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俺の元カノ! こいつも死んでる!


 ある晴れた昼下がり。


「うおおおおおおっ!」


 昔別れた女のゾンビに出会った。


「火いいいいいいっ!」


 俺は聖魔法なんて使えない。

 だったら浄化の炎だ。

 炎。炎はすべて解決する。

 焼き払えッ! というやつだ。

 だがしかし、今は晴れた昼下がりであった。

 たいまつなんて持ってない。

 俺は火魔法なんて使えない。


「だいたい昼下がりにゾンビとか意味わかんねえッ! 夜の墓場にいろよ! お前のそういうところが嫌で別れたんだよ! いっつもいっつもこっちの都合もおかまいなしでさあ!」

「キッキシャアアアアアッッ!!」

「うわっ! 何だよその長い爪! 切れよ! 切ってから来いよ! お前っていっつもそうッッ! 剣も包丁も爪が長いから無理じゃねえんだよ! そういうところも俺マジで無理だった!」

「ギャシャアアアアアッッ!」

「怒鳴ればいいと思ってんの!? お前っていっつもそうッッ! 無理無理絶対無理! だから別れたんだよッ!」


 草原をひたすら駆ける――駆けるッ!

 こんなところで昔の女に殺されてたまるか!


「あれ? リューくん?」

「おっ、本当だ。リューだ」

「リューさーん! 今度は何番目の元カノに追われてるんですかー!?」


 道の先に知り合いのパーティがいた!

 魔法使いと剣士と神官のパーティだ!


「三番目えええええっ! 助けて焼き払って! 滅してええッ!」

「ええーまたー? もうやだよー!」

「ゾンビはちょっとなあ」

「腐肉の欠片とか投げ飛ばして来ますしねえ」


 見捨てる気まんまんだ。

 まあ、確かに、こんな昼間から現れるようなゾンビは臭い液体も撒き散らしたりする。

 生前に性格が悪いヤツがこういう迷惑な感じのゾンビになるんだ。

 昼間っから現れる時点でもう迷惑。非常識。


「そんなこと言わないで! みんな愛してるからあ!」

「アンギャラアアアアアッ!!」

「え? は?」

「あいつ! あたしらを巻き込む気だ!」

「めちゃくちゃこっち見てますよあの元カノゾンビ! 早く逃げましょう!」

「絶対逃さねえええええ! 愛してるからあああ!」

「フギャシャアアアアアアッッッ!」


 そんな女と付き合ってた俺も迷惑で非常識。

 そんな冒険者とゾンビのよくある昼下がり。

 俺の死んだ元カノはだいたいゾンビ。

 

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