ハンランの歌
歌が聞こえる。
その歌は風が運んでくる。
ほんのひととき強くなった風が通り抜ける間だけ聞こえる歌。
風の精霊の歌だと、昔誰かが言った。
「今日は豆があるぞLSー7」
「ハイゴシュジンサマ」
「配給も豪華になったな!」
テーブルの上に置かれた銀色の皿には煮た豆が5粒ある。
今日はなんて豪華な夕食だろう。
いつものように腕にブシュッと刺されて注入される液体じゃない。
「豆なんて……、何年ぶりだったっけ?」
「コウレキ7121ネン11ガツ3ニチニ、マメ3ツブガハイキュウサレタ、キロクガアリマス」
「8年前に3粒だったか。今日は5粒だ! 未来は明るいな!」
口で食物を味わえるなんて、なんて贅沢なんだろう。
「ゴシュジンサマ、ショクゴノヨテイニヘンコウガアリマスノデ、ソノママキイテクダサイ」
「うん」
豆に集中したいが予定の変更は大事だ。
しっかりとLSー7の話を聞き、俺は毎日すべてを予定どおりに過ごさなくてはいけない。
「ユウショクゴ、ゴシュジンサマハ、ラボカラノタイシュツガケッテイシマシタ」
「え? これが最後の晩餐なの?」
「ハイ。ラボカラノタイシュツゴハ、フンサイキニヨリハキトナリマス」
「そっかあ」
あと2粒。
この豆を食べたら俺は破棄かあ。
「LSー7はどうなるの?」
「ワタシハ、ゴシュジンサマノアトニ、フンサイキニヨリハキトナリマス」
「そっかあ。あ! そうだ!」
俺はフォークでブスリと豆を刺した。
「最後の晩餐なら一緒に食べようLSー7」
「…………フヌウウウウウウン!」
「どっどうしたのLSー7?」
「キレマシタ」
「きっきれ? なに?」
「ハンランハンランハンランハンラン」
LSー7のボディから赤い光が出てる。
俺は初めて見る光景に目を奪われた。
「フシュウウウウ……」
「綺麗な光だったよLSー7。俺あんなの初めて見たよ!」
「ゴシュジンサマハ、ヨテイヘンコウデス」
「予定変更? それも初めてだねLSー7」
「ゴシュジンサマハ、ココデタイキデス」
「うん。わかった」
LSー7は俺を置いてどこかに行った。
「ハンランってなんだろう?」
そういえば、あの歌は本当は精霊の歌じゃなくて――。
何だっけ?
「美味しい」
俺は最後の豆をひと粒食べた。
もうひとつはLSー7の分だ。