“運”がすべて
俺は今まで、どれだけ敗北してきただろう。
負けるたびに、俺は倒れた。
頭を掻きむしり、奇声をあげて泣いた。
運がなかった。
俺が敗北をすると、みんながそう言った。
今回は運がなかったですね。
今日は運がなかったんですよ。
次、頑張りましょう。
諦めちゃ駄目ですよ。
次は完全勝利ですって。
俺に運がないことが今回の敗北の理由だとみんなが言う。
本当に、そうなのか?
運。
それだけ?
運気上げていきましょう!
祈りも大切ですよ!
運がよければ、スパッと1回で勝てますよ。
俺が敗北した理由は“運”だけ……?
「ハハッ。ハハハハハ……ッ!」
いくら腕を鍛えても“運”で負ける。
俺は何度も何度も、運がなかったから、敗北してきた、と――。
「くそ……ッ!」
運。
運。
そんなもの、どうしろって言うんだ?
どう頑張ればいい?
どう努力すればいい?
そうなげく俺に、見かねたような目をした友人が言う。
「オレは、自室に祭壇を作ってるぜ」
「祭壇……?」
「家でも祈ってるんだ。毎日、毎日、祈ってる。勝負の日には供え物をして、強く勝利を願ってる」
「そんなこと……」
「オレは前回の勝負、勝ったぜ」
目をギラつかせて友人は言った。
「完全勝利だっただろ?」
「それは、そう……」
友人は俺とは違い、勝利を重ねている。
短時間で勝利した友人には、たいした傷もなかった。
俺は惨敗で、今後の生活も危ぶまれるほどだったのに――。
友人は目を閉じてお茶をひとくち飲むと、俺に言った。
「家に祭壇なんて、ってさ。オレだって昔は思ってたよ。そんなに熱心に祈らなくても、ってさ」
「ああ」
「供え物を毎回用意してさ、勝負の日に死に物狂いで祈る。家に祭壇って、ちょっと異常だとも思ってた」
「ああ」
「そんなことをしなくても、オレは勝てるって思ってた」
俺も今まさにそう思ってる。
自分だけの力で勝ちたい、と――。
「だけどさ、“運”だろ」
「……っ」
「腕を鍛えても、意味はないぜ。結局さ、大事なのは“運”なんだ。オレは勝つために祭壇に祈る。次も祭壇に供え物をして、オレは勝つ」
力強い目をした友人は勝者だった。
俺、は……。
悩んだが、俺も祭壇を作った。
息を吐いて、戦場に向かう。
「さて、ガチャるか」




