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新たな生活

 移住者がやって来てからというもの、俺は忙しい毎日を送っていた。

 元々の住民に紹介したり、仕事を与えたり、必要だと言われた物を作ったり、まあ色々だ。

 それと、教会の心配に関してもラクサス神父とイブー牧師で話し合ったようで、それぞれの教会を建てて欲しいと言われた。


「一つの村に一つの宗教、というのもおかしな話ですからね」

「その通りです。個人が個人で崇拝する宗教を選ぶ、選べるべきですから」


 二人の言葉はブレイレッジにふさわしいものだった。

 人族と魔族が暮らす村で、どちらか一方の宗教だけが根付くはずもない。

 それに、これから先もきっと移住者は増えるだろうし、宗教も二つとは言わずもっとあってもいいだろうな。


「……とりあえず、教会を建てるとするか」


 俺が今取り組んでいるのは、オールズ神を崇拝する教会だ。

 ラクサス神父が崇拝するオールズ教であり、すでに廃れたとされる宗教。

 全ての民が平等であり、優劣はあれど虐げる事なかれ、互いが互いを尊重し合うべき、と説いている。

 オールズ教が根づいていたのは数百年前とされている。

 今ではRですら虐げる者がいる人族には考えられない宗教なのだが、それを今なお崇拝している人族も少なからずいる。

 その多くはNであり、Rである。

 だからこそ廃れてしまったのだが、ラクサス神父は自分もRだからこそ今もなお崇拝しているのだろう。


 さて、俺にできるのは教会を建てる事と、中に置く家具くらいだろう。

 ラクサス神父からは神像も造って欲しい頼まれているが、俺に作れるとは思えない。

 何故なら、俺はオールズ教の教徒ではないし、神像をこの目で見た事もない。

 ならば、真にオールズ教を崇拝しているラクサス神父が作った方がいいと思ったのだ。だが――


「いいえ。人族の象徴になるはずの勇者様だからこそ、作っていただきたいのです」


 そう口にするだけして、去っていってしまった。

 これでは作らなかった時に色々と言われてしまいそうなので、作らざるを得ない。

 ありがたい事に……というか、ラクサス神父の狙い通りなんだろうけど、オールズ神を模った小さな神像は手元にある。

 これをそのまま置いてもいいのではと思ったのだが、教会に置く神像は等身大に近い大きさでなければならないようだ。

 ボートピアズの教会にもあったそうだが、大きくて重いので置いてきたのだとか。


「……これ、俺が取りに行った方が早いんじゃないか?」


 そう思わなくもないが、全く同じものができてしまっては疑われかねない……というか、持ってきたとすぐにバレてしまうだろうからできない。


「……はぁ。やっぱり、作るしかないか」


 まあ、ありがたい事に石工スキルも持っているので作れるには作れるが、本当に俺でいいのだろうか。

 全く崇拝していない、Nを虐げてきた勇者である俺に。……いや、俺自身が虐げていたわけではないが。


「まあ、やるだけやってみるか」


 作ったものをラクサス神父に見てもらって、納得してもらえなければ丸投げしてしまおう。

 オールズ教の教徒であるラクサス神父なら、きっと素晴らしい神像を作ってくれるだろうしな。


「とはいえ、まずは教会からだな」


 ……まあ、ほとんどできているんだけどな。

 床と壁はすでに完成しており、ラクサス神父の希望で三階建てなのだが二階までは完成している。

 三階には大きな鐘を設置する予定なのだが、それすらも俺に作って欲しいと言ってきた。


「……うーん、よく考えたらものすごく注文の多い神父様だな」


 三階建ての教会に、神像に鐘。

 確かに必要な物があったら声を掛けてくれと伝えていたが、これはさすがに言い過ぎじゃないか?


「オールズ教には、強欲であれって教えでもあるのか?」


 そんな事を考えてしまうくらいの強欲さだ。

 だが、小さな子供を養ってきた神父様だし、それくらい強欲でなければ生きていけなかったのかもな。


「……よし! 気合いを入れるか!」


 俺は今日一番の気合いを入れると、教会造りに邁進するのだった。

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