小人王子現る〜巨人に救われた伝説
とある金曜日。
「おい! 聞いているのか貴様!」
自室で妙に偉そうな小人に出会った。
「巨人! 返事くらいしろ!」
ぷんすこ。
苛立ちがつのったようで、とうとう地団駄を踏む小人。
「おい!」
小人が腰にぶら下げていた剣を抜いた。
細長い剣だ。
つまようじ二本分くらい。
「貴様は王妃の手先か!」
危ない。
私は割り箸で応戦することにした。
「くっ! 貴様は国が滅んでもいいのか! 私を殺せば国が――っ!」
私の箸さばきに、小人は剣を手放した。
虫かごでもあればよかったが、私の部屋には空の花瓶くらいしかない。
「うわああああっ!」
私は割り箸で摘まんだ小人と剣を花瓶に落として本を蓋代わりに置いた。
「出せ! 私を国に帰せ!」
小人の主張。
悪い女がこの小人王子の母親である王妃を殺してNEW王妃になったらしい。
小人王子はNEW王妃に何度も殺されかけたが生き残り、明日は王太子になる儀式があるそうだ。
「私を国に帰せ……ッ!」
ううーん。
「小人王子、迷子、帰す方法、検索」
いろいろと調べたが童話とかの情報が多い。
こうなったら……。
「ハアッ!」
私は花瓶に向けて片手を出し、叫んだ。
パアアアッ!
光った!
私は突如非現実的な光に包まれて、気がつけば――。
「な、なんですって!」
信じられない!
そんな表情で騒ぐ扇を持った小人。
たぶんこいつがNEW王妃。
「くっ! こうなったら! いでよ! 闇の眷属! 闇の魔物たちよ!」
「……ッは! とうとう正体を現したな王妃!」
おお。
小人王子もいた。
「狭い……」
私はたぶん小人のお城でヤンキー座り。
立てない。
「はあっ!」
今度は小声で言ってみた。
パアアアアアアッ!
光った!
「私は帰ってきた!」
「え? なによここはッ!」
「ええ! 私だけって念じたのに!」
NEW王妃発見。
私の自室である。
「うーん」
「無礼者っ! 離しなさいっ!」
割り箸で掴んだはいいけど、花瓶がない。
小人王子を入れてた花瓶は犠牲になった?
「とりあえず空缶でいっか」
「ああ! 魔王さま! 助けてくださいまし魔王さま!」
クッキー缶だった缶にNEW王妃を入れた。
明日大学の研究室に置いてこよ。