ふたりの決意
大変お待たせしました。
よろしくお願いします。
「ハル、そろそろ寝よう」
「うん」
フィル君は私が待っているマグカップを受け取るとキッチンの洗い場に持って行き、洗剤で洗ってからマグカップを棚に戻す。
「…ーーッ!」
フィル君が痛みに堪えるように左前腕を右手を労るように撫でる。
「左腕どうしたの?」
「…ーいえ、大丈、夫です」
「辛そうだよ」
「大丈夫」
「でも」
「今日はもう休みましょう」
「大丈夫」そう言って何かを誤魔化そうとするフィル君に気付いていたけれど、頑なに何かを隠そうとするフィル君によってこれ以上の追求は出来ずに部屋に促されてしまった。
「ハル、おやすみ。また明日」
「おやすみなさい」
フィル君が私の部屋のドアを閉めようとした時、フィル君の「左前腕」から不吉などす黒い何かを感じで私は咄嗟にフィル君の「左前腕」を掴む。
「ハル?」
「左腕から“瘴気”とは違う嫌な感じがして」
「……………」
「今は何も感じない?」
「……………」
「フィル君?」
「いえ、おやすみ」
今度こそ、そう告げると部屋のドアが静かに閉まる。
「フィル君、まだ何か隠してるんだね」
私の呟きは誰にも届かなかった。
ーーーー
ガチャ、バタンッと閉めたドアに背をもたれ掛かるようにずるずると座り込む。
「…はぁ」
僕は短く息を吐き出すと腕まくりをして左前腕の状況を確認する。
そこには千年前ある男につけられた向かい側から強く掴まれた手形の痣がある。
「……やはりイグニーアから受け継いだか」
フィルシアールとして生きて15年目で発症し始めたか、この死の呪い。
「僕が最後のチャンスだ。
…ー今度こそ間に合わせないと」
僕は自身の両手を切なく苦しそうに見つめてから顔を覆った。
「僕が死んでも」
ーーーー
まだ誰も寝静まっている時刻。
私はまだ眠っているフィル君をテントに残して【闇ギルド商会】の建物の中にある一室に訪れていた。
…ーコンコン。
「ティティ起きてる?」
「ハル、どう…したの?」
ティティは開けたドアの縦枠に寄りかかりながら眠そうに眼を片手で擦っている。
ポニーテールに束ねてる髪はおろされて、日本の浴衣に似た乳白色の薄いネグリジェに纏わり付いている。
「こんな早くにごめんね。
お願いがあるの」
「…お願い?」
「これを届けて欲しいの」
私はティティに1通の手紙を差し出した。
「フィル君にバレないように」
ティティは私が持っている手紙の差し出し名を見つめて、
「…分かった」
ティティは手紙を受け取るとボンっと白鳩が出現した。
白鳩は小型のリュックを背負っていた。そのリュックに手紙を仕舞う。
「決め…たの?」
「うん、決めたよ。
魔王を倒して全てを終わらせるって」
「いい…の?
ボクが…協力すれば…隠れ…暮らす…ことも…出来る…よ?」
ティティは私の決意を探るように見つめる。
私はふるふると頭を横に振って、
「隠れ暮らしても私はこの“瘴気”を無視できない。
“瘴気“は魔物を産み出す。魔物は人間を襲って誰かの大切な人間の命を奪ってしまう。
【魔王】の封印が解かれた現在、千年前以上に被害が拡大していく、被害を終わらせられるのは”聖女“だけ」
私は胸元を両手で強く握る。
「“聖女”はそんな悲劇を抑止して終わらせることが出来る唯一の存在そのことから逃げたくはないの」
私はティティの両手をそっと優しく握りしめる。
「…それに」
「それに?」
「これが最後のチャンス…の、ような気がする」
「…最後の…チャンス?」
「うん。現在を逃したら、もう2度と”聖女“は召喚出来ないと思うの」
「出来…ない?どう…して?」
「それは分からない。でもそう感じるの」
私の小声が部屋に響いた。
面白かったら嬉しいし、創作の励みにもなりますのでブクマと評価をよろしくお願いします。




