転生マメー
気づけば僕は豆になっていた。
意味がわからない。
だが、僕は豆だ。
僕を包んでいたサヤから今地面に落ちた。
地面に落ちた衝撃で、痛っと思ったときに理解した。
僕は豆に生まれ変わった、と――。
来世があるなら鳥になりたい。
そんなことを前世では考えていたと思う。
空を見れば僕を包んでいたサヤを突っついた鳥が飛んでいる。
豆の僕に目はないのに、僕はどうやって今空を見ているんだろう?
わからない。何ひとつわからない。
目も鼻も口も、手も足もない。脳みそだって豆にはないだろう?
僕は今、どうやって考えている?
まるで宇宙のはじまりや最初に納豆を食べた人間、卵が先かにわとりが先か――そんなことを考えている気分だ。
僕は一体何なんだ?
豆だ。豆でしかない。
植物にも感情があると、嘘か本当かわからない話が前世にあったと思う。
僕はそれなのか?
植物にも感情がある話が本当だとして、こんなに植物は考えられるものなのか?
植物に音楽を聴かせたり、毎日話しかけると綺麗な花が咲くとか、そんな話だったはずなのに……。
僕以外の植物がここまで考えていたとするなら、僕は前世で観葉植物を買ったことを後悔するしかない。
ハッと、今気づいた。
僕は地面に落ちて、痛みを感じた。
深く考えたくない……。
そう思うほど考えてしまう。
生野菜サラダ。切り花。除草剤etc……。
これからどうしよう。
こんな手も足も出ない、涙も声も出ない、豆の僕に何が出来る。
僕に出来るのは思考だけか?
誰か僕を土に埋めてくれ。
このままでは芽を出せる気がしない。
焦ってふんっ、ふんっと体を揺すろうとしたが、微動だにしないんだ。
怖い。豆の将来が暗くて、怖くてつらい。僕が成長出来る気配がない。
空は晴天。雨も降りそうにない。
僕はこれからどうしたら……?
「カアッカアー」
カラスだ。カラスが鳴いている。
僕はこれからの未来をなんとなく悟った。
次はせめて、手や足が出せるといい。
豆はカラスに食べられたら痛いのか?
思いもしなかった。
考えたこともなかった。
知りたく、なかった……。