表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

7/48

7.仮住まいの建築

 難民達が暮らす名もなき集落は、建物も必要最小限の数しか設けられていない。


 ()()()()同然の住居がいくつかと、ついさっきまで空っぽ同然だった倉庫がいくつか。


 しかも倉庫のうち何ヶ所かは壊れたまま遺棄されている有様だ。


 あまりにも収穫が少なすぎて、使えなくなった倉庫を放置していても不都合がなかったのだろう。


 そこに大量の収穫が押し寄せてきたものだから、無事だった倉庫が満杯になっただけでなく、住居の空きスペースまでも利用して収穫を詰め込んでいる。


「これは……寝泊まりできる場所がないのでは?」


 ジャネットは何ヶ所かの住居を見て回り、自分達が使えそうなスペースがないことに気がついたようだった。


「……野宿も経験がないわけではないですが……寒い季節ではありませんし……」

「その必要はないさ。寝心地の良さまでは保証できないけど、ひとまず建物くらいなら今すぐ用意できる。即席でも、野宿よりはマシだろうさ」

「はぁ……そう仰るのでしたら、お任せしますけれど」


 アディスは不思議そうにするジャネットを連れて集落を後にし、近くの丘の麓へ向かっていった。


「ここから少し()()()としよう」

「借りる? 何をです?」

「もちろん、家の材料を」


 片手を丘に向けて魔力を放つ。


 すると、丘全体が激しく震え上がり、草に覆われた表面を突き破って、岩の塊が幾つも地表に姿を現した。


 引きずり出された岩の塊は、アディスの指の動きに従って組み合わさり、数体の岩製のゴーレムを形成していった。


「なぁっ……! こ、これはゴーレムではないですか!」

「家の材料だぞ? おっ、ついでにあっちの木も貰っていこう」


 アディスはゴーレムに手振りで指示を出し、ちょうど丘の近くに生えていた木を引っこ抜かせると、そのまま集落の方へと歩かせていった。


 ゴーレムの一群は畑を踏まないよう注意深く道に沿って歩き、集落の外れの開けた場所で停止する。


 そして後ろをついてきたアディスが改めて手を振ると、ゴーレム達が力比べをするかのように取っ組み合い、持ってきた木をメキメキと音を立てながら押し潰していく。


 この世のものとは思えない光景に、集落の住人達は物陰に隠れながら呆然と視線を送っている。


「本当は自然乾燥させた木材を使うのがいいんだが、もう遅いからその辺りも魔法で省略させておくか」

「あ、あの、これは一体?」

「何かを建築するときに大変なのは『資材の運搬』だ。要塞みたいに大規模な場合は特にな。その辺の指揮も、地の四天王である俺の仕事だったんだが……」


 アディスはまるで楽団を指揮するかのように手を動かし、それに連動して、ゴーレム達が轟音と共に融合と合体を続けていく。


「あるとき気が付いたんだ。建築資材に自力で移動させれば楽だなって」

「……あああっ! そういうことですか!」


 ようやくアディスの意図に気付いたジャネットが、大声で驚きながらゴーレム()()()()()へと視線を戻す。


 そこにはもはやゴーレムの原型などなく、石材をメインにして木材の補強を加えた、大雑把なデザインの石造りの家が鎮座していた。


「しかも実際に試してみたら、別の荷物をついでに運ばせられるから、本当に便利だったんだよな」

「信じられません……まさかそんな方法が……いえ、魔法を使わない我々には最初から無理なんですけれど……」

「急ごしらえだから見た目は悪いし、家具なんかも揃ってないんだけど、なかなかのものだろ? そういうのは明日以降に仕上げていけばいいんだからな」


 少しばかり自慢げなアディスに微笑みかけられ、ジャネットはこくこくと頷くことしかできなかった。

 読んでいただきありがとうございます。


 少しでも『面白かった』『続きが気になる』と思われましたら、


 ブックマークや広告下の【☆☆☆☆☆】の☆を★にして応援頂けると今後の励みになります。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【宣伝】
シリーズ累計20万部突破!
作者の別作品「【修復】スキルが万能チート化したので、武器屋でも開こうかと思います」は書籍第5巻、コミック第2巻まで好評発売中です!
https://ncode.syosetu.com/n3353fc/
書籍 コミック
― 新着の感想 ―
[良い点] なるほど、戦略的に大事な逸材でしたね・・・・
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ