私の人生の花束
私の人生を花束にしようと、ある日思った。
けれどそうすると、季節の問題がある。
生花では私の人生の花束を作れない。
「ああ、造花でいいか――」
自嘲する。
私には生花よりもお似合いだ。
その日から、私は造花集めをはじめた。
季節によって、店で売っている造花が違うこともある。
ないものは作ろう。
今まで一度も造花なんて作ったこともないが今の世の中は情報にあふれている。
ド素人でも、目の前の箱で検索をすればどうにでもなるだろう。
私は器用ではないが不器用でもない。
季節ごとに店を回り、造花を集める。
売っていない花は自分で造花を作る。
一年ほど経てば私の人生の花束が完成した。
ヒガンバナ。
アセビ。
カランコエ。
白薔薇。
オンシジューム。
アングレカム。
シオン。
オジギソウ。
カンザクラ。
ネジバナ。
ヤエザクラ。
ルピナス。
エーデルワイス。
インパチェンス。
オオデマリ。
オドントグロッサム。
ハマユウ。
ブドウ。
ネリネ。
コルチカム。
トウワタ。
ブルーベル。
ああ、これが私の人生だ。
一年かけて集め、作った花束を抱き寄せる。
一度強く抱き締めたらあとは手放すだけ。
思いっきり焼却炉に叩きつけるように投げ捨てたいが――。
悲しいかな。
現代はそれが許されない。
私は床に置いたゴミ袋に造花の花束を叩きつけた。
これは一年かけた私のただの八つ当たりだ。
なんて時間と金の無駄!
私は腹を抱えて馬鹿のように大いに笑った。