「群れか……こりゃ面倒だぞ」

 ピリピリトカゲがしっぽで地を叩きながら言う。

「来るぞ。奴らの中には“門番”クラスも混ざっているはずだ」

 門番――それは階層ごとに存在するダンジョンの守護者。ただしこの世界では、守護とは“味の格”を意味する。

「つまり……めちゃくちゃ旨いってことか?」

「そして、めちゃくちゃ強い。喰う覚悟がなければ、喰われるだけだ」

 そのとき、足元の肉床が盛り上がり、爆水魚たちが無数に飛び出した。跳ねるたびに胃酸混じりの熱湯をばら撒き、焼ける匂いが鼻を突く。

「やるしかねぇな!」

 タカヒロは飛びかかってくる爆水魚に、昨日磨いた骨刃を振るう。刃が肉を裂く感触、跳ねる熱湯、うなるピリピリの叫び。そして、爆水魚たちの後方から、巨体の魔物がゆっくりと姿を現した。


 ――それは、脂に包まれた巨大な獣だった。


 犬のような姿、だが口は横に裂け、涎が肉を溶かす。名は「脂の番犬ラルド・グレイブ」。第二層の門番にして、脂肪分で攻撃し、戦場を油で満たす異形。

「火は……火はどこだ!?」

 タカヒロは必死にあたりを見渡す。そのとき、ミールがそっとタカヒロの手に触れた。

「この子……香ばしくしてあげて」

 ミールが差し出したのは、自分の髪の一部。それは自然発火する特性を持つ“火種髪”だった。

「……悪い。借りる!」

 即席の松明を掲げ、タカヒロは脂の番犬へ突撃する。火が触れた瞬間、油煙が爆ぜ、熱がダンジョンを震わせる。叫び声、炎の音、肉の焼ける匂い。

 それはまさに、“料理”の始まりだった。


 燃え上がる油煙の中、タカヒロは息を切らしながら立っていた。脂の番犬は身を焼かれながらも動き続け、床に広がる油で足場を滑らせてくる。

「クソっ、地の利を完全に取られてる……!」

 滑る、転ぶ、斬り込む。目の前にあるのは料理ではない、“命のやり取り”だ。

「調理ってのはな……生と死の間でしか生まれねぇんだよ!」

 ピリピリトカゲの怒鳴り声が飛ぶ。その言葉にタカヒロは目を見開く。

 逃げながら、タカヒロは記憶の中のあの厨房を思い出した。コンビニの揚げ物機の前、忙しすぎて油に火傷した夜。それでも揚げたてを食べた常連の爺さんが、笑顔で言った言葉。

「これがあるから、まだ生きてる気がすんだよ」

「……そうだ」

 タカヒロは、爆水魚の骨串を拾い上げ、爆ぜる油を払いながら脂の番犬に飛びかかる。ミールの火種髪を油に放り込み、空中で点火。爆発の中、脂の番犬の胸に骨串を突き刺した。

 巨体が崩れ落ちると同時に、辺りに広がるのは、香ばしい肉の香りだった。

「……いただきます」

 タカヒロは呟き、脂で焼いた門番の肉を一切れ口にした。ジューシーで、舌にねっとりと絡みつき、何よりも“熱い生”を感じさせる味。胃袋ダンジョンに入って初めて、タカヒロは“料理”として命を食べた。それは、戦いであり、調理であり、そして誓いだった。

「次は……もっと、うまく作ってやる」


 脂の番犬の亡骸を前に、タカヒロは静かに息を吐いた。異世界の空気は、まだ肺の奥で少し暴れていたが、それもすぐに、動物の脂と香辛料の甘い香りに塗り潰されていく。

「ピリピリ……火は頼めるか?」

「当たり前だ、こちとら火竜の末裔ぞ。……まあ、三百年前に尻尾の先だけ混じった程度だがな。」

 ピリピリトカゲは鼻を鳴らして、口から青白い炎を吐いた。タカヒロが組み上げた即席の石窯にそれが燃え移り、煙があがる。

「いいな、脂は強火で炙るのが鉄則。余分な部分は落とす、旨味だけ残す。それはお前にも似てるかもな、トカゲ。」

「ほう? 口を慎め、でなければお前を炙ってやるぞ。」

 タカヒロは笑った。異世界での恐怖や孤独が、不思議と少しずつ霧散していくのを感じていた。焚火の上に置かれた金網に、番犬の肋肉を並べる。スパイスは、ピリピリが持っていた「火山香辛草」の乾燥粉。あとはミールがどこからともなく採ってきた「香皮果」の果汁を混ぜた特製ソース。

 香ばしい匂いが広がる。まるで街角の屋台、祭りの日の油の匂い、ふるさとの風景のような感覚が鼻をくすぐる。

「うわ……なんか、懐かしい匂い……でも、知らないはずなのに、涙出てきた……」

 ミールが呟く。タカヒロは無言で、香ばしく焼き上がった肉の一切れを、彼女の手に乗せた。

「食べてみて。たぶん、これは――俺たちが、今日ここに生きてるっていう証明だ。」

 ミールが一口噛む。途端、彼女の頬にじわりと涙が滲む。涙が落ちると、肌が微かに発光する。食材種族特有の“感情味覚共鳴”。ピリピリが鼻を鳴らした。

「ふん、悪くはないな。脂がしつこくない。スパイスのバランスはギリ及第点……いや、よくやった、バイトくん。」

「それをもっと素直に褒めろよ。」

「言うか。俺は舌だけは騙せんぞ。」

 焚火のそばで、小さな宴が始まった。異世界に転移され、命の危機に晒され、それでも料理が皆をつないでいる。ふと、ミールがポツリと漏らした。

「……でも、この階層って……実は“胃の入り口”なんだって。次の階層は“酸の川”があるって。」

「マジか。胃袋ダンジョン、まじで生きてんのかよ……」

「うん……でも、最深部には“王の胃”があるって。そこに、究極の食材が眠ってるって噂。」

 タカヒロは、燃えさしの炎をじっと見つめた。料理は、ただの生き延びる手段じゃない。これはきっと、異世界が俺に「何か」を食わせようとしている。喰らうか、喰われるか。その二択しかない世界で――

「行こう、次の階層へ。王になんてならなくてもいい。……でも、食ってみたいんだよ。俺がまだ知らない、この世界の“味”をさ。」

 その瞳は、炎よりも熱を帯びていた。


 胃袋ダンジョンの第二層は、まさに“胃”の働きを体現した場所だった。

 辺り一面を満たす薄緑色の川――それは水ではなく、微かに泡立ち、金属のような酸い匂いを放つ胃酸の流れだ。川底からは時折、大きな泡がボコボコと浮かび上がり、破裂するとともに魚の腐敗したような臭気が周囲に立ち込める。

「これはまた……見事な腐臭だな……」

 タカヒロはハンカチで口を押さえながら、川辺にしゃがみ込んだ。足元には粘液にまみれた骨皮クラゲの死骸が漂っている。見た目は不気味だが、ピリピリトカゲ曰く「干せば旨味が凝縮される」高級食材らしい。

「匂いは最悪だが、酸は思ったより薄い。足を入れなければ問題ないだろう。」

 ピリピリが川面を睨む。その尻尾の先端は既に警戒モードで、ヒュンヒュンと空を切っていた。ミールは少し離れた岩陰でうずくまっている。酸の湿気が体に悪いらしく、時折くしゃみをしては鼻をかんでいた。

「これ、下手に食材を拾ったら消化されそう……」

「そんなことになったら俺が調理してやるよ、完全に消化済みってな」

「冗談きつい!」

 軽口を叩く間にも、異様な気配が近づいてきた。川の向こう岸、泡の向こうに影がある。背丈はタカヒロと同じか、それより少し低い。マントを羽織った人物がひとり、こちらをじっと見つめていた。

「おい、誰だ?」

 ピリピリが低く唸る。タカヒロもすぐさま調理ナイフを手にする。影はやがて、川に設置された簡易の木橋を渡って近づいてきた。

「こんにちは。いやぁ、君たちも参加者か。実は僕もそうなんだよねえ」

 しゃべったその声は妙に軽い。気さくに笑っているが、どこか“演技めいて”いて、喉の奥に別の意図が潜んでいるような響きだった。

「俺はレネウス。元・料理ギルド所属。実力はそこそこ。あと、君たちが焼いた“脂の番犬のリブステーキ”、匂いだけで三日分の飯が進みそうだったよ」

タカヒロは眉をひそめた。

「それ、食ったのか?」

「うん、残ってた骨を少しかじってみた。旨かったよ?あ、勝手に触ってごめんね」

「……料理泥棒、か」

 ピリピリが炎を吹きかける一歩手前で、レネウスが手を上げて止めた。

「違う、違う!僕は情報が欲しかっただけなんだ。君たちの料理がどんな“味の魔力”を持ってるか、それを確かめたくて」

「……味の魔力?」

 タカヒロの声に、レネウスはニヤリと笑って答えた。

「この世界にはね、食べた料理の“想い”を、そのまま感情として再現する魔力があるんだよ。“感応スパイス”っていうね。どうやら君の皿には、それが無意識に乗っていた。……だから、仲間にならないか?」

 沈黙が落ちる中、タカヒロの腹が鳴った。ミールがぽつりと呟いた。

「……変な人だけど、悪い人じゃない、気がする。臭いは……あんまりしないけど」

「誉めてるのかそれ」

 タカヒロは額を押さえた。異世界の人間関係、面倒すぎる。だが――これが、後に“胃袋同盟”と呼ばれる奇妙な仲間たちの始まりであった。


 酸の川を越えてしばらく進むと、風景が変わった。胃の粘膜を思わせる壁面が次第に硬くなり、やがて乾いた岩肌の洞窟へと変化していく。その空間の片隅に、小さな炎が見えた。

 誰かが火を焚いている。焚き火のそば、黒いフードをかぶった人物がうずくまっていた。手には鍋、煙は毒々しい紫色をしている。近づくだけで鼻の奥がチリチリと痛み、胃がむかつく。

「な、なんだこの匂い……食べ物の臭いじゃない……薬品?いや、腐敗臭……!」

 レネウスが鼻を押さえ、ミールが数歩後退する。ピリピリトカゲだけが興味津々といった様子で鼻をひくひくさせていた。

「ふむ……この香り、ひとつまみの“死”と一匙の“失望”ってところか」

「それ褒めてんのか……?」

 タカヒロが口を開こうとしたそのとき、フードの人物が顔を上げた。

「……食べる?たぶん、死にはしないと思う」

 その声は思いのほか若く、そして疲れきっていた。

「私はバルバラ。呪われた料理魔女。何を作っても、必ず不味くなる呪いを受けてるの」

「そりゃまた思い切った自己紹介だな……」

「でもね、食べてもらえたら……もしかしたら、少しは、呪いがほぐれるかもしれないって……だから、お願い……一口だけでいいから、食べて」

 タカヒロは鍋を見た。中には、灰色のシチューのようなものが蠢いている。表面には泡、底では何かが溶けかけている音がした。一歩前へ出ると、仲間たちが静止した。

「タカヒロ、やめろ。腹壊すどころじゃすまん」

「死ぬなよ、ほんとに!」

「……大丈夫。俺、コンビニの夜勤で三日間廃棄のパンしか食えなかったことあるから。多少の毒は慣れてる」

 そして一口。――瞬間、喉の奥が逆流しかけた。味ではない。“絶望”が舌を支配する。寒気、怒り、孤独、飢え、喪失――まるでバルバラの心の奥底をスープにされたかのような感覚だった。

だがタカヒロは飲み干した。

「……うん、不味い。でもな、これは“味”じゃない、“叫び”だよ」

 バルバラの目に、静かに涙が溜まっていた。

「……ありがとう。私、久しぶりに誰かに“食べられた”気がする」

「バルバラ。君の呪い、もしかしたら“誰にも味わってもらえない”孤独の形かもしれないな。だったら、俺が解いてみせる。チームに入ってくれ」

その言葉に、彼女は頷いた。

“呪いの料理魔女”は、タカヒロの“胃袋同盟”に加入した。


 焚き火の光の下に集う者たちは、どう見ても一流の料理人には見えなかった。


 毒舌で偏食な火吹きトカゲ。

 自分の体を食材に変える少女。

 食材を盗み食いする軽薄男。

 不味い料理しか作れない魔女。

 そして――料理経験ゼロの元コンビニ夜勤バイト、タカヒロ。


「……もう、どうなっても知らんからな……」

 ピリピリトカゲが火を弄びながら唸る。

「それでも俺は、こいつらと一緒にやってみたい。喰われるかもしれないし、誰かを喰わなきゃいけないかもしれない。でも、それでも一緒に“食卓”を囲みたい」

 タカヒロのその言葉に、レネウスが口笛を吹いた。

「いいね、その台詞。感情スパイス入りで記録しておきたいくらいだ」

 バルバラは黙って自分の鍋をタカヒロの方へ差し出した。ミールはそっと彼の肩に触れる。

「……私、食べられることが怖くなくなった。タカヒロに食べられるなら、たぶん、ちょっとだけ美味しくなれる気がする」

「……いや、それはちょっと待て、重い!」

 その場に小さな笑いが生まれた。

 焚き火の上では、酸の川で獲ったクラゲ肉と、ピリピリが探してきた“炎実えんのみ”が煮込まれている。少し辛く、そしてどこか甘い香りが立ち上る。

「――さて、名前だな」

 タカヒロが振り返る。

「このメンツだ。“料理バトルチーム”とか“魔導厨房戦線”とかじゃ、あまりにカッコつけすぎだ」

「じゃあ“胃袋同盟”とかどう?そのまんまだけど、わかりやすい」

 ミールの提案に、タカヒロは思わず噴き出した。

「それ、いいな。“胃袋同盟”。ダサいけど、妙に気合入る」

「だっせえ……が、否定はしない」

「それで決まりですね。賛成一票、レネウス!」

「……なら、私も……胃袋同盟、入る」

 バルバラの声は小さかったが、どこか確かな響きを持っていた。そしてその夜、異世界ダンジョンの胃の底で、最も場違いな料理集団が生まれた。


名を――胃袋同盟。


彼らの冒険は、まだ始まったばかりだ。


 第三層は、常識を裏切る空間だった。

 洞窟を抜けた先、タカヒロたちの目に飛び込んできたのは、宙に浮かぶ都市――市場都市アロマだった。胃袋ダンジョン内に存在するとは思えぬほど、空気は澄み、灯りが灯り、どこか屋台祭りを思わせる活気が漂っていた。

「……胃袋の中に、こんな場所があるとか正気の沙汰じゃねえ……」

 ピリピリがぽつりと呟く。上空では魚に似た浮遊胃鰯うきうおが回遊し、時折その腹から香辛料の粒をまき散らしていく。

「これは……胃が“脳”の真似事でもしてるのか?ここだけ異常に整ってる」

 レネウスが苦笑した。

 市場の中心には巨大な調理台が鎮座しており、その前に列を作る人々の背中からは焦燥と期待が交互に漂っていた。

「ここ、味覚を“売買”する都市なんだって」

 ミールが耳打ちした。

「本物の味覚を持つ者は貴族級。庶民は“代用味”を購入して、味わったフリをするだけ。……だから、“本当に旨い”料理を知ってる人は、もうほとんどいないの」

 その言葉に、タカヒロは眉をひそめた。

「それってつまり、料理が“心”じゃなくて、“情報”として扱われてるってことか……」

 屋台を一つ覗いてみると、「カレースープの疑似記憶(高級版)」「母の煮物体験(甘口)」「初恋の味フラッシュ」など、怪しい商品が並ぶ。

「こりゃ“偽物の幸福”を売ってるってことか……」

 バルバラが思わず呟いた。彼女の呪われた料理には一切“記憶”が乗らない。だからこそ、こういった記憶ベースの料理はどこか滑稽に見えたのだ。そしてその時、タカヒロは見てしまった。市場の中心――審査台で行われる公開試食会にて、一人の料理人が、明らかに「未調理の食材」を“完璧な料理”として差し出し、審査員たちが狂ったように賞賛している光景を。

「……あれ、やばくないか? ただの……生肉だぞ、どう見ても」

「それがこの都市の“味”なのさ。演出と、香りのフレーム、そして審査員への“味覚操作魔法”で、“旨い”と感じさせているだけ」

 レネウスが低く呟いた。

「でも、料理って――本当にそれでいいのか?」

 タカヒロの中で、何かがふつふつと煮立ちはじめていた。


 市場のざわめきが消えたのは、ほんの一瞬のことだった。

 中央の調理台に立つ男――無味王むみおうアラモンは、真紅のローブをまとい、金色のマスクで顔を隠していた。その手には銀の皿。そして皿の上には、明らかに焼きも煮てもいない“牛の生肉”が乗っていた。だが、それを口にした審査員たちは、恍惚の表情を浮かべる。

「う、うまい……母の味……! いや、これは初恋の味……!」

「心が震える……あの戦場の記憶が……“肉じゃが”になって戻ってきた……!」

「完全調和の“味の記憶”だ……!」

 タカヒロは絶句した。

「ただの……幻覚じゃねえか……!」

 アラモンがこちらを見た。

「おや、野暮な連中が混じったな。異邦の者よ。これは料理ではない。“体験”だ。“味”は感覚、演出で作るもの。素材や手間など、無駄以外の何物でもない」

「ふざけんな……!」

 タカヒロは一歩踏み出した。その肩に、バルバラが手を置いた。

「やろう、タカヒロ。あいつの“味の呪い”を、私の“呪い”で上書きしてやる」

「……やれんのか?」

「不味くてもいい。あんたが、“心”を添えてくれるなら……料理は、きっと伝わる」

 焚き火を設置する。材料はさきほどのクラゲ肉と、酸の川で採れた“発酵胆の実”。魔女の呪われた調理――苦味、えぐみ、腐敗臭。そこにタカヒロが刻んだ“思い出”を振りかける。

「俺の記憶はコンビニ飯ばっかだ。でもな、あの深夜、一人で喰ったあの焼きそばパンの味は……俺にとっては世界最高だったんだよ……!」

 皿が完成する。

「記憶の焼きそばクラゲ和え ~コンビニ夜明け風~」

 審査員が口に入れた瞬間、静寂が走った。

「……あ……これ……泣ける……」

「妹の部屋で、こっそり食った……冷たい夜の味……」

「何も高級じゃない。何も特別じゃない……でも、“あの頃の自分”に……会えた……」

 審査は覆った。アラモンは黙して退場し、胃袋同盟の名は市場アロマで知られることになる。

「……料理ってのは、食べる側と作る側、両方の記憶が混じってこそ意味があるんだよな」

 タカヒロの言葉に、ミールがにっこりと笑った。

「うん。……今のは、ちょっとだけ、美味しかったよ」


 市場都市アロマの夜は、鮮やかに輝いていた。

胃袋ダンジョンの中にあるとは思えないほどの光と、香辛料の煙、そして仄かに漂う人々の笑い声。だが、タカヒロたち“胃袋同盟”がその光を背にしたとき、彼らの内側に灯っていたものは、もっと静かで、確かな熱を持っていた。

「……勝ったな」

 ピリピリトカゲが呟く。だがその顔には、いつもの毒舌ではない、どこか納得したような表情が浮かんでいた。

「偽物に勝った、ってだけさ。次は、本物の“魔物の味”を知ってる奴らが来る」

「それでも……今日は私、“料理した”って言ってもいいのかな」

 バルバラが小さく言う。呪いの味、それでも涙を浮かべて食べてくれる人がいるという事実が、彼女の胸に何かを残していた。

「君の料理、俺は好きだったよ。胃じゃなくて、心が動いたからな」

 レネウスがさらりと告げると、バルバラの耳まで赤くなった。

「ミール、お前はどうだった?」

「うん……」

 ミールはしばらく黙ってから、ポツリと続けた。

「私、自分が“食材”じゃなくて、“誰かの思い出”になれるかもしれないって、今日初めて思った」

 タカヒロは小さく笑った。

「だったら、これからもっと旨いもの、いっぱい作ろうぜ。記憶の中だけじゃない、“これからの味”をさ」

 その時、天井が――いや、胃壁が微かに震えた。市場全体が、ごくわずかに“収縮”するような圧。まるで、胃袋という巨大な生物が、彼らの一皿に“反応”したかのように。

「……これって……」

「次の階層への道が、開いたってことだな」

 ピリピリが前を見た。市場都市の奥、香辛料の塔の裏手に、小さな粘膜の裂け目が開いている。そこから、肉と炎と、未知の香りが漏れていた。

「行くか、“胃袋の奥”へ」

「うん。“味覚”を取り戻すために」

「“料理”の意味を、もう一度探しに――」

 そして、胃袋同盟は再び歩き出した。味覚が偽物に支配された世界に、ほんの一滴の“本物”を落とすように。料理とは何か。味とは、誰のものか。その問いに答えるための、次の一皿を求めて。


 胃袋ダンジョン第四層、通称“グラトン渓谷”。

 そこは胃の底部に位置する巨大な空洞であり、長い年月をかけて胃液に削られた岩壁が、まるで無数の歯のように並び立っていた。湿気と熱気が充満し、空気には鉄と血の匂いが混じっている。

地面はぬかるんでおり、ところどころに巨大な赤黒い肉塊が散らばっている。それはすべて“かつて狩られ、喰われた者”の成れの果てだった。

「……ここ、完全に“狩りの聖域”って感じだな」

 タカヒロが息を呑む。彼の足元で、ピリピリトカゲが警戒の唸りを上げた。

「気を抜くな。ここに入った瞬間、全員が“獲物”だと思え」

 ミールが怯えたようにタカヒロの袖を掴んだ。

「ここ……あたしの“親戚”がいっぱい死んだ場所……“究極食材”を探して、帰ってこなかったの……」

「……絶対に無駄死ににはさせない。俺たちの料理で、全部“意味”にしてやる」

 そして、一発目の銃声が響いた。

 乾いた爆音。腹の底を揺らすような圧。続いて唸り声と咆哮。姿を見せたのは巨大な、獣のような人のような異形。全身がウロコに覆われた喰人猟兵じきじんりょうへいと呼ばれる、グラトン渓谷の自警団だった。

「てめえら、初見だな? 食材か、それとも料理人か?」

 ピリピリがすかさず叫び返す。

「料理人だ!――食材を狩るために来た!」

「ならば見せてもらおうか、貴様の包丁の腕前をよォ!!」

 奴らが投げてきたのは、ひときわ巨大な“白霧のコケ肉”――霧を纏い、全身に毒胞子を抱えた幻の食材だ。

「いきなりコレ!?マジかよ!」

「殺るぞ、タカヒロ!この肉を仕留めた者こそ、“伝説のレシピ”への鍵を手にする!」

 そして、血と脂の飛び交う、命を賭けた食材戦争が始まった。


 爆音。煙。腐臭。そして、幻の食材“白霧のコケ肉”が吠えた。

 霧のような胞子が舞い上がる。吸い込めば幻覚を見るという――まさに“毒の芸術”。

「ミール、空気を吸うな!肺ごと毒られるぞ!」

「う、うん……!」

 ピリピリが舌で素早く胞子を舐め取り、火を吐いた。

「霧を焼き払え! スパイスごと焦がすんだよ!」

 タカヒロは急ぎ、バルバラに目配せする。

「お前の呪い、今だけ“有効”だ!味を濁せばコケ肉の自己再生を封じられる!」

「了解、あたしの料理、最悪な味に仕上げてやる!」

 その言葉とともに始まる即席調理戦。胞子を削ぎ、肉を叩き、猛毒の脂を“焦がし香”として再構成する。レネウスが隙を突いて肉塊を射止め、ミールは自らの爪先を変化させ、“酵素の味覚器”を追加。

「やれるぞ!このコケ肉、制御可能だ!」

――だがその時。

「お前ら、それじゃあ駄目だな」

 低く、どこか懐かしい声が飛んだ。霧の向こうから現れた男は、全身をコック服のようなボロ布で包み、背中に巨大な骨包丁を背負っていた。目は濁り、肌は煤けているが、どこか只者ではない“気”を纏っている。

「お前……誰だ?」

「俺か?昔、ちょっとばかり料理で世界救った男だ。名を――ゴルドン」

「ゴルドン!? “料理勇者”だと……!?」

 ピリピリが思わず後ずさる。ミールも口を開けたまま固まっていた。

「けどな、俺はもう引退した。食材は喰い尽くした。味覚なんざ、飽きちまった」

「じゃあなんで今ここに!?」

 タカヒロの叫びに、ゴルドンは黙って足元の肉塊に指を滑らせる。

「お前らの料理、久々に“腹が鳴った”。それだけだ」

 静かに包丁を構える。そして一閃。霧も毒も、脂も、ただの“旨味”に変わる。

「――これが、命を賭けた料理の本質だ。忘れんな、“食う”ってのは、“赦す”ことだ」

 ゴルドンが残した一切れの肉、それは“旨味の哲学”が詰まった“真のレシピ”だった。そして彼は、タカヒロの手に古びた紙片を押し付ける。

「続きは……お前が書け。“料理勇者”は、もうバトンタッチの時代だ」

 彼の背中が闇に溶けていく。タカヒロは震える手で、そのレシピを握り締めた。


 夜が来た。だが、グラトン渓谷に“静けさ”は存在しない。

 腹を空かせた者と、狩られる食材と、火花を散らす包丁の音だけが、岩と肉壁に反響し続ける。焚き火の前で、タカヒロはそっと古びたレシピを広げていた。羊皮紙に書かれていたのは、素材も調理法も記されていない、ただ一行の文字。

「心を込めろ。味は後からついてくる」

「……なんて、ザックリしたレシピだよ……」

 けれど、タカヒロの手は震えていなかった。むしろ、かつてないほど静かに、確かな温度で燃えていた。

「俺たちの料理は、まだ“未完成”だ。でも……それがいい。だって、俺たちは今、ちゃんと“食ってる”からな」

 ピリピリがにやりと笑う。

「ガキのくせに悟りやがって。まぁいい、お前の作る“味”が、案外悪くないってことは認めてやる」

 バルバラは焚き火の前に皿を置いた。

「今日のは、呪いの味じゃない。“希望”っぽい味がしたかもしれない」

 ミールは、ほんの少し自分の髪先を切って、それを小さな鍋に加えた。

「このレシピ、私も混ぜたい。……次の料理には、“未来”の味を入れたい」

 レネウスは煙草のような香辛草をくゆらせながら、呟いた。

「ゴルドンの残した味……それを超えたとき、きっとお前たちは“真の胃袋王”になる」

 焚き火の炎が揺れる。その先、胃袋ダンジョンの奥――最終階層の“王胃おうい”への道が、赤く脈動しながら開かれていた。

「さあ、いこう。最後の一皿を、喰らうために――」

 彼らは立ち上がる。

 料理人、毒舌トカゲ、変身する食材少女、呪われた魔女、そしてかつての泥棒料理人。

 それぞれの皿に、それぞれの“命”を盛りつけて――

 胃袋同盟、決戦へ向かう。


 胃袋王国、王宮最奥。

 王胃おういと呼ばれる聖域は、これまでのダンジョンとは異なる、圧倒的な静謐と威厳に満ちていた。天井はなく、空間そのものが脈動している。壁一面が、肉でも石でもない“意志”を持った何かで構成されている。音はなく、匂いもなく、ただ“喉の渇き”のような飢えだけが支配していた。

 中央にあるのは、巨大な調理台。その向かいに立つのは、王族の料理人たち――完食派と呼ばれる、感情も味覚も捨てた者たち。彼らは顔を覆面で隠し、同じ白衣に身を包み、無表情に包丁を振るっている。一切れのミスもない、完璧な所作。無駄も、余計な演出もない。あるのは“最適化された味”だけ。

「彼らの料理には、“心”がない。……だが、だからこそ完璧に美味い」

 審査役の司祭が言った。

「味覚の揺らぎ、感情のノイズ、調理者の迷い……すべてが排除されている。まさに、究極の料理だ」

 タカヒロたちはその言葉を聞いても、立ち止まらなかった。

「完璧ってのはな、“間違えたくない”奴が作るもんだ。……でも、俺たちの料理は“間違い”から始まってる。呪いも、毒も、失敗も、笑いも……それ全部、皿に乗せてんだよ!」

 対戦テーマは、「笑顔」。

 笑わせる料理――それは味覚の極北。計算で生み出せない感情。

「やるぞ。今までのすべてを乗せる、“最終一皿”だ!」


 食材はすべて胃袋ダンジョンから持ち出したもの。


・笑うと爆発する“腹筋トリュフ”

・泣きながら育つ“情動キャベツ”

・ミールの髪から採れた“未来の旨味繊維”

・バルバラの呪いで仕込んだ“焦げすれすれの後悔ソース”


 混ぜれば地獄。だが整えれば、奇跡の一口になる。タカヒロの手が止まらない。

 焼き、蒸し、漬け、混ぜ、煮込み、冷まし、そして仕上げる。

 一皿の名は――「胃袋ごはん〜全部入り、愛情付き〜」


 料理を口にした瞬間、王族の表情が崩れた。

「……笑って……しまった……!」

「これは……なんだ、この……くだらなさ……!!」

「味など……どうでもよくなる……この馬鹿馬鹿しさが……たまらない……!」

 そして、嗤いとともに、王族たちの仮面が剥がれ、感情が溢れ出す。

「我々は……間違っていたのか……?」

「否、間違っていたのではない。ただ、“思い出せなかった”だけだ」

 胃袋王国の玉座が、空いた。


 王宮は静かだった。

 嗤いが過ぎ去り、皿が空になり、胃袋ダンジョンそのものが深い呼吸のような脈動を止めた瞬間。玉座に立つ司祭が、正式に告げた。

「料理王位決定戦――勝者、異邦人タカヒロ。胃袋王国の次期国王である」

 その言葉が響いた瞬間、焚き火の音のように小さく、だが確かな“ざわめき”が王宮を包んだ。ピリピリトカゲが目を細める。

「……王様、か。お前が?」

「俺が……王様?」

 タカヒロは玉座を見た。

 美しい椅子。豪奢な布。だがそこに座る自分の姿が、どうしても想像できなかった。

「すまん、無理だわ」

 彼はあっさりと手を上げた。

「俺は厨房に戻る。あの焚き火の前で、誰かのために“今日の飯”を作るほうが性に合ってる」

「辞退……ですか?」

「うん。代わりに、胃袋庁を作っていい?胃袋ダンジョンの料理を、世界に届ける組織」

「……面白い。前例はないが、前例に倣っていては料理は生まれない。認めよう」

 王族たちが頭を下げる。かつて彼らが捨てた“感情”を、料理によって取り戻した異邦人への、初めての敬意だった。


 それから数日後――

 胃袋庁長官・タカヒロのもと、胃袋同盟の仲間たちはそれぞれの厨房を持ち、それぞれの皿を創りはじめていた。バルバラの料理は、今もまだ不味いが、時々「クセになる」と言われ始めた。ミールの髪からは“未来の味”が育ち、新たな調味料として輸出されている。ピリピリは火力規制に引っかかり、三度も爆破事件を起こして出入り禁止を食らったが、彼の味覚審査は国家標準になった。レネウスはドキュメンタリー風の料理小説を執筆し、ベストセラー作家になった。

 そしてタカヒロは、今日も厨房に立っている。

「……さて、今日の昼飯は、“胃袋ごはん”の改良版といこうか」

 焚き火の前で、仲間たちの笑い声が響く。この異世界で、彼が“王”になることはなかった。だが彼は確かに、世界を“味”で変えたのだ。


料理で戦い、料理で救い、料理で笑った――

そんな、ちょっと馬鹿馬鹿しくて、すごく美味しい冒険だった。

■作者コメント

食べること、それは命を受け取ること。料理すること、それは心を届けること。失敗しても、笑われても、美味しい一皿はきっと誰かの人生を変える。さあ、あなたもこの物語を味わい尽くしてください。

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