表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
16/24

ウサ男とカメ子


 つい最近、愚痴っているばかりの若いうさぎがおりました。


「ったくよー。このあいだまで『テスト100点だったの! ママのウサ男くん天才!』とか言ってたくせによー」


 若いうさぎ、ウサ男は公園のベンチの上で仰向けになり愚痴っておりました。


「このあいだまで『ウサ男はパパよりも優秀じゃないか』とか言ってたくせによー」


 やってられねえよ、ウサ男はぶつぶつ呟きます。


「1歳になったとたん家から追い出しやがってよおー」


 ぐすん、とウサ男は鼻を鳴らしました。

 うさぎは1歳で成体なのです。

 いつまでも親元にはいられないのです。


「なんだよ部長のやつ。オレのほうが頑張って企画考えたのに、ゴマすりばっかのウサ二郎ばっかり褒めやがってよお」


 出した企画が採用されたのもウサ二郎でした。


「あんな雑な企画よりオレの企画のほうが……」


 ウサ男の目には涙が溜まっていました。


「ウサ二郎なんか、いつも赤点ギリギリだった馬鹿なのによう……企画の内容を見やがれってんだ……見りゃわかるだろうがよお……内容よりゴマすり野郎なのおかしいだろうがよ」


 ウサ男はこれまで成績優秀で褒められて生きてました。

 けれど、社会に出たら褒められて認められるのは要領がいいうさぎです。

 会社の企画に採点はありません。

 上司が気に入るか、それだけのようにウサ男には見えました。

 3兄弟の次男で要領がいいウサ二郎は期待の若うさぎ。

 ウサ男は「もうちょっと頑張れよ」といつも言われる若うさぎ。

 入社から3ヶ月。同期の2匹にはあきらかに差がついてました。


「オレが出した企画本当に読んだのかよ? ウサ二郎の企画選ぶなんて部長も馬鹿だろ」

「ウサ男くん? やっぱりウサ男くんだ! こんなところでどうしたの?」

「カメ子……」


 同級生だったカメ子がそこにいました。


「なっなんでもねえよっ」

「そう? ならよかった。はい」

「何だよこれ」

「わたしとウサ二郎くん結婚するんだ」


 結婚式の招待状だよ、カメ子は言いました。


「……なんでウサ二郎と?」

「え? だってウサ二郎くん、お手紙もデートもマメだし」

「はっ。結局コミュ力かよ」

「……それはそうでしょ」


 カメ子は去って行きました。

 その後「ウサ男くんますます感じ悪くなってたよ」とカメ子が言うとウサ二郎は笑うだけでした。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ