むしゃくしゃして以下略。反省はしていませんわ。
今気づいたわ。
わたくしは魔女だったのね。
「ファイヤーッ!」
中指を立てて唱えれば、火炎放射。
ごおおおおっと屋敷が燃える。
「ひっひぃ!?」
「水ッ! 誰か水をッ!」
きゃあきゃあぎゃあぎゃあ。
わたくしがファイヤーしている屋敷の中から、懐かしい声がする。
「わたくしを追い出すからこうなるのだわ」
ふんッとわたくしは鼻を鳴らした。
着の身着のまま追い出されて、中指を立てるように「ファイヤー」と言ってみたらコレだ。
わたくし、天に愛され過ぎているのかもしれない。
父親には愛されなかったけれど――。
わたくしが理不尽な理由で屋敷を追い出されたのは、ほんの十五分前のこと。
バタンッ! とわざと大きな音を響かせて扉を閉めたのは父親に命令された家令たち。
荷物のようにその扉から放り出されたわたくしが振り返えると、バタンッ!
とても大きな音でした。
わたくしへの拒絶。
それを音で表現したかのように――。
十五分前のわたくしは「ならば」と、王都で話題の新製品。なんでも強力くっつくんですアルッファゼリー状を扉に使いました。
拒絶には拒絶を。
わたくしは外から屋敷をくるりとまわり、窓や裏口など一階のすべてに、なんでも強力くっつくんですアルッファゼリー状を使いました。
そして最後に中指を立てて「ファイヤー」と、言ってみたのです。
「きゃあああああッ! 早く消してよッ!」
わたくしの義理姉の声がします。
義理姉は父親とその愛人の娘です。
わたくしよりも愛人との子が年上なのです。
「窓がッ窓が開かないッ!」
ちなみにわたくしはまだファイヤー中です。
中指だけではなく、全部の指からファイヤーしています。
なんでも強力くっつくんですアルッファゼリー状を途中で使い切り、拒絶返し出来なかった窓にファイヤーしたのです。
開く窓には火炎放射。
他の窓や扉は開かない。
きゃあきゃあぎゃあぎゃあ。
バリーン! と窓が割れる音がします。
誰かが窓を割っていますね。
「えいさっほらさっ」
愛国心もないわたくしはドレスの裾を持ち上げて、愛馬の元に走ります。
放火犯は火あぶり。
つまりわたくしはこの国にいられません。
すたこらさっさと愛馬と逃げます。
この国は魔女というだけでも、火あぶりなものですから――。




