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えー、ここがあの有名な呪われた家です。危険なので中には入れません


 あたしたちの頭の上を通り過ぎた花瓶が家具にぶつかった。

 ガシャーンッ! と大きな音が耳に響く。

 あたしたちに花瓶を投げたのは母親だった。

 あたしは弟を抱き締めて、自分の背中を母親に向ける。


「あ――っ!」

「やっ! ねえねぇッ!」


 グイッと母親があたしの髪を鷲掴む。

 弟は母親に持ち上げられるあたしの服を幼い手で必死に掴む。


「あぐっ!」


 ブチブチと何本も髪の毛が抜ける。

 母親は気にしない。

 あたしを痛めつけて自分がすっきりしたいだけだから。

 母親は外でまた嫌なことがあったのだろう。

 外でいいことがあれば、食べ物を持って帰って来るが今日はそうじゃなかった日だった。


「ねえね! ねえねぇー……っ!」

「うるっさいわねッ!」

「やめてええええっ!」

「あ、ぅ」


 母親が足で幼い弟を蹴り上げる。

 弟は、ドンッと壁に叩きつけられて、割れた花瓶の上にドサリと落ちた。


「いやっ! いやああああっ! レオ! レオ! 離してっ! ッ!?」

「うるさいって言ってるでしょッ!」

「あッがッ!」


 何度も何度も体をテーブルの角や壁に叩きつけられて、床にバンッと強く落とされる。


「あ、ぁ……」


 ちょうど、目を開けて見えた先に弟がぐったりと血を流して倒れている姿が見えた。


「あんたさえ出来なければ――ッ!」

「うッ……!」


 あたしが弟に伸ばす手は届かない。

 母親の靴に踏みつけられてるあたしの手も小さいと思った。

 小さくて、短いから、目を閉じてる弟にあたしの手は届かない。


「はあっはあっ」


 母親は何度もあたしを強く踏みつけて、疲れたのか野良犬のように息をしている。

 ひゅ、ひゅぐっと、息が吸えないあたしを見ている。


「可愛くない子」


 それが最後に聞いた母親の声だった。


「ねえね。ねえね」

「……レオ?」

「ねえねっ!」


 弟が、あたしに抱きついてくる。

 あたしはゆっくりと起き上がった。


「ここは……?」

「ちらない」


 まだ舌足らずな弟も知らないらしい。

 家じゃないのは確かだ。


「ねえね」

「うん?」

「今こそ復讐の時だよ」

「――……レ、レオ?」


 急に舌足らずじゃなくなった幼い弟のレオ。


「復讐しようよ、ねえね」


 ああ、弟は母似だと思った。


「……そう、だね」


 そして、きっとあたしも――。


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