密室なんてぶっ壊せ!
後ろで、ガチャン、と鍵がかけられた音がした。心臓がドクンと跳ねる。
「これは…」
「なんと!閉じ込められたようだな!」
彼が隣で腕を組み、大きな声を出す。私は少し不安になった。
部屋を見渡すと、高そうな調度品がたくさんあった。部屋の真ん中に、濃い茶色の二人がけの皮張りのソファがあり、それぞれ赤と青と黄色の刺繍があしらってあるクッションが3つ置いてある。その前にはテーブルがあり、入れたての紅茶が湯気を立てていた。
「これは、飲めるのか?」
彼が紅茶に手をつけようとするので、
「それはやめておこう」と止めた。
私はキョロキョロしながらつぶやいた。
「鍵、鍵を探さないと…」
「鍵を探すんだな?!よし、任せろ!」
彼は四つん這いになり、地面をじっくりと探し始めた。私はそれを横目に見ながら、テーブルの上の紙や壁をつぶさに見て手がかりを探す。
「んー…」
しばらく時間が経ってから、私がソファに腰掛け、頭をコツコツとペンで叩いていると、まだ四つん這いで部屋中を探していた彼が、顔をあげた。
「どうした?」
その顔がキョトンとしていてとても可愛い。思わずふわふわの頭を撫で回した。
「何をしているんだ!」
「あはは、ごめんごめん!」
少しむくれる彼に軽く謝った。
「いや、さ、もしかして、鍵じゃないのかな、って思って。」
「どういうことだ?」
彼が首をかしげる。
「ドアから出るの。鍵じゃないのかな。」
私はふと腕時計を見る。
「ああもう!時間がない!どうしよう!」
私が頭を抱えるようにして髪の毛をぐしゃぐしゃとしていると、彼が不思議そうに言葉を発した。
「この部屋から出たいんだな?それなら簡単だぞ。」
そして彼が立ち上がる。
「あ、ちょっと、待っ」
私の声かけもむなしく、彼はドアに体当たりする。ドアは蝶番から外れて、バターンと大きな音を立てた。
「もーう!アメフト部主将のアンタがそんなことしたらドア外れるに決まってるでしょうがー!頭を使って脱出するんだよー!お金払ったでしょー!」
やっぱり脳筋のこいつ連れてくるんじゃなかったー!と心で叫びまくっていたとき、彼はしゅん、と悲しそうな顔をした。
「…君が困っていたから、つい。ごめん。」
きゅん。
不覚にも私の心は音を立てた。
(もう。これだから。)
こんなにも愛されているって、嬉しい。
そのあと脱出ゲーム運営の方にみっちり怒られて、私ももう一度キレまくったのは、また別の話。




